I
「あ、痛い痛い!痛いから!早く死ねよおい!てかこいつ硬っ!」
ゲームをしていた。よくあるMMORPGだ。
とはいえもう日が差し、小鳥の鳴き声が聞こえる時間だ。
そろそろやめなくてはと思いつつ、結局7時ごろまでやっていた。
ヘッドホンを外し部屋を出ると、ばあちゃんがいた。
「あぁ丁度いがった。ひなも朝飯食うか?これがら作るんだけんど。」
「いらない。8時くらいから友達んち行くから。」
「時間あるし、食いなせや。」
「いらないから。多分どっかでなんか買って食うし。」
まだ何か言っていた様だが面倒なのでさっさと部屋に戻った。
「うーん。こんなもんか。」
ある程度納得のいく格好になってから、財布を確認すると
300円程しか入っていない。
「あ、8月入ったし今月分の小遣いもらわなきゃだ。」
うちは1ヶ月に1度の小遣いで文房具やら服やら……
とにかくなんでも自分の物は自分の小遣いで、となっていた。
でもそれで月4000円くらいだから常に金欠だ。
4000円なんて服1着買ったら半分以上なくなってしまう。
おまけに友達とカラオケに行ったりすれば更に金がない。
「ばあちゃん、今月の小遣いちょうだい。」
「あぁちょっと待ってな。……なぁとりあえず2000円でいいが?」
「ないならそれでいいよ。ある時残りの金もらう。」
「すまんな。まだおろしてながったわ。」
今日は何か買うものがある訳でも無いので2000円でも十分なはずだ。
「いってきまーす。」
「来たよー。」
見慣れた玄関から入り、声を出す。
するとすぐに声が聞こえた。
「部屋来てー。」
「おっけ、お邪魔しまーす。」
部屋とは玄関からまっすぐ廊下を歩いた先にある"なぁ"の部屋もことだ。
ちなみに"なぁ"とは……
「あ、適当にその辺座ってー。」
こいつ、小野 菜緒のことだ。
「あれ、髪染めたんだ。」
「うん。いいっしょ。本当言うともっと明るい色にしたかったんけどさー。」
「へー。普通に茶色くなってるけど。」
「俺金に近い色が良かったんて。」
俺と言っているが女だ。
そして髪を染めたと言っているが、私達の通う中学校はもちろん
髪を染めてはいけない。ピアスなんてもってのほかだ。
つまり、なぁはギャル?不良?よくわからないが
そんな風に呼ばれる奴だ。ピアスは今4つ開けているらしい。
私?私は髪染めもピアスも悪いことは全然やっていない。
そもそも、こいつといると楽しいから一緒にいるだけなのだ。
「2人じゃつまんなくね?りぃも呼ぼうぜ。スマホ取って。」
りぃというのは田辺 理沙のことだ。
「ほい。」
そして私は小倉 結城。ゆうきなのであだ名はゆぅだ。
「さんきゅ。……あ、もしもし?りぃいます?じゃ変わって下さい。」
しばらく暇そうなので、棚にあった漫画を読んでいることにした。
「来るって。待ってる間俺メイクしてるっけそのまま本読んでて。」
やっぱり本読んでて正解だった。
「やっほー来たよ。」
「その辺座って。まだメイクしてないから。」
「ほーい。あ、うまい。」
「おい人んちのもん勝手に食べんなよ!ゆぅ普通なのにお前おかしいだろ!」
「えへへ、ごめんごめん。うちも漫画読もうっと。」
「うしっ。終わった。なあ今日山行かね?」
「あー、こないだのっしょ?」
「そうそう!」
私は知らない話だ。2人でまたどっか行ったのだろう。
「うちは別にどこでも良いよ。」
「んじゃ決まりね。」
そこからチャリ駅に行き、電車に乗り私の知らない駅で降りた。
その後駅から歩いて歩いて歩き続けた。
「え?ここ?」
「ここだよ。前俺ら2人で来てさ、めっちゃ楽しかった!
迷ったりスマホの充電切れたりして、な!」
「そうそう!めっちゃスリル あったよね!」
木には熊の目撃情報の張り紙がある。
ーー今更だけど不安になってきた。
「大丈夫なん?」
「平気平気。前大丈夫だったし。」
ーーもうここまで来たんだし、仕方ないか。
そうして、私は2人と山に入った。
まさかそのせいでこの日常が壊れるとも知らずに。ーーーー




