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人の好きなものを馬鹿にするのはやめましょう

 



 ギルドでコボルトの魔石を換金して屋敷に戻ると、エリザが門の前で待っていた。

「お兄ちゃんお帰り〜」

「ただいま……ってもう帰ってたの? 指名依頼があるって……」

「え? あぁ、もう終わらせたよ。お兄ちゃんが心配だから急いで終わらせたの。依頼って言っても深層の高位悪魔グレーター・デーモンが中層まで出てきたってだけで、大したことなかったから」

「アハハ、高位悪魔グレーター・デーモンの討伐を急いで終わられるのはエリザ様くらいでありますよ」

 アハハじゃないよ。グレーター・デーモンは普通なら国の正規軍が動くレベルの魔物だと思うんだけど……。


「お兄ちゃんお兄ちゃん、あのね、私、がんばってお仕事終わらせて早く帰ってきたよ」

 よく懐いた子犬みたいなきらきらの期待に満ちた目でこっちを見ているエリザが求めてるのは

「……お疲れ様、えらいえらい」

 多分こういう反応だろう。

「えへへ……」

 僕に頭をぽむぽむと撫でられて照れくさそうに笑うエリザ……って。なんで僕頭撫でてるの? どうやら完全に無意識のうちにちょうどいい高さにあった頭を撫でてしまったみたいだけど女の子の頭を勝手に触るなんて下手したら犯罪じゃん。結果的に本人が喜んでるから良かったけどさ。


「いつもの氷みたいなエリザ様も良いですが、照れ照れされているの可愛すぎるでありますな……」

 今朝氷みたいなエリザに震え上がらされてたのに、これはこれで楽しめるの、忠誠心が強いというか、主人への愛が強いなぁ。




「じゃあ今日のお仕事の分配です!」

「……えぇ」

 屋敷の中に入って報酬の分配をしようとするエリザと僕の前にメイドさんが二人掛かりで持ってきたのは見たことない量の金貨の山。いくらあるのか想像もつかない。エリザの前にはそれの一割くらいの、それでもちょっとした山がある。

「えーと、お兄ちゃんの魔石換金額が3万ゴルドで、私の依頼報酬と魔石換金分が……4500万ゴルドなので、九対一だと4052万と451万です」

 4000万って今までの僕の稼ぎ20年分くらいなんだけど……。

「はいっお兄ちゃん! 好きに使ってね! あとこれじゃ足りなくなると思うからこっちは私からのお小遣いだよ」

 ドサッ! と重い何かが……金属音のする小さな何かがたくさん詰まった袋が僕の前に置かれた。まぁ金貨だよね。

「これさ、やっぱり僕が……」

 もらいすぎでは? なんて話を始めようとした時、

「しっ、失礼します、エリザ様! 大変です」

――突然血相を変えてメイドさんが駆け込んできた。

「どうしたの?」

「キオザ殿が話があるとやってきました」

「…………誰?」

「……あのような小物覚えてらっしゃらないのは無理もないかと思いますが、以前エリザ様にパーティーの誘いを断られ逆上してエリザ様に襲いかかり氷漬けにされた愚か者のミスリル級冒険者です」

「……だれ……」

 思い出せないっぽい。一悶着あったらしいのに思い出されもしないのかわいそう……いや、自業自得っぽいしそうでもないか。


「と、とにかく覚えてらっしゃらなくても結構です。いまルリアが正門で止めていますが、エリザ様を出せとの一点張りで、このままではルリアが……!」

 悲壮な顔になるメイドさん。ルリアさんのピンチなら早くエリザが行かなきゃ——。

「ブチ切れてボコボコにしてしまいます」

 そっちかい。


 とにかく招かれざる客とはいえ使用人が他人をボコボコにするのはまずいということでエリザが出向くことになった。お兄ちゃんは危ないから待っててねと言われたので、離れて様子を見ることにした。




 エリザは不機嫌そうにツカツカ急ぎ足で正門に向かい、僕が少し遅れて正門に着くと、エリザとキオザと思われる男がなにやら押し問答しているところだったんだけど——

「だからさぁ、何度もいうように、なんでそんなブロンズ級のカス——」

 パキィン! という甲高い音と共に巨大な氷が一瞬で現れて、その男を閉じ込めた。エリザの発動した氷結の魔法だ。詠唱やら集中やら全てのステップをすっ飛ばした強力な氷魔法の発動、しかもミスリル級冒険者の魔法防御力を無視して氷漬けにするなんて、やっぱり規格外すぎる。


「お前、お兄ちゃんに今なんて言おうとした……?」

「エ、エリザ様、ストップ、ストップでありますよ? せーっかくワタクシが我慢したのにエリザ様が殺っちゃったら元も子もないでありますよ〜」

「お兄ちゃんを馬鹿にするやつは……殺す」

「ひぃ……落ち着いてくださいでありますワタクシも凍るであります冷たい冷たい!」

 完全にブチ切れたエリザの魔力が冷気になって放出され、周りの木々や草、近くで止めていたルリアさんが凍り始めた。

「ケイン様、そこにいるなら止めてくださいであります!」

 これ、僕が止めるの……? 無理じゃない?




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