生産系って理由だけで追放されそうな幼馴染に着いていきたい
私、支倉 亜沙美はいま、とても困っています。
学校の近くに雷が落ちたと思ったら、辺りが真っ白に教室のドアを開けたらファンタジーのお城、集団転移ってやつですね。
お城の人達に魔王だの戦争だの勇者だの色々説明を受けて、スキルやらステータスやらの判定を受ける事になりました。
私は、賢聖なんて欲張り能力と高ステータスだったのでひとまず安心していたんだけど……
「ちょっと、マッテクレヨー」
「見苦しいぞ、戦闘に役に立たないお前が俺達と同じ待遇なんてあり得ないだろ?」
「そ、そんな、ヒドイヨー」
私の彼氏(予定)兼、幼馴染が生産系の能力らしく追放されそうです、所々棒読みなので出ていくことには異論がなさそうです。
因みに、無能力に見える後出 覚美さんは、私と幼馴染が『あからさまなハズレは覚醒フラグ』を熱く語ったら、真に受けてくれたのかしばらくは安全みたいです。
……なんか、幼馴染を見る眼が熱っぽかった気がするのは、気のせいですね。恩を仇で返すような娘じゃないし。
「やれやれ、見苦しいな彼は……支倉さんもそう思わないかい?」
「え?なんで?」
と、考え事をしている間に、まとめ役をやっていた生徒会長が私に話し掛けてきたけど、ファンタジー世界に戦闘力を持たない人を放り出すとか怖い……
「だって、戦力を求めて召喚されたのに戦闘力がなくても城に居座ろうだなんて、図々しいにもほどがる」
「でも、生産系のスキルあるんだよね?」
「はっ、そんな能力がなんの役に立つのかな?」
役に立つよ?何作れるか知らないけど……
「で、でも、戦闘系でもないのに知らない危険なところに放り出すなんて事するの?」
「支倉さん今は戦時中だ、今までの世界とは事情が違う」
戦時中なら余計に生産系必要だよね?というかやけに追い出したがってるね?
「事情が違ってたら、拉致して戦力が無いからって追い出すの?」
説得をしつつ、幼馴染に『大丈夫、頑張って養うから』ってアイコンタクトを送る、私達の絆なら9割以上の確率でちゃんと伝わるはずだ。
その証拠に幼馴染もすぐにアイコンタクトを返してきた。
『オレノセイサンライフヲジャマスルキカ?』って……
あっっれぇ?1割以下引いちゃったよ?
それとも、雷で真っ白になったときに腕を離れないように腕を掴んでたら、アザになったの根にもってるのかな?
そういえば、ゲームとかだとアイテムや装備作るの大好きだったね……
とりあえず、アイコンタクトを続けます。
『イツモソバデヤシナウヨ?』
あ、感動して後退りした。心なしか腕のアザができてた部分をさすってる気がする。
「せめて、1年暮らせる位の資金を出してくれよ」
「今は余裕がない、出せて1月分だ」
「手切れ金込みで10ヶ月分」
「……3ヶ月分」
「無断召喚の慰謝料も込みで9ヶ月分」
「……上に聞いてくる」
ああ、出ていく事に異論がなさそうだったのに、抵抗するフリしてると思ったら、お金をせしめようとしてるのか、城の人と交渉始めちゃった……計画性があって素敵
「物乞いかな?見ていて腹ただしいな、さっさと出ていけばいいのに」
安全圏で愚痴っている、この人は何様なんでしょうか?
「ねぇ創哉」
「どうした?」
交渉後も物価やら治安やらを騎士に質問攻めにしている幼馴染、遊馬 創哉にようやく話しかける事ができた。
「本当に出ていくの?」
「出ていきたくないっていっても無駄そうだしな」
あ、嘘だ、めちゃくちゃワクワクしてる……
「私もついていく」
「え、やだ……」
ハハハ、嘘だ!!
「……じゃなくて、せっかく良いスキル引いたんだから活躍してくれよ」
『回復役を連れていると、ポーションの価値が下がるだろ』
と、目が語ってる……
「そんなの無理だよ?」
なので『マジックポーションの価値が上がるからセーフ』とアイコンタクトをしながら話を続ける。
「俺は、亜沙美には安全な所にいてほしいんだ」
『正直、当たりスキルとか連れていったら逆恨みされるだろ』
「それでも、私はあなたに着いていきたいの」
『1人くらいなら、セーフ』
「えー」
『さっきから生徒会長の視線がいたくてセーフとは思えない』
「ほら、生産系なら、助手もいるよね?」
『助手志望です、戦闘力あるし、養います、なんなら貴方の子供生産できます』
言葉とアイコンタクトでのやり取り、うん、愛がないとできない芸当ですね。
「亜沙美……」
『子供……ホムンクルスか……作れるかな?』
その発想はおかしい。名前は創美とかどう?
「全く、遊馬君、支倉さんに迷惑をかけないでほしいね」
「会長……ごめん」
コイツウザイ
「戦力にならない君はこの城にいらないのは君にもわかるだろ?」
「ああ……うん、そうだね」
横槍のせいで、話は有耶無耶になってしまった
翌日、創哉の姿が見つからないので聞き込みをしたところ、昨夜のうちにお金を貰って出ていったらしい……私をおいて。
は?
は?
逃げた?
「ふふっ」
大丈夫、創哉の行動パターンは把握しているし。話した時に魔力でマーキングもしてある。
まずは、邪魔者を排除してからね……特にあの、邪魔虫は生まれてきたことを後悔させないと……。
後は、今隣で一緒に悔しそうにしている覚美ちゃんにも覚醒して貰わないとね……
あ、私が正妻なのは譲らないからね?ちゃんとオハナシしないと……
大丈夫、彼の生存力は並みじゃないし自分で勝算があるから出ていったんでしょう。最悪愛人も一桁に収まるなら許そう、ファンタジーだしね。
というか、創哉と私の邪魔をするのは国単位よね?幸い私には能力があるし、邪魔なら……
ごめんね、創哉、追いかけるのはもう少しかかりそう。
お読みいただきありがとうございました。
短編10個めがこんなんで良いのかな?と思いいつつ、初めて女の子主人公です。
リアルが多忙なため、また、しばらく書けなさそうです。
夏が開けたら何か連載ものでも書きたい意欲はあるんですが、秋まで持つかな……