16.長老の性別と紅茶
長老と娘という関係とは全く思えない二人を前に呆然としていた俺に対して、困惑した様子で、
「そうまじまじと僕の顔を見ながら突っ立っていられても困る……かな?早く座ってくれると嬉しいね」
そう促されたので、俺は湯気の立つ紅茶が入れられていたテーブルの前の椅子に腰掛けた。
いやぁ、この人たち見れば見るほど似てるなあ。目とかもうそっくりだよ。そもそもこの人男なのかな。ちょっと流石に中性的過ぎないか……?
そう疑いを抱いた俺は確認を取ることにした。
どう確認するかって?
顔で判断できないなら、もうそんな基準となるもの、さらに目視で確認できるものとでもなれば、そう!あれしかないだろう!
ーーーーだ!!(自主規制)
危ない、口に出すところだった……。
そう、ここはお話しつつ、チラ見で確認していくのがいいのではないか。
俺は座ってから数秒の間に脳内でこんなことを考えていたのだった。
自分でも時々思うことがある。こんな下らないことを考えているから、不幸が訪れるのではないかと。
だが、一度そういったことを考えてしまうと、やめられないのが俺という人間なのだ。
そう、だから俺は堂々と考えるんだ!
脳内で長々と自分を肯定いたが、今から本腰を入れないといけないのは、この人との対話であると思い出す。
そんな俺の内心を見透かしたかのようなジャストタイミングで、
「で、頭の整理はついたかい?」
「もっ、もちろん」
このときの声は自分でも信じられないくらい裏声だった。
「ははっ!全く、ものすごく緊張しているじゃないか。その紅茶を飲むといいよ。リラックス効果がある茶葉でいれた紅茶だからね」
「ああ、いただくよ」
そう言って、俺が口に含んだ紅茶は、
「何これ、今までで一番美味しい!」
「客人にそう言ってもらえると、私も腕を振るって紅茶をいれた甲斐があったというものだよ。まあ、私はこの村で一番紅茶をいれるのが上手いんだ!」
長老は誇らしげな顔でそう言った。
「それ、自称ですよね……?お父様?」
イーリアのこの発言で全てが台無しになった訳だが、場の空気は少しは和んだのだろう。