19.親馬鹿なのか…?
「い、今、なんて言ったの?」
ローリエはやれやれと言わんばかりに首を振って、
「だーかーら、君のサポートとして、君の旅に僕の可愛い娘のイーリアを連れて行かせるって言ってるんだよ」
さっきと言ってることは全く一緒だよな。ということは……
「え、えーーーーっ!?」
「またまた面白い反応をありがとう。君はどう思ってるかは知らないけど、結構イーリアはなんでもできる子なんだよ?」
「イーリアは色んなところが抜けてる気がするんだけど……」
「確かにね。あの子の抜けてるところを言いだせば、きりがないよ。でもね、料理は上手だし、人間社会のことだってよく知ってるんだよ」
なるほど。生きていくためのナビゲーターのような感じで使ってくれってことなのかな?
確かにいくらお金を負担してくれたとしても、土地に詳しい人がいないと何をするにしても不都合が多いだろう。
「でも、自分の娘を初めて会ったよく分からない男に連れて行かせていいんですか?」
すると、ローリエは笑って、
「いや、よくはないけど、君は僕の娘に手を出したり出来るほどの度胸はないだろう。僕が出せるカードよりも強い手札を持っていたにも関わらず、あんな面白い謝り方を一瞬で出来るんだから」
間違いなく貶されているよね、これは。
「でも、今まで娘にあんな行動をとった人間はいなかった。奴隷として飼い慣らそうとした人間を見たことはあっても、君のようなエルフにいたずらをしようという人間は聞いたことがなかった。だから僕は、君がこの世界の住人じゃないと思ったんだ。それにここに帰って来たときの娘の顔は今までにないくらい楽しそうだった。そんな人間の短い一生分くらいは楽しんでほしいからね。すごく自分勝手なんだけど、これが二つ目の理由だよ。じゃあ、何か質問があれば聞こうか」
長々とイーリアのことを話しており、溢れんばかりの愛が伝わってきたので、これが典型的な親馬鹿というやつなんだなと俺は実感したのだった。