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ハーピーは街道に似合わない  作者: 斉木明天
第三章:石油タンカー『星握』
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27.利園貿易会社の野望

 エリカが見つけた部屋は当たりだった。部屋の傍らに置かれたボードには、タンカーの絵をスタートとしてここ辺りの地形を移動する矢印が書かれている。

 ざっくりとした判断だが、ここでタンカーの用途についての会議が行われていたようだ。


「やりましたわね。さっそく、資料を探ってみましょうか」

「うん!」


 エリカはホワイトボードを眺め、卵未はその横のデスクを探り始める。


「……この、図解。変ですわ」

「変って、なにが?」

「この矢印、航路を指してると思うの。でも、その矢印が……大回りした後に、陸に向かってる」

「……え?」


 思わず、卵未はエリカの横顔を見た。

 そしてホワイトボードの絵も見る。たしかに、タンカーから伸びていた矢印が、進む道を指している。そして、沖の方に回ったタンカーは、そのまま陸の上へと線を引いていた。

 港に着くという意味なのだろうか。そう思いもしたが、それにしては、矢印が陸に着いてから、さらに陸内部へと伸びすぎていた。


「…………まさか!」


 卵未は、デスクの上を慌てて見渡した後。想像していた物が無いことを確認すると、足爪で引き出しをいくつも開け始めた。

 一番下の引き出しを開けたところで、まだ入れられたばかりであろう、紙質がまだ綺麗な書類の束を発見した。


「エリカ、この書類を見て!」

「なにか見つかりましたの?」


 卵未はそれを手に取る事はできない。エリカに声を掛けると、エリカは卵未の出来ないことを補うように拾い上げ、表紙を見た。

 そこには『成り代わり計画』と題された表紙があった。


「これは……」

「…読んでもらえるかな」


 エリカはうんと頷き、書類をめくった。


「……これは、利園貿易会社が形骸化した企業と、利園社長含む、中心実行者となるドッペル達の人生を投げうった計画である。我々は、来る満月の日に、()()()を限界まで積んだタンカー星握(しょうあく)を沖へ出向させる」


 エリカの手にも、汗がにじみだす。


「そして、我々はタンカーの制御が効かなくなったと称し、陸へ向かって、タンカーを突撃させる。陸にタンカーは乗り出し。そして、通り水の生気を暴発させる」


 卵未も唾を呑む。通り水というのは、あの沼の事だろう。そして、生気を暴発させるということは、ドッペルゲンガーの力が大気中にあふれ出すという事だ。


「この爆発行程で、本来の石油爆発事故に相当する災害が見込まれる。 残りは、この町のドッペルゲンガー諸君の狩り時となる。……大気中から降り注ぐ生気を存分に吸収し、力を得た事で。町の人間一人残らず、成り代われ」

「!!」


 災害の最中、生存者は全て秘密裏にドッペルゲンガーに成り代わられることとなる。全員が、人間に成り代わって社会に溶け込むことになるのだ。

 エリカが語る書類は、そう締めくくられて終わった。


「…………だから、あの事件の時に成り代わらなったんだ」

「蓄えてた、ってことですわね……」

「まずいよ、エリカ。このままじゃ、町の人間全員が、ドッペルゲンガーに殺される!」


 もしそんな計画が遂行されきってしまったら、それは人と魑魅魍魎のバランスを保つ魑魅境の役割の崩壊をも意味した。

 エリカも、卵未も、本部も。そして町も。タンカーが衝突してしまえば、事後処理をどうあがこうと、ほぼ大半の理想が崩れ去る事になる事だった。


「その通りですわ。今すぐここを出て、鬼島さん達に伝えませんと!」

「うん!!」


 二人の意思は合致した。

 振り返り、急ぎ部屋から出ようと走る。

 だが、エリカの後に続き駆けだしていた卵未が、()()()()()()()()


「!エリカ!!」


 その時、卵未の体は勝手に動いていた。

 鳥の足を跳ねさせ、エリカの前に翼を滑り込ませ、回り込む。

 卵未は、エリカに抱き着き、エリカの全身を隠す。

 その直後、天井から卵未の後頭部目掛けて、()()()()()()()()()()()()


「きゃああぁぁぁああ!!」


 エリカの絶叫が響いた。目の前で、今自分に覆いかぶさった卵未の後頭部に容赦なく鉄パイプが直撃した。

 卵未の全身が跳ねあがり、卵未の目が白目にひっくり返る。

 そして、そのまま二人して後ろに倒れ込んだ。

 エリカは倒れ込み、天井を見た。状況が呑み込めない。今、一瞬で何があった。

 ただわかるのは、自分の体の上に、動かなくなった卵未が覆いかぶさっている。


「……卵未、卵未?…卵未ぃ!!!」


 エリカは卵未を抱きしめ、身体を揺する。

 そして、それを見下ろすような形で、天井から()()()()()()()()()()

 エリカは混乱の中その二本の卯でも近くする。その手には、見覚えがあった。

 互締結(たがい ていけつ)の腕だ。


「お、おまえ…おまえぇ!!」


 締結の右腕には、鉄パイプが握られている。

 そして、左腕には、なにかスイッチのようなものが握られていた。

 締結の腕は、そのスイッチを手元で遊ばせた後、ぽちりとスイッチを押した。

 その瞬間。艦橋内に激しいブザー音が鳴り響いた。

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