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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
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 かまくらを潰し、外に出る。周りには狼の足跡。獲物として狙っていたが、格上だと気付いて逃げたか。ゴブリンとコボルトの死骸は食われていた。装備が残っていたが、品質が悪すぎて回収する気もおきない。


 体を見てみると、血だらけだ。《水魔法》でもあれば洗い流すが、生憎持っていない。一般的なスキルなので、ポイントで取得はしたく無い。


 川か湖を探すか。


 探すと言っても、真っ直ぐ進むだけ。今日中に見つかれば良し。見つからなければ飲料水のためにも《水魔法》を取得。実にシンプルだ。


 歩くこと数時間。何回かモンスターの襲撃を受けるも、強化した知力と精神のおかげで瞬殺した。最初に襲い掛かってきたウルフなんてライトボール一発で爆発四散した。加減が難しい。おかげで最初の数匹は素材すら取れない状態だった。


 下級魔法でこんな効果になるとは聞いた事が無い。そうなると今の知力と精神は人類上位何割かに仲間入りしているのだろう。後で知ったが、50越えでトップ1割、100越えでトップ1分、200越えでトップ1厘だった。


 《土魔法》でソナーもどきをやりながら進んでいると、かすかに違う反応が返ってきた。もしや水かと思い、少々道を外れて進んだ。


「これは綺麗だ」


 俺は澄んだ湖の淵に立った。周りの土地を見る限り、ここ数ヶ月縮小傾向にあるようだ。降水量にもよるが、来月あたりにはもう枯れているかもしれない。


 さっそく水で腕を洗おうと思ったら、邪魔が入った。


「私の湖を汚すな!」


 小さな羽虫が何かほざいている。俺は無視した。


「きゃあああ! 血が! 血が!」


 湖は大丈夫そうだ。毒も無い。さっそく服を脱いで、そのまま浸かる。少し肌寒いが、俺のステータスなら余裕だ。


「うきゃあああ!」


 しばらく浸かっていると、どす黒いオーラみたいなのが体から染み出てきた。少し外野が五月蝿いが、これも無視出来る。


「ちょっと、聞いているの!?」


「何か用か?」


「ここは私の湖よ!」


「所有権を主張するなら、それ相応の力を見せろ」


 俺は挑発する。魔境とも言える森林で所有権など笑止千万。俺を力尽くで排除出来ない時点で遅かれ早かれ誰かに奪われる。


「うぎぎ!」


「俺の勝ちだ」


 一方的な勝利宣言。こういうのは言った者勝ちだ。


「この、外道が!」


 羽虫は無視して、俺は湖から上がり、《空間魔法》で綺麗な服を出す。流石に血みどろで破れている服を着る気は無い。


 俺は立ち去ろうとしたら、羽虫が五月蝿く纏わりついた。


「ちょっと! このままだと消滅するでしょう!」


 先程まで綺麗だった湖は毒沼の様な様相を呈している。流石にこれは驚きだ。ちょっと血を流しただけなのだが?


「それで?」


「責任を取りなさい!」


「メリットが無い」


 相手が何を望んでいるのかも分からない。弱気になると漬け込まれる。ここは強気で押す。


「メリットねぇ……」


 羽虫が黙り込む。何故か俺を凝視している。しばらくして、羽虫が語り出す。


「なら、貴方の命を救うってのはどう?」


 何故か勝ち誇った風に言う。


「意味が分からん」


「私の湖を見なさい」


「もうあれは沼だな」


「きぃぃぃ! 貴方のせいよ!」


「ちょっと血を流しただけだ。ああなったのは他に要因があるはずだ」


「そうよ。具体的には貴方の体ね」


「……何?」


 俺の体だと? 浸かっていた時に黒いオーラが流れ出たが、あれか? しかしこの羽虫は一体何を言っているのだ?


「ふふふっ! そう私の勝利よ!」


 勝利宣言をするにはまだ早いと思う。しかし、ここまで言うからには自信があるのか。羽虫だから、不安だ。


「御託はいい」


「ぶー! ぶー!」


「詳細を話せ。俺にメリットがあれば貴様の望み程度は聞いてやる」


「ぶっちゃけ、貴方半分アンデッド。このままだと完全にアンデッドになる」


「そうか」


「ちょっと! 普通は なんだってぇ! とか驚く場面でしょうが!」


 騒ぐ羽虫を無視して考える。俺はライの死体をベースに融合転生した。もし死体がアンデッドだったとしたら? アンデッドは激しい怒りと恨みで死体から生まれる。ライは条件を満たしていた。


 白の者がミスったか。ありえる。現世への介入は限定的だ。確認時に死体でも、融合時にアンデッドになっていたら? だから半分アンデッドか。


 このままアンデッド化するのは不味い。リッチなど、思考出来る最上級アンデッドは良いが、ゾンビやスケルトンみたいな無知な最下級アンデッドでは目的を果たせない。俺はどっち側だ? 能力的には前者だが、レベル的には後者だ。


「貴様はこの状況をどうにか出来るのか?」


「当然。水の妖精たる私なら、貴方の血脈に潜り、霊脈を正して、生者の状態を維持出来るわ」


 いまいち分からないが、俺の体に寄生する、と言う事か?


「差し詰め、俺は家か?」


「宿主様ね! ちょっとは敬ってあげる。どうこんな美しい妖精と一緒にいられるなんて、貴方超絶にラッキーよ」


 幸運を上げた影響か?


「具体的な条件を詰めよう」


 勝ち誇った羽虫の笑顔を無視して、詳細を決める。


 こんな感じに落ち着いた。


 1.妖精は俺に寄生して、生命維持に尽くす

 2.俺は妖精に毎日規定のMPを渡す、最初は100MP

 3.妖精は俺の秘密を誰にも話さない

 4.俺は妖精を始末したり、売り飛ばしたりしない


「私は優しいから、これで良いわ」


「そうか」


 損しているのか検討もつかない。アンデッド化しないなら、今はこれで良いか。


「じゃあ、さっそく!」


 そう言って羽虫が俺の体の中に入っていく。どういう原理だ?


『聞こえる?』


「聞こえる」


『ちょっと見たけど、貴方の体の中って滅茶苦茶ね』


「そうか」


『アンデッドになんらかの方法で生者を合成して、外部からスキルぶち込んでいるわね。なんか珍しい。後、霊脈の一箇所に門みたいなのが鎮座しているけど、私じゃあ近づけない』


 羽虫は優秀なのか? ここまで俺の体を見通すとは。門は勇者システムの事だろう。白の者との繋がりはそう言う風に見えるのか。実に面白い。


「治せるのか?」


『まずは右腕から始める。ここだけ完全アンデッド化一歩手前だし。後、脇腹も危ないけど、数日は持ちそう』


 結構やばい状態だったのか。


「腕と脇腹は昨日大怪我を負った所だ」


『でしょうね。怪我を負った所からアンデッド化が進むから気をつけて』


「戦闘に影響は?」


『無いよ』


「そうか。なら早速暴れるとする」


『へ?』


 湖の臭いに釣られたのか、低級アンデッドに囲まれた。数は50体以上。少々骨が折れるかもしれない。


「ライトボール!」


 アンデッドが苦手な属性で先制攻撃だ。それを合図に、たどたどしく動いていたアンデッドが俺に狙いを定めた。餌として認定されたか。


 俺の経験値になって貰う!

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