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chapter 3 バッドラック?ノーサンキュー! side:H

「肩揉みしますね!座っててください兄貴!」

「うん、別に肩凝ってないからいいよいいってイテテテテテテテテテテ!」

  

  昼休み。今日も午前の授業が終わり、みんなが一息つく時間である。弁当を食べる者、食堂でご飯を食べる者、昼寝する者、人それぞれである。当然この僕も静かにご飯を食べて、余った時間をゆっくり過ごしたいと考えていた。まあご覧のとおりそんなことは夢幻なのであるが。

  最近は昼ご飯もバンと食べることになっている。別にほかのやつと食べてもいいのだけれど、そうするとこの番長は俺の周りをうろつきはじめ、何かあるとすぐに口を出してくる。正直一緒に食べている友達がかわいそうだし、何より手元に置いておいてコントロールする方が安全である。よって最近は二人でご飯を食べる。男子二人。なんともいえない悲しさがこみあげてくる。どうしてこうなった。


  あと肩が凝っていないというのは嘘である。正直この番長といると肩が凝りっぱなしである。今日も授業中に僕を指名した先生に殴りかかりそうになった。「人に聞くならまず自分で答えやがれ!」とか。それでは指名する意味なくね?とは言わない。

『おいバン!兄貴の体がリラックスできてねえぞ!もっとキツクだ!気合い入れろ!』

「ちょっと待って勝手に人の腕時計に入って何言ってるのやめていたい!死ぬ!ストップ!」

 

 そしてバンをさらに厄介にしているのが、僕が直してあげた彼の相棒のナビのトッコ。(バン的)正式名称「トッコ・ザ・パラリラ」である、


 ちょうど五番目に制作したナビが失敗した所だったので、そのデータを使って改造したのがこのトッコである。少々ガサツで突っ走りすぎなところに問題のあるナビになったが、バンはとても気に入ったらしい。まあ市販のナビだった頃に比べると性能は明らかに上がっている。

 

 しかしこの性能が良くなりすぎたのが(今のメルト同様)問題であり、勝手にプロテクトを破って人の腕時計にアクセスしてくる。おかげでバンから隠れてもすぐに場所がばれるし、今だって勝手に脈だとかを測ってるみたいだ。そもそもこの状況、リラックスできるわけないじゃない!

 

 ちなみにトッコさんも学ランにさらしで、金髪のポニーテールで、非常に美人である。まあ僕が作ったから当然だが。だからこそ惜しい!もうちょっと性格が何とかなれば!あと胸!胸が大き……いや、やめておこう。夢は夢である。というか、

「夢なんか見てられないほど痛いんですけど!?もげる、まじもげるう!」

「効いてるみたいで何よりですよ兄貴!」

『よし、もっとだ、いけ、バン!』

「人の話聞けよおおおおおおおおおおお!」


 ゆったりとした昼休みはここ数日訪れていない。

「日和さん、助けて……。」

 命の危険を感じ、咄嗟に隣でぽやぽやしている日和さんに助けを求める。

「う~~~ん?な~~~~に?ハント君?」

 ゆっくりし過ぎである。ここは急いでほしいところである。というか急いでくれないともう意識が続きそうにない……

 そんな必死な僕の心を理解してくれたのか、しばらくして日和さんは、ああ~と何かを理解したような顔をし、ポンと手を叩いた。

「バン君、おはよう~」

 そこかよ!今は全くそれどころじゃないんですけど!?いやそれ以前にもう昼休みなんですけど!?クラスでも異様なオーラを放つバンの存在に昼休みまで気づかないとは、恐るべし。侮りがたし。(周りをみていないとか、そういうことではないはずだ。)


 そして日和さんは挨拶をし終わるとニコニコとこっちを見て笑っているだけだ。まずい、彼女本当に状況がわかっていないぞ。もうダメか!俺の物語ももうここでおしまいか!くそうこんなことならメルトともっと仲良くしとくんだった!無念!男子高校生、死因:肩揉み!

 そんな感じでもう希望を捨てて走馬燈を見ていたら、急に肩から痛みが消えた。何事か、と振り返るとバンが手を肩からはなして直立している。やっと俺の言葉が届いたのか、と一瞬思ってホッとしたが、どうやら様子がおかしい。なんかもじもじしてるし、ごにょごにょ何か言っている。

 

 謝罪の言葉か?え、そうなのか?と思って耳を傾けると、

「あ……そ、その、え、お、お、お、おは、おは?」

 とかわけのわからないことしか聞こえてこない。僕のことも忘れているようだ。不気味にも思ったが、なんだ、壊れちまったのか、まあ静かになるならそれでもいいかな、とも思って観察していると、僕の腕時計にいたトッコが深いため息をついた。

『はあ……まだ直んねえのかよ……だらしねえなあ……。』

 何やら事情を知っていそうなので、こっそり聞いてみる。

「なあ、バンのやつ、いったいどうしたんだよ。」

『ああ、兄貴。そういえば兄貴は知らないんですか。もうほんとに困ってるんですけどね、実はオレの相棒、その……。』

 トッコが珍しく言うことをためらっているので、よっぽどのことか、まさか俺と同じで過去のトラウマから女性に対するアレルギーがあるのか?なら俺はバンのことを勘違いしていた、ただのガサツなやつじゃなかったんだな!ごめん!とか思っていたら、


『女と話すの、恥ずかしくて緊張するらしいんですよ。』

 とかごく平凡な答えが返ってきた。なんだそれは。思春期真っ盛りの中学生かこの野郎。もう高校三年生だろ。なにが番長だ俺の涙をかえせ。

『ほんと、情けない話ですよね……嫌になっちゃいますよ。』

「でも、君とはよく話してるじゃないか?ナビは大丈夫なのか?」

『ああ、オレたちはマブダチですから。そういうの関係ないっすよ。』

 よくわからん。こいつらのことは良く分からんが、まあ何にせよバンが静かになったのはいいことである。ちょっと休憩しよう。(ちなみに日和さんはバンのことなど全く気にしていないようである。バンよ、強く生きろ。)

 

 まあバンのことなどほおっておいて、ようやく解放されて、目を閉じて休憩しようとした。すると今度は町から聞こえてくる騒がしい音が耳についた。サイレンか?まあ何にせよ、非常にうるさい。何か事件でもあったのだろうか?

「何か町であったんですかね?」

 

 ちょっと日和さんに聞いてみることにした。

「う~~ん、とってもうるさいねえ。まあ、最近よく起こってる機械のトラブルが原因になってるんじゃないかなあ?」

「機械のトラブルですか?その割にはずいぶん騒がしいですけど。」

「あれ~、ハント君知らないのお?ダメだよお、女の子のお尻ばっかり追いかけてちゃあ。」

 意外にキツイこといいますね。まあ日和さんが知ってるならかなり話題になっているのだろうか。世間のことを知ろうにも、学校は疲れるし、家に帰っても疲れるしでロクにニュースなんか見れていない。

「最近よく機械とかが調子わるくなって、電車とか車に影響が出てるみたいなのお。私も今朝は電車が遅れてこまっちゃったあ。」

 

 なるほど。市民の生活にも影響が出ているとなれば、なかなか困った問題であるようだ。だが機械の調子が悪くなる?今時交通手段の機械などは事故を防ぐため、かなりの高品質なものになっている。それが町のあちこちで同時期に調子が悪くなり始めたとすると……。


「原因はプログラム関連とか、そのあたりなんですかね?」

「そお、当たり~。さすがはハント君だね~、機械に詳しいもんね。なんかそういうことらしいよ。テレビで言ってた~。」

「いやいや、それほどでも……。」

『そりゃ、兄貴なら当然っすよね!』

「ちょっとトッコさん、黙っていなさい。」

 昨今の男子高校生が心から(ここ重要)女子に褒められることなんてめったにないのである。大体はお世辞。お世辞なんだ!まあそれでも気持ちよくなるのが男だけれども!とにかく余韻に浸らせることぐらいさせてくれよ!なあ!お前の主人は後ろでとうとうわけのわからないことを言いだしているがな!

 

 ……少し熱くなってしまったので、話を戻そう。

 とはいえ、仮にプログラムの問題だったとしよう。それならば電車が止まったりすることに納得がいくが、次に問題になるのは、なぜそのようなトラブルが色々なところで一斉に起こっているかということである。

 

 更には、

「で、そのトラブルってのはいつごろからなんですか?」

「え~と、う~んと、いつだっけ…………。」

『ざっと一週間前ぐらいからっすね!最初は小規模だったらしいっすけど、最近はヒドイみたいっすね!』

「うん、迅速なデータ収集ありがとう、トッコさん。」

 こいつは僕と女子との楽しいおしゃべりを邪魔したいんだろうか?自分の主人は後ろで泡を吹いているのに。まさか俺……モテ期!?……やめておこう。

 

 そう、さらに問題になってくるのが、修理会社などの行動の遅さである。普通一週間もあれば、プログラムの修繕、更には問題点を踏まえて、更に安定したプログラムへと作り変えられるはずである。それなのに一週間経っても直らないどころか、被害が拡大しているとは……。

 今の社会は、科学技術に非常に大きく依存している。なのにこの対応の遅れ。なんだか不気味である。

 そう思うと、町に鳴り響くサイレンの音が、その不気味さを一層際立たせているようにも感じた。なんだか嫌な感じだ……。


 まあそんな良く分からない不安を感じていようとも、時間は進み、授業が始まり、そして授業は終わるのである。ようやく学校から解放されて、普段はそこまで感情を表に出さない(本当です。最近は周りの環境が異常なんです。)僕も、少し気分が良くなる。さらに今日は帰りに電気屋に寄っていくことにしている。ますます気分が盛り上がる。盛り上がるのはいいんだが。


「…………なんでお前ついてくるの?」

「そりゃあ兄貴と俺はもはや一心同体ですからね!当然です!」

『アタイも右に同じです、兄貴!』

 こいつらはそろいもそろって僕の楽しい時間を邪魔しにくるのか。もういやだ。早速家に帰りたくなってきた。いや…………家に帰っても今度は罵倒されるのである。「もう帰ってきたの?この引きこもりが!」とかいわれるのである。もうほんといやだ。


 というわけでどのみち八方ふさがりなので、極力バン達を無視しながらショッピングを楽しむという、考えられるなかで最善の選択をすることにする。まあほぼ無視なんてできないんだけどね。(この前は僕が買い物しようとしたら、店員にタダにしろって言ってつかみかかったりしたし。)

「で、兄貴、何買うんですか?」

「まあ正直あんまり目的はないんだけどね…………もっといろいろできるようにパソコンを改造したいとは思ってるんだけど、如何せん金がないよね。」

「金なら俺が持ってきましょうか?」

「そのお金はどこで手に入れたの?」

「…………………………」

「言えないのかよ!」

『気合い、気合いじゃないですか、ねえ、バン!』

「………おお、そうだ、気合いだよなあ、トッコ!」

 もういいです。確かにお金を稼ぐには気合いが必要だろうけど、きっとこいつらの言う気合はそれとは別物だろう。よって受け流すことにする。


 それにしても、やはり街中は少し騒がしいようだ。実際僕が乗っていたバスも交通渋滞にはまって遅れていた。街で流れているニュースを聞く限りでは、どうやら自動運転の車が暴走したとのこと。なかなかに怖い話である。

「さっきからうるさいですね。ちょっと静かにするように言ってきましょうか?」

「お前が行くとさらに騒がしくなるからやめてくれ。」

 ちゃんと反応してはいけない。あくまで受け流しつつも暴走しないようにすることが必要だ。……いや、いっそのこと暴れてもらって警察に捕まえてもらうのはどうか?……きっと巻き添えをくらうからやめておこう。


 そうして歩いていると、少し人気のない通りに入った。近道である。車が一台とまっているいるくらいだ。

 しかし……なんだか気味が悪い。異様に静かな気がする。

「なんか……静かだな。」

「そうすか?このくらいがちょうどいいと思いますけど?」

「うん……でもこの時間に、人通りが少なすぎないか?」

「そうすか?まあ車があるからいいじゃないですか。誰ものってませんけど。」

 そんな会話をしながら通りを歩く。こんなやつでも誰もいないところでは話し相手ぐらいにはなるものだ……本当は彼女とかがいいけれど。いや、言うまい。



「あ、もしかしてビビってます?兄貴も怖がりっすねえ。大丈夫ですよ、勝手に車が動いて襲い掛かって来たりすることなんてないですから!」

「ビビッてないし!あとそんな具体的なことは言うなよ!世の中にはフラグってもんが……。」

 

 ブルルルン。


「……………………なんか今、音がした?」

「……………………しましたかね?」 

 嫌な予感がして後ろを振り返ると、たった今通り過ぎた車のエンジンがかかったようである。

「……………………持ち主が、帰ってきたのかな?」

「……………………でも、ドアを開け閉めする音、聞こえましたか?」


 そんなものは聞いていない。首を激しく横に振る。

 まあ車のエンジンがかかっただけなのだから、大したことはないだろう。といつかさっさと目的地に行こう。なにも起こるはずないさ。なあ、そうだろう?

 

 そんな希望に満ちた考えは、すぐに打ち砕かれることになった。

 恐れていた通りの展開。

 車が急発進して、こっちに突っ込んできた。

「な…………………………へ?」


 猛烈なスピードで突っ込んでくる。もちろんこのままでは僕にクリティカルヒットだ。そしてあんなものにぶつかられれば、どうなるかなど考えなくてもわかるだろう。

 

 しかし、逃げなければ、避けなければ、そう頭は瞬時に判断するが、肝心の体は……咄嗟には動いてくれなかった。運動不足?家にこもりすぎ?そんなことではない。


 恐怖で体が固まってしまったのである。アニメみたいに横っ飛びで避けるなんて、できるはずもない。そんなに世の中は甘くはなかった。


 終わった。俺の人生、ここで終わりか。大したことはできなかったな……。彼女もできなかったな……。大して青春もできなかったな……。


 せめて最後に、メルトと仲直りでもしたかったな……。


 そんな最後の思いを抱いて死を覚悟した僕だったが……死ぬことはなかった。


「危ない!」

 そう言われて、僕は思いっきり横から突き飛ばされた。同時に重いものが体の上にのしかかってくる。


 そんなことをしたのは……もちろんバンだった。

 咄嗟に俺を横に突き飛ばして、更に自分も横っ飛びしたようだ。なんて身体能力。さすが番長、といったところか。

「大丈夫ですか、兄貴?」

「ああ……大丈夫だ、助かったよ。」

 さすがに素直にお礼を言った。こいつがいなければどう考えても轢かれていたから。さすがにこんな時まで冷たい態度をとるほど恩知らずではない。


 少し安心して息をつくと、今度は後ろから轟音が聞こえてきた。何事か、第二波か!と思って後ろを向くと、暴走した車が電柱にぶつかって止まっていた。

「……とりあえず、助かったみたいだな……。」

 正直あまり実感はわかない。助かったという実感も、轢かれそうになったという実感も。

「まったくです。何考えてんだあの車!トッコ!」

 横で立ち上がったバンが怒りながら彼のパートナーに語り掛ける。

「了解、任せときな!」

 威勢よく返事をすると、トッコはバンの腕時計の中から姿を消した。どこかに行ってしまったらしい。だが今はそんなことはどうでもよかった。


 そうしてしばらく時間がたった。時間がたつにつれ、段々と実感が湧いてきた。ようやくだ。すると今度は激しく怖くなってきた。体が震えてきた。嫌な汗も噴き出してきた。こんな感情はいままで味わったことはなかった。だがその感情が何かははっきり分かった。


 これは恐怖だ。それも普通の生活では味わうことのない真の恐怖。命が消えそうになる恐怖。(もちろんできれば味わいたくなかったけれど。)

 しばらくは動くことはできなかった。バンも何かを待っているようで動こうとしない。

 

 そして何分か経ったと思われる頃に、再びトッコの声が聞こえてきた。

「調べ終わったよ……やっぱりハッキングされた跡が見つかったよ。」

「ホントか!たく、どこのどいつだそんなことする奴は!しかも兄貴を狙うとは!許せん!」


 バンが激しく激怒し始めた。僕も少し冷静になってはきていたので、彼らの会話を聞いて何をしてきたかを考えてみると……。


「バン、もしかしてあの車のシステムにアクセスさせたの?」

「え?もちろんっすよ兄貴!何言ってんすか!」

「オマエ……。個人の所有物に勝手にアクセスするのは結構まずいことなんだぞ?」

「え……?マジすか?」

 ……まあ彼の世間知らずには慣れているから、何も言うまい。それにしても一般車両にアクセスするとは。ああいうのは悪用されないために非常に強固なプロテクトがされているんだが。今回のような事件が起きないようにする為に。それをすぐに突破するとは、トッコ恐るべし。僕が作ったんだけど。


 とりあえずそういうことは置いといて、侵入できたというならば、とにかく安全な場所に移動して話を聞こう。車がどのようにハッキングされて、人を襲おうとしたのか。非常に気になる。そんなことはなかなかできない。


「バン、とにかく場所を移そう。ここはあんまり……。」

 

 ゆっくり立ち上がりながらバンに話しかけようとした。しかしできなかった。


 それは、激しい悪寒が走ったからである。ついさっき死にかけて、神経が敏感になっている体中に。


「……?どうしたんですか、兄貴……?」

 バンは僕がなぜ固まってしまったかを理解できないようで、怪訝そうに見てくる。だが、それどころではない。恐怖が再び全身を支配し始める。体が動かなくなる。


 そして聞こえた。声が聞こえた。僕とバンとトッコ以外に人なんていないのに、声が聞こえた。はっきりと。


「ふふ…………………………サプライズ、喜んでくれた?」


 妖艶な声。聴く者の心を惹きつける声。女性の声。

 

 そして何より……聞いたことのある声。


「でもまだまだ足りない……あなたをもっと、驚かせて、あげる……。」


 そこまで聞いてやっと僕の意識は覚醒した。身の危険を感じて。そして声の主はどこにいるのかを探した。バンにも聞こえたようで、同じように周りを見ている。そんなに遠くから出はない。いや、むしろとても近くから聞こえた。それこそ、横に立っているバンよりも近くに……。


 そして気づいた。腕時計である。僕が付けている、腕時計。そこしかない。


 急いでその画面を見た。いや見ようとした。でもできなかった。


 それは、腕時計だと気づいた瞬間には、もう次の攻撃が僕を襲ったから。


 一瞬だった。激しい痛みを感じた。腕から。そして全身に。立っていられないほどの。意識を保っていられないほどの。

「ぐ……ああああああああああああああああああ!」


 そしてそこで僕の意識は途絶えた。


 しかし最後に確かに見た。僕の腕時計の画面に。本来ならばメルトがいるはずの場所に。人影を。


 あれは……誰だ?


 その答えは、でなかった。


 今日はとても、不運な日だと思った。

















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