二 悩 ~ ピエロは笑う ~ (11)
自分を責めるのは自分だって分かっている……。分かっているんだ、悪いのは誰かって。
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何やっているんだよ。
重い足取りで帰るなか、実態のない罵声が、幾度となく司に突き刺さってくる。容赦ない罵声は、次第に生け花のように咲きそうだ。
またしても引き留められなかった。
惨めな自分に嫌気が差しながらも、家に着いてポストを見ていたとき、散漫していた意識が一気に集中した。
またしても、ポストには一通の封筒が届けられていた。以前と同様の物が。
鼓動がざわめき、体の淵から激しく叩かれていく。封筒を取ると、家に入ることなく、その場で封を開けた。
「……またか」
なかには以前と同じく、一枚の紙が入れられており、またしても一輪の花が描かれていた。
筆の使い方は同じで、モノクロの鉛筆画。恐らく同じ人物が描いた花なのだろうが、前とは構図が違っていた。
「……これは、お前なのか?」
何も語らない花に問いかけ、脳裏に霞む瑠香を考えてしまう。
確証があるわけではない。それでも、送り主は瑠香であると、心が騒いでしまう。
何か意味があるのでは、とほかに何か入っていないか確認してみたが、何も入っていない。
途方に暮れ、諦めがちに花が描かれている紙をヒラヒラと揺らしてみると、裏面に何かが記されていた。
七月○日 ○×総合病院。小児科病棟、午後六時。
と書かれていた。
記されていた病院は、以前瑠香が目撃されたと聞いた病院。小児科病棟はあのピエロのイベントが行われていた病棟。
また、同じことが行われるのか。
ピエロが笑っていた。
部屋に戻り、白いTシャツにグレーのスウェットと、部屋着になると、ベッドに胡座を掻いて座り、枕元には以前に届いた紙と、先ほどの紙を並べて睨んだ。
意図がやはり掴めず、途方に暮れて部屋を見渡すと、本棚に座っていたピエロと目が合った。
実は、あの商店街の家具屋で、小太鼓を叩いていたピエロを衝動的に買い、家に連れて帰っていた。
気持ち的には、小学校で見つけたピエロも連れて帰るか悩んでいた。あれは瑠香が残したメッセージなんじゃないか、と。
しかし、誰の物か分からない得体の知れない気味悪さもあり、屋上にしたのだが、その帰りに商店街に向かい、このピエロと目が合ったとき、司は動いていた。
このピエロに、ベッドの上から無言で問いかける。
二枚のモノクロの花。構図は違うのだが同じ種類。
あなたはどこにいますか?
今回の花の下に書かれた問い。
僕はここにいるんだよ。
どうして、こんな問いを? この花に意味があるのか?
そして、今日届いた紙の裏に病院と時刻。さらには、小学校の前で会ったのは偶然だったのか。
そもそも、なんであんな嘘をつかなければいけなかったのか。
自分を取り巻く現状に混乱してしまい、頭を抱え、唸らずにはいられなかった。
「どこにって…… そんなこと……」
顔を覆った指の隙間から、二輪の花が飛び込む。
この花に意味があるのか? この花って、どんな名前だっけ。二度も同じ絵を送るのなら、この花自体に意味が?
一瞬、司に一筋のひらめきが走ったが、すぐに頬を引きつらせてしまう。
垣間見た可能性は、司の無知が遮ってしまう。司は花に詳しくなかったから。
それでも、微かな知識が頭をよぎる。
「……花言葉って、意味があるのかな」
あなたの声はどこに向かっているの?




