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chapter 5 会議は踊る、だが進める side:H

『「なんでコイツが……………………………………。」』

「ここにいるんだよ!」

『ここにいるのよ!』


「見事なハモリですね、さすが製作した側とされた側。やはり性格も似るように作られているのでしょうか?非常に興味深いです。」

「誰がこんなやつと似ているっていうんですか!わがままで自分の好きなことしかしないような奴に似ているわけないでしょう!」

『誰がこんなやつと似ているっていうの!自分ひとりでは何もできない、女の敵みたいな奴に似ているわけないでしょ!』

「うるさーーーーーーい!黙りなさい!ももはね、うるさいのが大嫌いなのよ!静かにしなさい!夫婦喧嘩はよそでやれ!」

『「誰が夫婦だ、冗談でもぶっ飛ばすぞ、このちびっ子が!」』

「むきいーーーー!時子、炙りなさい!今すぐこいつらを炙りなさい!」

「みなさん、どうか落ち着いてください、話が微塵も進みません。」

『「「落ち着いてるよ!」」』

「……そうですか……………………。」


 そこはだだっ広い会議室のような場所だった。今時の会議室らしく、壁中にモニターが設置されている。ネット経由で行われる会議が急激に増加しているからだ。もはや顔を合わせることに意味を見出さなくなった世の中の象徴である。

 ここはどこかというと、まあ平たくいえば警察署である。手錠をかけられたあと、僕はすぐに連行されてしまった。そして独房に連れていかれてかつ丼を目の前に置かれて、「お前がやったんだろ!食いたいなら、言え!」みたいなこといわれると思ったらそうでもなかった。

 

 まず町の警察本部に連れてこられたわけだけど、よく知られている警察署の建物ではなく、その横に立っていたあやしい黒い建物に連行された。

「最近の犯罪は、目に見えて生身ではなく、電子世界上のものが増えていますからね。その対策として作られたのが、この建物です。そういう犯罪対策のものが中に設置してあります。」

「私が考案して建てさせたんだからね!すごいでしょ!」

 連行される車の中で(全くそれどころじゃないんだが)織上さんと、ピンク髪の桃田茂紅絹ももたももみさんが説明してくれた。


「この建物の大体の部屋には、コンピューターが置かれています。よってここにいる人員はかなり少ないのですよ。」

 静まり返った廊下を歩いていると、更に説明をしてくれた。

 

 そしてその建物の会議室に連れてこられたというわけだ。するとそこにいたのが、今や顔を見るのも嫌になった、わが元彼女なのだった。

 どうやらメルトも無理やり連れてこられたらしく、いつも以上に機嫌がわるいのだった。勘弁してくれ。


「お二人とも、無理やり連れてきてしまって申し訳ありません。しかし、あなた達に来てもらったのはそれなりの理由があるのです。」

 一通り喧嘩した後、静かになったところで織上さんが話始めた。

「あの…………とりあえず、なんで僕が逮捕されたのかを教えてもらえませんか?」

 相変わらず手には手錠がかけられたままである。こんな状態で紅茶出されても飲めねえよ!とか思ったけど桃田さんが無理やり飲めというのでのんだ。何故かって?近づかれるのが苦痛すぎるからです。お前そのでかいのしまえよ。

「手錠の理由?そんなもん、アンタたちが犯人じゃないかって疑われているからに決まってんでしょ!考えなさいよボンクラ!炙るわよ!」

『そうよ!自分では何も考えないこのダメダメ人間!』

 便乗すんなよこの野郎。お前も捕まってんじゃねえか。


「疑いって、やっぱり………………。」

「もちろん、今世間を騒がしている、様々な事件の首謀者ではないのか、という疑いですね。」

 やっぱり………………そうなるのか。大体予想はしていたけれど。

『で、どういう経緯でそんなことになったのか説明してもらおうじゃない!このクソ野郎はともかく、なんでアタシが連行されんのよ!しかも偽イケメンまでけしかけて!ひどい、乙女の純情をもてあそぶなんて、ひどすぎるわ!グスッ!』

「嘘泣きなのばればれだぞ。」

『うっさいぶっ飛ばすわよ!』


「その件に関しても、申し訳ありませんでした。メルトさんは少々強気でたくましくもかわいらしさを持つ女性だという情報がありましたので、無用な戦闘を避けるべく、強引な手を使わせてもらいました。パートナーの無礼をお許しください。」

 うわ。滅茶苦茶持ちあげてるよこの人。やぅぱり一筋縄ではいかない人のようだ。でもちょっと強引かなあ…………。

『ふ、ふん…………まあいいわ。こっちもちょっと気が立ってたしね。』

 いいのか、メルトよ。そんなのでいいのか。

『それよりもパートナーってどういうことよ?』

「あら。まだ自己紹介していなかったのですね。ちゃんとそういうのは最初にしなさいといっているでしょう。ハンサム、改めて自己紹介しなさい。」


 そう言って織上さんがモニターを見ると、中から新たな人物が現れた。こいつ………………イケメン!死ね!……失礼。

『怒らないでくれよトキコ。僕だって自己紹介したかったさ、だけどそこのお嬢さん、ここに来るでの間ロクに話を聞いてくれなくてね…………まあ聞ける状態じゃなかったってのもあるだろうけど、それ以上にものすごい殺気が…………いや、失礼。』

 どうやら隣から発せられる殺気に気づいたようだ。さすが警察所属、伊達ではないな!

『では改めて自己紹介をしよう。私は電子犯罪対策として開発された、最新型警察所属ナビ、ハンサム…………正式名称、ハンサム・ザ・ピース。今はトキコの相棒として活動させてもらっている。どうぞ皆さん、よろしく!』


 そう言って華麗にポーズを決めて見せた。なんだコイツは…………ハンサム、だと……?そんな名前、男が背負うにはあまりにも巨大すぎないか!?それを自らかっこよく名乗ってみせるとは、これが真のイケメン、なのか…………?

『へん、ハンサムとかいって鬼畜なんだから、やっぱり男は中身よね!そうよね!』

 そしてなに言ってんだこのナビは。


「それでは時間がないので、どんどんと話を進めていきましょう。」

「時子、眠たくなってきちゃったわ。」

「桃田さん、ちょっとだけ我慢してください。それではまずあなた達の容疑についてですが……。」

『大体アンタたち、ほんとに警察なの!?制服着てないし、もしかしたらニセモノなんじゃないの!?』


「…………私達は最近新設された、電子関連事件特別対策課…………まあ略して『電課』とみなは呼びますが…………そのメンバーなのです。よって今回の大規模な事件に対して、私達に白羽の矢がたったわけです。」

「そんなものができてたんですか…………知らなかったです。」

「一応秘密ですから…………では本題に入りましょう。あなた達になぜ今回の事件の容疑がかけられているか?それはいくつか理由がありますが…………。」

「時子!ホットココア!ホットココア作ってちょうだい!お願い!」

『そんな部署聞いたことがないわよ!うさんくさすぎるわよ!』


 やばいぞ、織上さん、顔は普通なのに、メガネが揺れているぞ!地面は微塵も揺れていないのに!

「…………まず一つ。今回の事件は、お気づきでしょうが、凶悪なナビによって引き起こされていることが確認されています。ということは、犯人は高性能ナビを社会に気づかれずに操ることができる、もっと言うと制作することができる人物に限られるわけです。」

 なるほど。そこで一般人でありながら高性能ナビを作りだした僕に狙いをつけたわけか。

「どこかの企業による犯行、という可能性もありますが、あまりに無差別な事件のため、やはり個人的な犯行と見るのが普通でしょう。

『まあ個人でナビを作ってる人なんて大勢いるけれどね、今回の事件は、この町でしか起きていない、という点が問題なんだよ。この町に在住している、ナビを作りだす人物……そうすると標的は自然に決まってくる、というわけなのさ。』


 ハンサムが付け加えてくる。でもこのハンサム、さらっと毒吐きやがったな。

「でも、それでよく僕の自宅じゃなくて、ネットワークに遊びに出ていたメルトを捕まえることができましたね?」

『まあ、こちらとしては、君の家なんて一瞬で割り出せていたけどね…………どうせなら泳がせて、犯行現場を押さえようと思ってたのさ。それにナビ達の間では、最近会社勤めのナビが大半を占めるナビ達の憩いの場に、エプロンつけたどこの馬の骨ともわからないナビが出入りしている、と話題になってたしね。怪しすぎるだろう?すぐにピンと来たよ。』

 

 あいつ………………あれだけ僕に文句言うくせに、自分はファッションに関しては完全に無関心なのね。

『失礼ね、これはあえて家庭的な側面を見せることで、できるオンナアピールを…………』

「そしてとうとうハンサムに捕獲を命じたところ、乱闘に出くわした、というわけです。さすがにこれは予想外でしたが。」

 どうやら他人に口を挟ませることを許さないようにしたらしい。それでいいですよ。なんかモニターから罵詈雑言聞こえてますけど、気にしないで。


『まあおかげで収穫はあったさ。敵が単独ではなく、少なくとも二人のチームだということがね。』

「ええ。聞いた話から推測すると、システムを壊し、そのシステムを直しに来たナビさえも壊すのが、破壊活動担当の白髪。そして破壊は行わないが、ハッキングによってさらに甚大な被害を与えているのが、ハッキング担当の紫髪のナビ。まあこう考えて間違いないでしょう。」

 そこら辺の話は連行される間に聞いた。


「でもハンサムさん、メルト捕まえに行ったとき、その二人がいたんでしょう?捕まえることはできなかったんですか?」

『オウ、言ってくれるねミスターハント。もちろんできることなら僕もそうしたかったさ。でも残念ながら、それはあまりにも無謀だと判断したのさ!』

「ええ。最初の電車停止事件がおきてからあまり日数は立っていないものの、私達が全く後を追うことができない、それどころか姿をみることもできなかった連中です。公の場所に現れたということは、それなりの準備をしてきた、ということでしょう。それに」

『デストロイの方は何とかメルトさんが倒してくれたけどね、残っているハッキングウーマンの方が厄介なのさ。その性能は今までの事件で折り紙付き、そんな奴にうかつに近づいてハッキングでもされれば、たまったもんじゃないのさ。』

「不甲斐ないことは理解しています、しかしこんな状況だからこそ、冷静にならなくてはなりません、」

「ああ、別に責めてるわけじゃないんですよ、気にしないでください。」

『アタシは責めてるけどね!尊い犠牲を無駄にしたんだからね。』


 一瞬メルトの声のトーンが低くなった気がしたが、気にしている暇はない。

「そして決定的な理由。それはですね………………。」

 織上さんが少し黙ってこちらを見た後、口を開いた。

「それは、分析の結果、事件を起こしているナビ達の特徴が、凡人さん、あなたの作るナビととても良く似ている、ということなんですよ。」

「特徴、ですか………………それって、まさか…………。」

 まさか、僕が美少女ナビしか作らないことを言っているのかこの人は!僕が一人で黙々と人生のパートナーにできるような美少女ナビを作っていることを踏まえていっているのか!まてよ、ということは事件を起こしているナビたちも美少女キャラということか…………俄然興味が湧いてきたぞ…………。


『そう、犯行現場に残された僅かな痕跡を調べてまとめてみると、犯人ナビの構造などが、極めて君のメルト君のものに似ていることがわかったんだ。』

 はい、そんなところですよね。わかってましたよ。

『だれがこんな奴のものですって!?訴えるわよクソハンサム!』

「ナビというものは、ある程度の構造はどれもほぼ同じといっていいでしょうが、基本の形からどのような用途で使用するかで、最終的には大きく異なってきます。更に個人制作のものであるなら、作り手の癖が出て当然です。」

「つまり、調査の結果、犯人達がメルトと類似した構造をもつ奴だった、というわけですか?」

「はい、そうなりますね。」


 ようやく僕が疑われている理由が分かった。その二つの理由から考えると、確かに僕はかなり怪しい人物に認定されてもおかしくないだろう。まあもちろん僕はそんなことはしていないので、犯人ではないのだけれど。


「ご理解いただけたでしょうか?あくまで確証はないのですが、やはりかなり事件に関係があると思われたので、連行させていただきました。」

「その点については納得しました。まあメルトを外で好き放題させすぎた僕にも責任はありますから、疑われても仕方ないですしね。でも、僕はそんなことやっていないんですよ。信じてください。」

 逮捕された理由が分かったからといって安心してはいけない。今度は自分の容疑を晴らすことに集中しなくてはいけない。しかしこの織上さん、納得させるにはかなり骨が折れそうだ…………!


「ええ、どうやらそのようですね。」

「はい、いきなり信じてもらえないかもしれませんが…………え?」

 そして「ピー」という音とともに、手についていた手錠が外れた。


「え…………いいんですか?そんなにあっさり信じちゃって?」

「ええ、構いませんよ。もうすでに結論は出ています。残念ながら……少し語弊がありますが……残念ながらあなた方は犯人ではないようです。…………ですよね、桃田さん?」

 そこでいきなり(誰にも相手にされなくなってふてくされて隅っこでタブレットをいじっていたように見えた)桃田さんに声をかけた。

 まさかあの人、おバカなキャラを装いながら、実はこちらの様子をうかがって、僕が犯人ではないかどうか探っていたのか!恐るべし…………。

 

 すると桃田さんは立ち上がり、こちらを向いて……。

「ええ、そうよ!私の手にかかれば、そんなことを見抜くのは造作もないことだわ!」

 めっちゃ笑顔だった。やっぱり相手してもらえなくてふてくされていたようにしか見えねえよ。大丈夫かこの人?こんな人の言うことすぐに信じていいんですか、織上さん?


「時子、今コイツ心の中で私のことバカにしたわ。炙りなさい!」

「了解しました。:

「ストップ!冷静に!早まるんじゃあない!」

 やっぱり織上さんも心配になってきた。「冗談ですよ。」と笑っているが、目が冗談じゃない。大丈夫か警察。


「ということであなた達の疑いは晴れました。どうぞ家に帰ってもらって構いません…………と言いたいところなのですが、そうもいかなくなりました。」

 なんだって。一体どういうことだ。まさか本当に炙られるのか!?

「あなたが犯人でないとするならば、今度はあなたの身が非常に危険な状態にあるということなのです。凡人さん。」

「危険、ですか?」


 まあ確かに後ろで怒りまくっているメルトと同時に帰宅したら、どうなるか分かったもんじゃないが。

「もう忘れちゃったの?おバカさんね、あなたは狙われてるのよ!今回の事件の犯人に!ただ一人、個人として!」

 狙われている?ということは、やはり…………。

「そう、あなたの腕時計に現れた謎の人物、ハッキングの後から考えると今回の犯人のナビでしょうが、そいつに狙われてるんですよ、あなたは。」

 

 俺が、狙われている?なぜ?誰かの怒りを買うようなことは覚えている限りではしていないはずなのに!こんな善良な市民である僕が!?

「なんで狙われてるんですか!?」

「そんなこと知るか!自分の胸に聞いてみなさい!このカニみそ!」

 どっちにしろ、前途多難、のようだった…………平和な日々は、まだ遠いようだ。

















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