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第3話 俺たちが旅に出た理由

 コンコン……


 サトシの部屋のドアがノックされる。 


 触れていた唇を離してユカが尋ねた。

「……出ないの?」


 ユカは真面目だ。

 かかってきた電話は必ず出る。

 例え相手がセールスマンでも敬語で応対する。そんな女性だ。

 ユカにはサトシが居留守を使う事が理解できなかった。


 サトシは返事の代わりにユカの唇を強く吸った。



 サトシたちにはそれぞれに客室が割り当てられた。

 家具はダブルサイズのベッド、机、椅子が二つ。

 すべて流線型でまとめられたシンプルなデザインだ。

 シャワールームとトイレも完備されていて居心地はよい。



 ユカはシャワーを浴びている。

 サトシはもう一眠りすることにした。



 数年前まで中世の地球同等の文明だったこの世界は、今やサトシたちの世界の先を行っていた。


 異邦人であるアルデの父やサトシがもたらした情報と、この世界に存在していた魔法がかみ合い、この数年で急激な進化をもたらしたのだ。


 中世レベルの文明から一気に宇宙時代に進化した文明、この急激な変化にあるものは高揚し、あるものは不安を感じた。




「これって……宇宙……だよなぁ?」


 吉川が窓の外の風景に目を見張っている。

 そこには果てしない闇と煌めく星の海が広がっていた。


「だろうなぁ」


 西野は極めて冷静に取り繕っているが、内心興奮している。

 さっきからタバコが止まらない。

 もとの世界を出るときには新品だったソフトケースは残り5本まで減ってしまった。


「俺さぁ、死ぬまでに一度宇宙に出てみたかったんだよなぁ!」

 吉川は無邪気に喜んでいる。


「お前さ、騒ぐんなら自分の部屋に戻れよ。俺は眠いんだよ」


 言ってみたものの、全く眠くはない。


「……吉川、俺ら帰れるのかな?」

 西野は呟いた。


 吉川は

「わっかんね」

 そう返した。


 分かるわけがない。


 どんなプロジェクトにも終わりはある。

 (それがハッピーエンドか、バッドエンドかは判らないが)

 二人とも一年間の業務経験で、どんなに過酷な現場でも終わりがあることを体感的に知っていた。


 しかし、今二人は今の状況に終わりを見いだせていない。

 それはとても不安なことだった。







 翌朝(時刻的には朝に当たる時間)、サトシを含む主要メンバーと、ユカたちは作戦室に集合した。


 今回の旅の目的とその背景についてソウコウから説明がある。



 遡ることおよそ一年前。

 サトシの元同僚アルデが長を務める国立宇宙研究所は、来たるべき星間移動の時代に備え宇宙観測を行っていた。

 その研究の一環で、宇宙の他の文明に向けてメッセージを送った。

 メッセージの内容は、赤い月の文化、戦力、政治的構造などだ。



 その光を二つの文明が捕捉し、返信があった。

 一つはフェルミ、一つはジェミと名乗った。


 二つの文明はほぼ同時にヌージィガに対し返信のメッセージを送った。

 フェルミからは和平協定の申し出、ジェミからは宣戦布告だ。



 無邪気に放たれた光は世界を動かし始め、動き始めた世界の中で、赤い月の首長たちはソウコウにフェルミ、ジェミへの対応を指示した。



 今回の旅にあたり、赤い月はB級以上のエキスパートを大量に参画させた。


▪特級エキスパート

  勇者ソウコウ

  魔王ベリアル


 彼らは一人で軍隊並みの戦闘能力を持つと共に高い指揮能力を持つ。

 魔王ベリアルはこの艦の動力を産み出すため機関室におり、会は欠席している。


▪A級エキスパート

  大鎌のマァル

  機人アルデ

  半魔神官サーシャ

  知多星のサトシ


 A級はユニフォームの着用を義務付けられていないクラスで、特化した能力あるいは戦闘力と二つ名を持っている。

 大鎌のマァルは2メートル近くあるやせ形の男だが、戦闘能力は特級エキスパートに並ぶ強者だ。

 サトシは前回この世界で多くの知をもたらしたことから、「星の数ほど多くの知を持つもの」として知多星という二つ名を持っていた。


▪B級エキスパート

  アイラ

  ユカ

  西野

  吉川


 B級以下の士官は原則として(能力を阻害する場合は例外を認める)、軍服の着用が義務付けられている。

 ユカたちはサトシの部下であるため、このクラスに任命された。


 アイラがユカたちに軍服を渡す。


「うわっかっこいい!」

 吉川はまんざらでもないようだ。


「どうもありがとうございます」

 西野はアイラの顔に見とれている。


「明日以降はこれを着用するように。

 それとユカ……何か分からないことがあれば私になんでも聞いてくれ」


「あ、はい。了解です」

 思いがけないアイラの優しさにユカは戸惑った。



「サーシャがここから一日の距離に何らかの生命反応をみつけた。

 まずはそこにいく。

 敵である可能性もある、総員警戒をするように」


 ソウコウが指示を出す。


「サーシャ、そこへ向かってくれ」

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