すべては゛僕゛のひとりごとです。
メール1
ごめんね、夜なのに、話があるなんて言って。
あ、でも、今日週末だから、いつもは起きてるんだっけ?
メール2
あ、そうかぁ、ごめん。
うん 手短に済ますよ
メール3
これはさ、うん 告白とかなんでもないんだけど
僕はたぶん、君のことが好きです。
だから、連絡も、関係も、とらないようにしません?
メール4
壊したいとかじゃなくて、
でもさ、もう、駄目、でしょう?
シーン1
メールをうった。
翌日に妹の誕生日を迎えるある日の夜。
僕は日々理想に甘える自分に嫌気がさして、
日常を少しずつ、捨てることを決意した。
あのあとから一言も会話して、なかったら、よかったんだけど。
今夜もまた、人差し指で携帯の電源をいれる。
昨日はメールきてたけど、今日は、きてないみたい。
きてるほうがおかしいのだけれど。
正直さ、期待しちゃってる節はあると思うんだ。
あえて自分の暗さとか闇をだして、
あえて自己嫌悪に陥って。
そうして自分の心の「底」みたいなものに落ちれば
なにかが救ってくれるような気がしてさ。
でも僕だけじゃないはず。
だいたい、こんなものでしょ?
だいたい、そんなものでしょ?
結局僕はなにかに憧れていたのかも。
そして、そんな自分が嫌いで。
だから捨てました。
でも、いいじゃない。
だって、誰も傷つけていないんだし。
シーン2
夜が怖いの、と君は言った。
僕は好きだな、と僕は答えた。
そして、今日も今日とて、夜を迎えます。
「あれ…夜……?」
僕はなにかを思い出す。
夜が怖い君に、僕はなにをしようと言ったのだったか。
もう覚えて、ない。
......いや、嘘だ。
本当は全部覚えている。
なにを約束したのかも、なにをしてあげたかったのかも。
そして、君がなんと言ったのかも。
「じゃあ、私を夜から守って」
そう言った君はずるいと思った。
シーン3
朝はお好きですか、と僕は聞いた。
私は好きです、と君は答える。
僕は正直嫌いでした。
でも、君が好きだったから
僕は好きになれたのです。
君がYesと言えば、
僕もYesと言った。
君がNoと言っても、
僕はYesと言った。
「僕はあの人を一番にしてる?」
きっとそうだったんだと思う。
君に賛同して、
君を認めて
そして君に見ていてほしかった。
忘れないでほしかった。
でも知ってた。
君の瞳に僕はうつってない…?
いや、違うな。
君の瞳は最初からなかったんだよね。
僕は君の瞳を見ることさえ、できなくなっていたのだから。
シーン4
今となっては、もう関係のない人との出会いについて、語るのは
正直、馬鹿げていると思う。
ただまあ、少しだけ語るなら、1年前の今ごろでした。
僕が前で後ろが君。
隣が君、でしたか?
もう、よく覚えてないです。
「もう1年早く会いたかった?」
よくそう問われます。
僕は律儀に返すのです。
そんなに欲深くありませんよ、と
嘘ですけどね。そんなわけないでしょうに。
僕は、誰かの一番になりたかったんです。
僕は君の一番になりたかったんです。
なれませんでしたね。
いえ、いいんです。
ああ、もしかしたら、なれていたのかもしれない、ですか。
でも、そんな一番、望んじゃいなかったです。
シーン5
君の隣には誰がいたんでしょう。
僕の隣には誰もいませんでした。
君の隣にいければ良かった?
いえ、違います。
君の隣にいけなかった。
君の隣には、その人がいたから。
知らなかったなぁ。
知っていたら、知っていたら、ほんと、どうなってたんでしょう。
今でも仲よかったのかな。
知らなかったから...?
嘘です。今のところ半分くらい嘘言ってる気がしています。
でも、嘘です。
知っていたんですもの。
知っていましたし、だいいち、それが前提でしたもの。
はい
だから
はい
だから
君も周りも誰も彼も、わるくないんです。
「悪いのは、僕、だね。」
シーン6
また1つ、約束を思い出した。
そしてもう1つ、
君との思い出を思い出す。
今思えば、なぜ僕は、
あんなにも君と話せたのでしょうかね。
なぜ、あんなに心がおどったの?
ああでも君は、そうでもなかったんでしょう
そう思うと、やはり、悲しさを感じます。
あの古い本を好むなんて知らなかったから。
君は変わっているんだね、と言うと、
君にはそう言われたくないな、なんて
当たり前に過ぎていった1つ1つの思い出をなぜか思い出してます。
君の好きだったあの本、ぜんぶ君にあげます。
気持ち悪いかな、、、
まぁいいや、
たぶんこれが最後になりそうだし。
シーン7
そろそろ、君の隣にいる、その人に触れたらどうだろうか、
と僕の中の僕が言います。
いや、でもね、あんまし仲良くないんだよね、その人と。
そう、だから
自分と、何が違うのか、わかりようがないの。
自分に何が足りなかったのか、なんて、そんなことじゃなくて
ただただ、純粋に、わからないの。
だから、考えることをやめました。
ずるいかな、いや、でも、
「誰も傷つけてないから」いいじゃないですか。
だから、考えません。
シーン8
まだまだ夜は続くのでしょうか。
雪さえ降っていれば、まだ、少しはロマンがあったのかもしれませんね。
あれ、あの本今日渡されたのだっけ、そういえば。
うわぁ、本当かよ。。。
ドンピシャじゃないか、2年前のその日に。
「なんか、いろいろ、ごめんね?」
そんなこと言われても
シーン9
あれ、気づけば、誰に語るでもないのに、なんか、熱くなってた…?
まあ、それも、今夜だけです。
「終わらせて、しまうの?」
はい、だってもう、駄目、でしょう?
誰も傷つけて、ないから。
「君が、気付つついてる。
君が、傷ついているよ。」
ああ、君は本当にずるい人だ。
でもね、本当に、もう、いいんです。
たくさんの"僕"は、たくさんの"君"のことをおもっていました。
でも、今夜で、それも終わりです。
"僕"たちは、今夜、目覚めるの。
恋は夢のようだなんて、言うつもりは全くないけれどね。