第28話 第8エリア宙域争奪戦(1)
資源、資金についてはジェミ軍事同盟と比較してフェルミ通商条約機構の方が勝っているが、戦争がジェミ有利に進んでいるのは、陸上部隊の優秀さが関係している。
艦隊は物資を輸送、また強力な火力で敵を攻撃する。
航空機は艦隊および陸上部隊の活動を支援する。
陸上部隊は陸上を支配する。
艦隊および航空機隊にとって、拠点の喪失は決定的な打撃となるが、陸上部隊にとっては一拠点の喪失は決定的な打撃とはならない。
ジェミのカテゴリ1には「赤い月」の魔法同様に、強力な能力を持った陸上部隊がいた。
第8エリア宙域は現在ジェミの勢力下にある。
当地域は豊富な地下資源を持つ星系を含んでおり、この宙域を奪取することは戦略的に重要な意味を持つ。
フェルミ中央議会、副議長のテマロックは第8エリア宙域の奪取を主張。
自文明ギガンを中心とした大軍勢を第8エリア宙域に派遣することとした。
プレアデスはこの作戦に同行することとなった。
◇
ソウコウが今回の作戦について説明する。
「今回の作戦は、上陸作戦だ。敵の勢力下にある星を占領する」
サトシが資料に目を通す。
「カテゴリ1が展開している可能性が高い……か」
「カテゴリ1んんんんんんん!?」
情報士官のウサが素っ頓狂な声を上げる。
「カテゴリ1って言ったら、人間が相手できるものじゃないです! 無理です!」
「ウサ、分かったから、カテゴリ1についてちゃんと教えてくれ」
サトシは興奮するウサをなだめながら尋ねた。
「はい……ジェミのカテゴリ1は別名10人委員会と呼ばれています。
それは10の文明により構成されているからで、
ジェミの発足当初から脱落、新規昇格はないとのことです」
「10もあるのか。多いな」
「その10の文明ですが、互いの戦力が拮抗するため同盟を組んだ様です。
いずれも選民意識が強く、連携して行動できないと聞きます。
彼らの母星はいずれもジェミの勢力が及ぶ範囲の奥の方にあり、
すぐには手を出すことができません。
なお、ジェミのカテゴリ1っていうのは、超人の集まりです。
これまでフェルミの方が物量的に勝り、宇宙戦でいくら勝ちを収めても、
地上戦で彼らに勝てなかったことが勢力を広げることができない原因です」
「へぇ。ソウコウみたいなやつがゴロゴロいるってことか?」
「そうですね、一人ひとりは艦長よりは劣るかもですけど……
でも、危ない相手であることは間違いないです」
「なるほど。腕が鳴るな」
ソウコウが不敵に笑う。
「……と、なるとだ」
ソウコウはサーシャに目配せして言った。
「総力戦だぜ。こいつは」
◇
第8エリア宙域に近づいた。
目の前に広がる光景に一同は息を飲む。
「なんだこれは……?」
そこには、惑星というにはあまりに巨大な天体が浮いていた。
その直径、3.6天文単位(約5.4億km)という巨大な天球だ。
「ダイソン球」
恒星を卵の殻のように覆ってしまう仮説上の人工構造物。
恒星の発生するエネルギーすべての利用を可能とする宇宙コロニーの究極の姿と言える。
名前は高度に発展した宇宙空間の文明により実現していた可能性のあるものとしてアメリカの宇宙物理学者、フリーマン・ダイソンが提唱したことに由来する。
<出典:Wikipedia 「ダイソン球」>
「この天球自体が第8エリア宙域と呼ばれる場所です。
現在はジェミのカテゴリ1、アルゴンの支配下にあります」
ウサが説明する。
「この中に敵がいるってわけか……」
さすがのソウコウも緊張しているようだった。
◇
フェルミの発足メンバーであるギガンは、半人半獣の姿をした種族だ。
具体的には、犬のような頭部、毛に覆われた肉体、広い肩幅(男性の場合)、2mを超える長身という特徴を持つ。
寿命はフェルミの中では短く、平均30歳、長くて40歳くらいまでである。
5歳ごろから性成熟し、20代後半くらいまで青年期として過ごし、老後は2~3年と短い。
女性の割合が男性の半分未満と少ないが、妊娠期間は半年ほどと短いことと、一度の出産で平均6人の子を産むことから、人口はフェルミ内でも最も多い種族である。
見た目に違わず、強靭な肉体と鋭い感覚を持ち、同時に高いコミュニケーション能力を持つ。
白兵戦においては質、量ともに敵の脅威と成り得る種族となる。
ギガンの司令官ラーファはそのようなギガン人の中でも特に大きな体を持ち、その顎は岩をも砕く勇猛な男だ。
ラーファは今回、100万人の兵を動員した。大型揚陸艇の数にして1,000隻となる規模だ。
「敵の拠点、見えたり! 我らが武勇、しかと見せてくれようぞ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおお………」
地響きのように各艦に響き渡る覇気。ギガンはエンディア同様に戦闘をこよなく愛する種族なのだ。
◇
プレアデスが天球の外殻を攻撃し、内部への通路を確保する。
天球自体には防衛システムは無いようだ。規模を考えれば当然ではあるが。
プレアデスとギガンの揚陸艇はプレアデスの開けた穴から天球の内部に侵入した。
外殻の内側にはとてつもなく広大な草原が広がり、天には太陽や惑星が昇っている。気温は温暖だ。木々がところどころに生え、彼方に川が見える。鳥も飛んでいる。
球の大きさがあまりにも大きいため、球の内部にいるようには思えない場所だった。
「いやぁー、いいところじゃないっすか!」
吉川は窓からの景色を楽しんでいる。この場所が気に入ったようだ。
各艦はそのまま外殻を離れ、天球内部に浮かぶ惑星を目指す。
「サーシャ、今回の戦いはお前とベリアルにも一緒に来てもらう」
ソウコウがサーシャに出撃の指示を出す。
「承知いたしました。して、私の装備は?」
「大丈夫。ちゃんとメンテナンスしておるわ」
アルデが胸をはって答えた。
「へぇ、強化外骨格も持ってきてたのか」
サトシが少し驚いたような顔をする。
「当たり前じゃろ。あれがないと白兵戦はつらいでなぁ」
「バランって?」
ユカが尋ねる。
「前の戦争の時に、俺とアルデとサーシャが使用していた強化外骨格だよ」
「ふーん……」
ユカは面白くない気持ちになったが、我慢した。
「ユカ、今回の戦いではサーシャ、ベリアルが不在になるからプレアデスは使えない。艦載ロボでの警備を怠らないでくれ」
「了解したわ」
やがてプレアデスたちは敵の占領下にある惑星に到着した。
惑星にソウコウ、ベリアル、サトシ、サーシャ、アルデが降り立つ。
「ったく、久々の娑婆だ。楽しませてもらうぜぇ」
ベリアルは肩を回しながら息を大きく吸った。
サトシ、アルデ、サーシャの3人は大きなバイクに乗っている。
「『ヌージィガの五将軍』の復活だな」
ソウコウが笑った。
残る班の指揮はユカがとり、ウサとユウナがそれを補佐する。
マァル、アイラ、西野、吉川は艦の警備を行う。
遠くの方ではギガンの部隊が大きく展開を始めているのが見える。
そのはるか先には敵とみられる点が見えた。
ソウコウはサトシのバイクの背に立ち、ベリアルは背中から羽を伸ばした。
「さぁ、行くぞ!」
サトシたちは敵に向かってアクセルを全開にした。




