chapter 11 スクランブル・シンキング side:M
「また、忘れてるわね、あいつは……。」
桃田に色々と説明している主人を見て、自然と言葉が漏れてしまった。それは、隣で黙っているだけだったブレイブにも、聞こえていたらしい。今まで石像のように動かなかった顔がこちらを向いた。
「忘れている?何をだ。」
そんなことを聞いてくるのはちょっと意外だったが、イライラしていたので少し煽ってやることにした。
「あら、他人のことなんか全然興味ないのだと思っていたのだけれど。そういうことだけ聞くなんて、なかなかな趣味してるじゃない?」
「答えたくないのなら、聞かん。」
……。これだからつまらない男ってやつは。静かなのがかっこいいこと、とか勝手に思ってるのよね。それはただの無口だっての。あーホント嫌になるわ。でもこのままだとイライラするだけなので、もう少し付き合うことにする。
「まあ、どうしてもって言うなら、教えてあげるわ。好奇心というのは、やはり抑えられないものだからね。分かるわよその気持ち。」
「いや、別に興味はない。事件に関係ないのなら、聞いても意味がない。」
「……はあ、あんた、ハンサムとはまるで逆って感じよね、だからこそ相棒、みたいな?確かにそういうのは多いわよね。アタシも嫌いじゃないわよ。最後には協力するのが、お決まりなんだけど燃えるわよね。」
「……。」
ヤロウ、また仏像みたいになりやがった。まるでお前と話すのは口を動かす力が無駄になる、とでも言いたげな目だ。個人的な意見だけれど。
それからまた静かになった。会議室では相変わらず凡人が話を続けている。私はこれといってやることはない。もう口を挟む気にもなれない。かといってここを離れるわけにもいかない。この施設は不自由だ。ますますイライラしてくる。
どうしようか、いっそのこと寝てしまおうか、そんなことを考え始めたとき、ブレイブがまた顔をこちらに向けた。今度は何か嫌味を言われるのかと思ったが、そんなことはなかった。
「何か言いたいことがあるなら、言ったらどうだ。そんな人を殺す二秒前みたいな顔をされると、こちらも落ち着かん。」
「……。あんた、ギャップ萌えとか狙ってるわけ?」
まさかこの堅物から、他人を気遣うような(本心かどうかはかなり怪しい、と女の勘が言っている)言葉が聞けるとは、実はそんなキャラだったのか?あんな軍曹みたいな顔なのに?目はサングラスで見えないけれど、少なくともそんな顔ではなくない?いや、まあ顔についてのことは今は置いておくとして。
「ため込まれて、後で暴れられるのが困ると言ってるんだ。」
「なんで我慢してるってわかるのよ?警察の勘ってやつなの?」
「分かるようになったんだよ、ここにいるせいでな、ここの奴らは、ぎりぎりまで本音を言わずに我慢するような奴ばかりだ。それで最後には爆発しやがる。そんな奴らのお守を任されてりゃ、嫌でもわかるようになるさ。」
奴ら、というのはもちろん電課のメンバーのことだろう。全員を知っているわけではないが、まあ普段桃田やハンサムの相手をしているのなら、納得できる。あいつら多分、人前で弱音とか吐かないタイプだろうし。ブレイブの性格的に、相談役とかには向いてなさそうだけれど。
それはさておき、どうしようか、と考えた。こいつに言っても、何も解決しないのは明らかだろう。それに個人的な話なので、関係ない人を巻き込むのもどうかと思う。
「相談役に向いていない、とでも思っているか?俺は確かにアドバイスなどはしないがな、あのガキとかは、そんなことお構いなしに、話したいことを話していくぞ。」
ふむ、なるほど。つまり聞き上手だと。いや、上手でもないだろうが、愚痴る相手としてはちょうどいいのかもしれない。なんせ文句を言わないのだから。サンドバッグ的なやつだ。
「はあ……。分かったわ。確かにこのまま黙ってると爆発しそうな気がするし、人に話すと気が楽になるってよく言うしね。申し訳ないけれど愚痴に付き合ってもらおうかしら。」
ブレイブは何も言わないが、何も言わないのだから話をしてもいいのだろう。
「あいつ……ウチの主人、すっかり話すことに夢中になってるでしょう?あれはウキウキしてるのよ。自分が凶悪犯を追い詰めている、とか思ってるんでしょうね。気分はアニメの中の探偵団、ってところかしら。」
身の回りの人物について話し終わると、休日や放課後によく行く施設について説明を始めている。ご丁寧にここは狙われやすそう、とか言いながら。
「まあ犯人を早く捕まえたい、という気持ちが大きいんでしょうね。」
「ガキの遊び感覚で操作に参加されるのは確かに目障りだが、結果的に犯人が捕まればいいんじゃないか。それとも、怪我をした友のことをもっと考えろ、と言いたいのか?」
ずっと無反応なのかと思っていたが、ブレイブは口を開いた。適度に相槌を打つ方が相手が満足しやすい、と分かっているらしい。彼に無関係な話、というわけでもないしね。
「まあ、バンさんが怪我をしたって言うのに、ウキウキしているのは確かに問題ではあるわね。でも、あいつは別に忘れているわけではないんでしょう。逆にかなり意識してしまっている。だからこそでしょうね。」
ブレイブはまた黙る。意味が良く分からなかったのだろう。
「バンさんが襲われた。そのことに怒りを感じている。復讐してやる、とすら思ってるかもね。その怒りから、落ち込んでいる暇はない、今は協力しなければ、と考えた。ここまではまあ悪くはないわね。でも今となってはその気持ち、きっと薄れてるんでしょうね。」
「動機は良かったが、雰囲気にのまれてしまった、というのか。」
「まあ、簡単に言うとそんなところ?」
何か一つのことに集中すると、他のことを考えなくなるのは、人間としては普通であるが。
「だが、それなら、なぜそこまでお前は苛ついている?主人が調子に乗る、なんてしょうもない理由で、そこまでイライラするものなのか、お前は。」
ブレイブはさらに質問を続ける。やはり少しは興味があるようだ、私が怒っていることについて。
「まあ、ね。忘れてんのよ、あいつは。自分が何故狙われているのか、とか、プリティが何故暴れたのか、とかそういうこと。さっきまでは部屋にこもって、うじうじ考えてたのに、瞬間的に忘れるなんて、ありえなくない?」
そうだ、こいつは今、捜査に協力する、という名分の下で、全部忘れてやがる。いや、忘れてはないだろうが、考えないようにしているのは明らかだろう。これではプリティを連れ帰った意味があまりない。
「確かに、そうかもしれんな。いや、お前が言うのならそうなのだろう。」
ブレイブは当たり障りのない返事をする。いきなり他人のことについて言われたら、反応はこんなものだろう。少し上からな考えかもしれないが。だからこそ聞き上手、か。
しかし、ブレイブはそこで再び予想外の言葉を口にする。
「だが、今この段階で、すべてを求める、というのも、少し強引なのではないかと、思うがな。俺は。」
「……それは、どういう意味?」
ブレイブはこちらを見る。何を考えているのか。サングラスのせいで表情は見えない。だからよくわからないが、ふざけてはいないだろう。そんな対応ではないし。
「部外者の俺が色々言うのは邪魔臭いと思うが、一般論で言わせてもらおう。お前の主人は機械関連のことに関してはずば抜けている、と言っていいレベルだ。それはいい。だがそれ以外は、ただの高校生ではないのか。」
「それがどうしたって言うのよ?」
いまいち彼の言いたいことが分からない。
「普通の高校生は、目の前に幾つも難題を突き付けられたとき、そのすべてに、順序よく、対応できると思うか、と言っているんだ。」
「……。なるほど、アンタは、あいつはいろんなことを考えている余裕なんてないんだ、と言いたいわけね。」
つまりは、いろんなことが起きて、大変であるから、大事なことを見失っても、それは仕方のないことなんじゃないか、と言いたいようだ。だがそんなことは、私にだって分かっていることである。だからこそさっきは時間を与えたのだ。
「不満そうな顔だな。」
ブレイブはこちらを見ていった。顔に出ていただろうか。いや、出てもいいんだけれど。
「別に。アンタの言う通りよ。でもね、あいつが今までしてきたことを考えると、そんなことはもう言ってられない段階……。」
「あいつのことに関しては、お前が詳しい、そのことはいいんだよ。問題はお前の主人でなく、お前が、今、焦っている、そのことだろうが。」
ブレイブは、そこでぴしゃりと言い放った。話すのが面倒くさくなった、とでも言わんばかりに。その変化と、言った言葉に、私は一瞬ついていけなかった。
「な、アタシは、確かに今はイライラしているけれど、いたって論理的に考えて……。」
「いいや違うな。それこそ、俺が今言ったことだ。お前の主人は、命の危険にさらされて、友人を襲われて、冷静ではない、それは普通の人間だからだ。ならお前はどうなんだ、お前は、普通の思考回路を持ったナビじゃないのか。え?」
そこまでブレイブは早口で言う。もうこちらの意見を聞くのはやめたのか。何が彼をそこまでイライラさせているのかわからない。だがブレイブは止まらない。
「現に貴様は、目の前で友人が刺されて、犯人に殴りかかったんだろう?後のことは考えていたかもしれんが、殴りかかったのはほぼ感情に任せての行動だろう?別にその行動が悪いとは思ってない、普通の奴なら、泣くかキレるか、ほぼ二択だろうよ。」
「あ、あんた、何が言いたい……。」
「ならお前が今イライラして、物事を完全に冷静に見れていないのも事実だろう、それが普通だからな。だから落ち着けと言っている。今のお前の考え方では、何も変えられん。」
そこでブレイブは話すのを辞めた。言いたいことはいいきったのだろう。だがこちらとしては、それどころじゃない。ブレイブに今言われたことに、少なくともショックを受けていたからだ。
冷静ではない。彼は今そう言った。私が?そんなはずはない、と思っていたが、他人にそう見えるのならば、それは紛れもない事実なのだろう。主観なんて意味はない。だがそれならば、今の私は混乱して目の前のことしか見えていない主人とあまり変わらないと、ブレイブはそう言いたいのか?バカな。私は、何も間違ってなど……。
いや、そう考えること、というか、そうとしか考えられていない時点で、焦っているのか。私は。まあ言われてみれば、先ほどは少し待ってやったが、バンさんが襲われたことで、また状況は変わったのだものな。
荒療治は必要だ、それは間違いない。目の前にプリティを連れてきたことで、あいつの気持ちにも少なからず影響を与えていることも間違いはない。そこに関しては私は焦っているとは思わない。だがここからがさらに重要なのだ。
自分でしっかり考えさせなくては。急かして誘導したら、それは意味がないのだから。そうだ、ついこの間までは、自分で気づかせることに意味がある、と考えていたのだ。だから待てたのだ。
「……。そうね、少し、ミスをしていたわね。ここまで来たらちょっかいを出すのは良くないわ。今口を出すことも、冷たい目で見ることも、マイナスになるんでしょうね。」
まあ今のブレイブの言葉は、まだそこまで横やりを入れていない私に対しては、少々キツイ言い方かもしれないが、今言わなければどのみち後で何かやっただろう。事前に釘を刺されたというわけだ。こいつ、なかなかやる、のかもしれない。
「さすが、扱い慣れてるだけはある、ということかしら?」
「ふん、黙っとけ。」
ブレイブは向こうを向いてしまった。おそらくもう相談役は終わりなのだろう。だが、普通にに説得力のある話だった。普通のナビ、か。確かに、ちょっとほかのナビより強くて、可愛くて、美しい、ということ以外は、普通のナビだしね。
そしてそんなことが言えるブレイブは普通のナビより少し強くて、相手に助言するのが上手い、普通のナビなのだろう。
「じゃあ取り敢えずは、アタシは個人で動くことにするわ。いくら警察が対策するっていっても、敵はこっちのことよく知ってるでしょうから、思わぬところで攻撃してくるだろうし。」
なにより敵の本命は凡人であるため、その周りにいる私はターゲットにされてもおかしくはない。自分を守る手段ぐらいは考えておいて損はない。もちろん攻めてきたら守る以上に殴ることを優先するけれど。
「……敵のことだが、お前はもう誰なのか分かっているのか?」
ブレイブが再び口を開く。相談役は終わりでも、警察としては情報を集めるべきなのだろう。
「ううん、まあ、愚痴を聞いてくれたお礼に話して上げる。ぶっちゃけ分かってるわよ。誰が相手なのかくらい。」
隠しても仕方ないので、行ってしまうことにした。そう、もうわかっているのだ、今回の相手が誰なのか、ということに関しては。すごく分かりやすいし。
「そうか。」
ブレイブも大体予想はできていたらしく、私の言葉に驚いたりはしなかった。しかしすぐ黙ったところを見ると、続きを聞きたいらしい。確信とか、詳しいことについてはまだよく分かっていないのだろう。
「分かってはいるんだけどね、でもそれは誰なのか、ということぐらい。敵の性能も、攻撃手段もよく分からないし、誰かが操っているのか、なんてことも全然わからない。だからこれ以上はしゃべらないわよ。容姿も分かってるんだから、いらないでしょ?」
なにせナビなのだ。名前が分かったからと言って、どこかに痕跡がある、なんてことは分かりはしない。そんなもの残さないだろうし。生身の人間よりはずっと探しにくいのだ。
「そうだな。ただ、性格などは教えてほしいところだ。今までの行動で思考パターンはある程度読めるが、フリという可能性はある。そこら辺が分かっていれば、先を読めるかもしれないんだがな。」
「性格、ね……。高性能なナビは、それが弱点みたいなもんよねえ。そういうのなければ、考えなんて読めるはずないのに。人間に近づきすぎたが故の弱点なんて、皮肉だわ。」
「嫌か?」
「全然。そうでないと、生きてて楽しくないじゃない?」
その言葉にブレイブはふっ、とキザに笑った。同意なのだろう。こんなブレイブでも(失礼だが)心を持つ以上、失いたいとは思わないのだ。もちろん消えたいとも思わないだろう。人間と同じ、誰だってそうである。
そのことをあいつがちゃんと理解するのに、果たしていつまでかかるのやら。
「性格ね…………まあ変わってるかもしれないからなんとも言えないけれど、どこまでも一途で、諦めることをしらない、って感じ?性格ではないかもしれないけれど。」
「分かった。参考にさせてもらう。」
こんなことが役に立つかは知らないが、満足そうだからまあいいか。
「ああ、そういえば一つ聞き忘れてたけど。」
「なんだ。」
「さぅき桃田が、凡人が襲われてもいいように特別なやつに監視させる、とか言ってたけれど、あれはどういう意味なの?なんかするの?」
桃田は何も言わなかったが、あいつを監視するということは、勿論家も監視されるのだろう。そして敵がナビである以上、監視もナビとかそこら辺であることは確かである。ならば私のプライベートにかかわるかもしれない。重要である。
「ああ、俺が行く。」
「…………え?」
なんだと。聞いてないぞそれ。どういうことだこの野郎。
「まあ外部で長期間働く場合は、大体俺がやらされるんだよ。面倒だが、ここにいてもそれは同じだからな。しばらくはよろしく頼むぞ。」
「あんたが、家に、来る、と?」
「ん?ああ、心配するな、俺はあの優男ナビとは違って別にほかのナビに興味などないからな、プライベートを見たからといって何も思わん。いないものとして扱ってくれればいい。その方がこちらも楽だしな」
こちらが呆気に取られているのに気づいて、ブレイブはそう付け足した。いや、そういうことじゃないんだよこのハゲ。理解できないならその優男とお前は大して変わらねえよタコ。
なんだか久しぶりにしょうもないことで頭に来てしまった。さてどうするか、さすがに来るなとは言えない。かといって易々と家のパソコン(つまり私の家。女の家よ!)に入れるわけにはいかない。やべえぞこれ。
とかなんとか考えていると、別のところから声だけが聞こえてきた。
「……ふふ、苦労しているね、メルト君。まあ彼も悪気があるわけじゃないんだ、ただ鈍感なだけなんだよ。罪な男だろう?」
……このウザいノリは。
「噂をすれば何とやら、か。もう大丈夫なのか、クソ野郎。」
「せめて名前で呼んでくれないかい?まだ声を出すだけで、姿を現すことができない重症の僕に、そんな扱いはないだろう?」
やっぱりだ、この声はあのクソハンサムだ。声だけが聞こえてくる。今の言葉からすると、まだ体は直っていないのだろう。
「今君も心の中でクソって思わなかった?汚いよ、クソまみれだよ。ああ、僕まで汚染されてしまったじゃないか。全く、困ったもんだね。」
「アンタ、体が直ってないなら、まだ全然だめじゃない。そんな状態で、何人の会話に入ってきてるのよ、どんだけ頭悪いの。喋らないと死んじゃうあの面倒くさいタイプなワケ?ああ、それはもともとそうか、ごめんなさい。」
「……。なんだか、扱いがナリヤみたいになってないかい?まあいいさ。いやね、せっかく意識が戻ったのに、動けないなんて暇じゃないか。だから会話だけでもできるようにしたんだよ。いやまあ、大変だったわ。」
恐るべき執念である。そんなことするくらいなら体の回復に専念しろって話だ。
「お前が出ると話がややこしくなるだろう。ちょっと黙っておけ。」
「いや、問題ありまくりだぜ相棒。まさか分かってないのかい?それは漢としてどうなんだ?いや、分かっていて気づかないふりをしているんだね?分かる、分かるよ、急に女性の家に滞在することになるなんていう幸運!このチャンス、逃すわけにはいかないからね!」
お前は何をしに話に割り込んできたんだ。止めるためではなかったのか。
「まあ、ともかくだ。メルト君、これからは凡人君との距離を考えながらやっていくといいと思うよ。」
ふざけていたハンサムは、突然こちらに話を振る。急だなと思ったが、今までの会話を聞いていたのなら、大体言いたいことは分かる。
「分かってるわよ、そこのハゲにさっき説教されたんだから。私は賢いのよ。」
「まあ分かってるけれどね。焦らず見守るのもいいが、かといって放置するのも良くないかな、と僕は思うんだよ。」
……何かと思えば、ブレイブとは逆のことを言いだしやがった。干渉するな、と言われたと思ったら、今度は放置するな、と。全くややこしい話だ。まあ、ハンサムが考えてることはさすがにわかるが。
「はいはい、突き放しすぎるのも、責めすぎるのも良くないから、適度にサポートしていけ、って言いたいんでしょ?アンタもたいがいおせっかいよね。」
「うんうんその通りさ。流石メルト君。今の彼はまだ大丈夫だが、これからどうなるかはわからない。もし彼が間違いを犯しそうなら、止めてあげなくてはいけないよ。」
「まあ、あいつにできることなんて、たかが知れてるでしょうけどね。犯罪はさせないように見張っとくわよ。」
法に触れそうなことは今後やりそうだしね。勝手にどっかのサーバーに侵入したり、ウイルスばらまいたり。機械関連だけは奴の得意分野だから、普通以上のことができるし。
しかし私の回答に、ハンサムは満足していないようだった。
「まあそれでいいけどね、ただ、人ってやつは、暴走すると、信じられないようなことをしてしまうものさ。いや、大きなことじゃなくても、後々絶対後悔するようなことを平気でやってしまう。そんな時は自分では止められない。だから、止めてあげてほしいんだ。」
その声は、ハンサムが時々出す、まじめなものだった。彼がこの声を出すときは、ちゃんと考えがあるということは、もうわかっていた。
「……大丈夫よ、アタシが見過ごすことはないわ。」
「そうか、悪かったね、こんなこと言って。いやあ、僕も年寄りになってきちゃったかな?困るなあ、まだやりたいことはたくさんあるのに。ねえブレイブ?」
私がそう答えると、ハンサムは納得したようで、またふざけた感じの声に変わった。
「うるさい。けが人は黙って一生寝てろ。」
「それ地味にひどいんじゃないかい?あまりに不謹慎だ、謝ってくれ。」
「それ以上ふざけるなら直々に葬るぞ。今のお前ならたやすい。」
また喧嘩、というかじゃれ合いが始まった。こいつらいつもこんな感じなのかしら。よく一緒にいられるな、と思ったが、二人とも私にわざわざアドバイスをするところを見ると、どっちも世話焼きなのだろう。
「あんたら、結局似た者同士って感じよね。」
「俺のどこがこいつと似てるって言うんだ。冗談言うんじゃない。こんないつでもふざけてるくせにキレると自分のことなんか考えずに人助けするようなクソ野郎と一緒にするな。」
「僕のどこが彼と似てるって言うんだい。冗談はやめてくれ。こんな不愛想でクールキャラを気取ってるくせにいざとなると優しくなっちゃうむっつりなハゲと一緒にしないでくれ。」
同時に言うし。しかも言ってる内容微妙にバカにしきれてないし。まあこれだけ聞けば、本当に仲が悪いとは誰も思わないでしょうね。
そういえば前に、織上に私と凡人の言葉が被った時に、似た者同士だといわれたっけ。聞いてる側からするとこんな感じなのね。気をつけよう。
まあともあれ、これだけ色々言われたのだ。これからのことはしっかり考えなくてはなるまい。
なんか忘れてる気がするけど、大丈夫でしょう、なんて考えていた私は、この後ブレイブが普通に家にやって来るまで、そのことを忘れているのだった。




