一 逢 ~ さまよう想い ~ (11)
噂は噂でしかない。関係なんかないよな。
6
次の日、瑠香の席は当然ながら空席になっている。それでいて机はそのまま。ぽっかりと空いてしまった空虚感が司には辛かった。
「ねぇ、昨日変な話を聞いちゃったんだけどさ」
「何? 何があったの?」
「瑠香のことなんだけどさ」
朝、空席を眺めて自分の席に座ったときである。斜め前の席に集まっていた女子生徒三人が、声をひそめるように喋っていた。
まるで、何か後ろめたい内容なのか、辺りを気にしている口調だったため、司の耳に届いてしまい、カバンを机のフックにかけながらも耳を澄ませた。
「なんか、昨日亜弥に聞いたんだけどさーー」
それから話された内容は、噂を通り越して誹謗でしかなかった。だからこそ、辺りを気にして警戒するのが態度に出ていたのかもしれない。
「ねぇ、それって、明日香には聞いたの?」
「聞いてない。そこまで興味あるわけじゃないし」
「だよね。アハハッ」
“明日香”とは、瑠香とよく喋っていた友達だった。集団はこの話を聞かれまいと注意しているようだったが、最後には瑠香を滑稽にするように笑っていた。
「よく言うよ。まったく」
女子生徒の集団に背を向けて頬杖を突くと、聞こえないように皮肉った。
時間が流れ、時刻が日付をまたぎ、そろそろ眠ろうかとしていた午前一時ごろ。突然鳴ったのはスマホ。辺りが静まっているので、より着信音が鮮明に聞こえた。
発信者の名前を見て、司は息が詰まりそうになり、意識とは裏腹に手から力が抜けてスマホを落としそうになった。
乱れた呼吸を懸命に整え、耳に当てた。
「ーーもしもし?」
「ーーもしもし、竹内くん?」
耳元で咲いたのは瑠香の声。久しぶりに聞いた声に、心が躍りそうになるが、これまでに聞いたことのないか細い声に、司は眉間にシワを寄せてしまう。
そらは、学校の教室で気さくに声をかけても、無視されて己に壁を作り、窓の外を眺めて流れる雲を、頬杖を突きながら眺めている無愛想な瑠香を想像させられた。
すべてを拒絶されそうな雰囲気に、司は口籠もってしまう。
「ねぇ、今度の土曜日、会ってもらえる?」
「ーーえっ?」
それを司は望んでいた。
そして瑠香は……。
この判断は間違っていない。そう信じたい……。大丈夫なんだと……。




