11.初めての魔法
遅くなりましたー!すいません!
ハッと目を開けると、そこは元の世界だった……
なんてことはなかったが、控えめな二つの膨らみと寝顔があった。
いやいやいや、流石に『ゆっくり休んで』なんて言われた後に仰せのままに休んだら、こんな素晴らしい光景が目の前に広がっていることなんてあるだろうか。そう思って、頬をつねってみたら、
うん、全く痛くないね。ということは、現実なのか?
そんな時、真上から言葉がかけられた。
「起きたと思ったら、早速ニヤニヤしてる。私に膝枕されたことが嬉しかったんでしょ。
ささっ、私からの天啓のようなサービスタイムはお終いよ。素早くどくか、吹き飛ばされるか選んでね」
うん、ツンデレか?ツンデレなのか?
さっきまでやってくれていたのに、突然そんなことを言い出すんだもんな。
そんなことを考えていると、突然下から強風に吹き上げられた。
「ぐぉへっ!!」
一瞬にして、重力を感じない状態になり、俺が落ちてくる前にイーリアは落下点から避けていたらしく、俺は地面に叩きつけられていた。
はあーっ、やっぱりいいことの後には帳尻合わせで悪いことが起こるんだな。
地面に大の字に伸びていた俺はそんなことをしみじみと感じていたが、そんな俺を横目に、イーリアは急かすように、
「さっ、早く行くわよ。村に帰って、早くお風呂でさっぱりしたいもの。こんな森の中じゃ何もできないしね」
こう言ったので、ふらつく体を叩き起こして、俺は慌てて彼女の後に続くのだった。
しばらくの間、鬱蒼とした森の中を俺たちは歩いていたが、なぜか俺の方が体が大きく、足も長いはずなのに、前を進んでいるイーリアとの距離がどんどん広がっていっていた。
「おーい、なんか歩くの早くないかー?」
「こんな森の中を長いこと歩いていたくもないわ。だから、魔法を使っているのよ」
魔法だって!?
俺にも使えるのかな。
そんな期待に胸を膨らませていると、
「なんで、そんな餌をくれるのを待っている子犬みたいな顔してるの。そんなすぐには魔法は使えるようにならないわ。今、体感だけさせてあげるから、それで満足しておきなさい。『速歩』」
すぐに使えないという事実を知って、脱力したが、体が少し宙に浮いたような感触を俺は味わった。
「これでそのまま動けばいいのかー?」
「軽く走るような感じで移動するといいわ」
そんなイーリアの言葉を信じて、軽く走るような感じで足を一歩踏み出すと、俺の体は急加速して、突然俺の目の前には木が現れていた。
木に激突して、頭を押さえる俺に、イーリアは小悪魔のような笑みで、
「さっきのお返しよ」
と愉しそうに言ったのだった。