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パタバー母さんの庭仕事

 秋の日の朝、パタバー母さんは鉢花に水やりをしようと思って玄関を出ました。


昨夜遅くに降っていた小雨が、庭の草木をしっとりと湿らせています。空は雲一つなく晴れ渡っていました。真っ青な空の下で満開のコスモスが風に揺れています。金木犀のいい匂いがどこからか漂ってきました。

パタバー母さんの頬を爽やかな秋風が撫でていきます。


「あー、なんていい気候だろう。今日は草取りができそうだね。」


母さんはググッと息を吸い込んで、満足と共にフゥーと息を吐き出しました。


薔薇やペチュニア、シクラメン等の鉢に水やりをした後に、パタバー母さんはどっこいしょと庭にしゃがみました。朝露をふくんでピンッと背が伸びた雑草を、両手で次々にむしっていきます。昨日のお湿りがあったので、面白いように草の根っこが抜けました。


銀色の水玉をまとったハギの葉っぱにぶつからないように注意しなくてはなりません。身体中がびしょ濡れになりますからね。


おおかた草を取り終えたパタバー母さんは、葉っぱが勢い良く出てきているシクラメンと、丸い実が薄緑色に色づき始めたレモンの木に肥やしをやりました。


「ほおら、たっぷり栄養を取って大きくおなり。」


シクラメンの葉っぱやレモンが、風に揺られてうんうんと頷いているように見えました。



「母さん、いってきまーす!」


今日は遅番だと言っていたチェリーが、やっと朝ご飯を食べ終えたようです。

病院に仮就職したお祝いに新しく買ってもらったピカピカの自転車にまたがって、パタバー母さんに声をかけてきました。

大きくなったねぇ。ついこの間まで、よちよち歩きの子どもだと思ってたのに……

今や準看護士さんで、立派なお医者さんのフィアンセまでいるっていうんだから。


「ああ、いっておいで。夕食は冷蔵庫に入れておくからね。」


「はぁーい。」


にっこり笑った後、自転車のペダルを踏んで遠ざかっていく娘の背中にポニーテールが揺れていました。

パタバー母さんはしばらく物思いにふけってチェリーの後姿を見ていましたが、「やれ、もうひと頑張り。畑の草取りもしておくかね」と言うと、物置から鍬を出して裏の畑に歩いて行きました。


母さんが歩いて行く畑の向こうの森は、赤や黄色に色づき始めていました。

野いちご村の空の高みでは、トンビがピーヒョロと鳴きながら気持ちよさそうに舞っていました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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