第22話 勇者ソウコウ
今やフェルミ通商条約機構の英雄となった「赤い稲妻ソウコウ」。
ソウコウが英雄となったのは偶然ではない。
「必然」であり、「運命」なのだ。
彼は英雄として生まれ、英雄となるべく育った。
◆◆
その男の名はソウコウ。
今は亡国であるヌージィガ王国で唯一認められた勇者だ。
ヌージィガでは、勇者は生まれ変わりによってこの世界に一人だけ存在するという伝承がある。なお、当世および先代勇者の誕生日は国民の祝日になっている。
先代の勇者が死んだ日、辺境にある町の靴屋の次男としてソウコウは生まれた。
父親は優秀な木靴職人で、ソウコウが生まれたその日のうちに小さな木靴を作り、生まれたばかりの息子に履かせた。
ソウコウが3歳になったある日、国王の使いと最高神官がソウコウのもとへ訪れ、告げた。
「この者こそが勇者の生まれ変わりである」と。
その「祝福」は、家族にとっては「死の宣言」だった。
父と兄はソウコウが勇者の祝福を受けたその日に処刑された。
ヌージィガにおいて勇者とは、最強の存在であると共に最高権力者の一人と位置付けられる。それゆえ権力を持つ者の乱立を防ぐため、勇者の家族にはただ一人母親のみが認められるのだ。
それからソウコウは勇者の後継者として国の庇護下で勉学、戦闘、魔法、部隊指揮の英才教育を受けてきた。
◇
彼が初めて人を殺したのは二十歳の時だ。
勇者の後継者は二十歳になると、最初の試練である決闘を行う。決闘の相手は先代勇者の嫡男だ。
「血」よりも濃い「運命」の力を証明するためにこの決闘は行われる。
この決闘で生き残った者が正式に次期勇者となる。
決闘が始まった。
先代勇者は屈強な大男で、嫡男はしっかりとその血を受け継いだ大男だ。
先に仕掛けたのは先方だった。
巨体からは意外なほど繊細な剣捌きで的確に急所を狙ってくる。
ソウコウには相手の剣の運びが手に取るようにわかった。そして、相手の突き出す剣の下を潜り、足を集中して切りつけた。
勝負は数分でついた。
相手は足からの出血が多く、すでに動くことができない。
ソウコウは顔色ひとつ変えず彼の首を刎ねた。
この勝負がついた瞬間に先代勇者の血族は処刑されることが決まった。
晴れてソウコウは正式な勇者となり、先代勇者の装備一式を賜与された。
◇
その後、ソウコウは幾多の仲間と共に数多くの冒険を重ね、国を守り続けた。
彼の仲間に課せられた使命は「勇者を死なせないこと」それに尽きるものであり、冒険のなかで多くの仲間が命を落とした。
気心知れた仲間が自分のために死ぬ場面をなんども目の当たりにしたソウコウにとっては「自分が強くあること」が「仲間の命を守ること」と同義となっていった。
「強くあることは責任であり、運命である」
ゆえに、ソウコウは英雄となるのは「必然」であり「運命」だと考えている。
◆◆
サーシャが敵を察知する。
「ソウコウ様、敵を感知しました」
「数は?」
「一隻、中型艦のようです」
目の前にはボロン指揮する重巡洋艦「パール」がいた。
「紅白戦といくか」
ソウコウは不適に微笑んだ。




