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破壊神と妹勇者  作者: 朝寝東風
第一章
3/136

ライ

 俺は目を開けた。周りには壊れた馬車と俺を守って死んだ兵士の死体が散乱している。俺は襲撃され、馬車ごと崖下に転落した。そして……死んだ。今の俺はライ・フリージア子爵令息の体を持つ異世界シスコンだ。


 崖を上るのは無理そうだ。幸い、崖上には敵がいない。周りの兵士がハリネズミ状態になっているし、俺の足元にも矢が大量に落ちている。体は再構築されても、服は範囲外なため、俺の服は穴だらけだ。状況からして、崖上からありったけの矢を射って確実に殺そうとしたのだろう。ただの山賊にしてはやりすぎだ。計画された襲撃。下手人はあの豚しかいない。


 ライの記憶と怒りが俺の中で蠢く。


 ライ・フリージアはフリージア子爵の次男として育てられた。体外的には妾の子になっているが、本当はエルトール侯爵の次男。白髪赤眼のライはこの世界では忌み嫌われた存在。更に最悪の禁忌と言われる双子の弟だった。双子は片方が悪魔が化けた姿として忌み嫌われている。そして白髪赤眼は創作物における悪魔の姿そのもの。


 表に出る事無く、本来は生まれてすぐ処分される。しかし、侯爵は長男に万が一が起こった時のスペアを欲した。そこで辺境に領地を持つ寄子の子爵に養育を頼んだ。ライは成人するまで何も知らず、子爵の息子として過ごした。白髪赤眼のハンデを克服すべく、文武に励み、立派な男に育った。


 立派過ぎた。豚が服を着ている、と揶揄される侯爵嫡男のディーンに疎まれた。ライが行事で侯爵の邸宅に赴く際に理不尽な勝負を吹っかけられた。実力的には圧倒出来ても、寄親の面子を考え接待プレイを要求された。ライは上手く綱渡りをこなした。


 しかし、誰かがディーンに双子の件を吹き込んだのだろう。優秀すぎる寄子の次男が弟だと聞いて正気を保つのは不可能。侯爵を継げないかもしれない。その恐怖があの豚を暴走させた。そして、王都から領地へ帰るライを襲撃した。


 ライ、そしてフリージア子爵家にも油断があった。ライは陛下に成人の挨拶を行い、来年から通う学園の下見するために王都を訪れた。卒業後は子爵家を出て、騎士か冒険者として身を立てる方向で家中、そして派閥内で調整が済んでいた。そのため、襲撃が起こるなんて誰も考えず、最低限の護衛で移動していた。王都に到着する日は分からなくても、王都から出る日はある程度調べられる。敵はその情報を下に用意周到な計画を立てた。


 ライは侯爵家に興味は無かった。ディーンを豚と一刀両断しても、彼をどうこうする気は無かった。しかし、この襲撃が全てを変えた。死んでも死にきれない。白の者がその思いを汲み、俺の魂を異世界から呼び寄せた。


 俺は妹が大事だ。そのために白の者の取引に応じた。ライの問題は他人事だ。しかし、恨みを晴らさずこの体を使い続ける事に気が引けた。だから俺はライに誓った。ライの恨みは俺が晴らす、と。


 そして、俺とライは真に一つになった。


―――――――――――――――


名前  ライ・フリージア

種族  人族

レベル 5


HP:400

MP:100


腕力: 30

体力: 35

技量: 25

早さ: 25

知性: 25

精神: 30

幸運: 20


【スキル】

《剣術 4》


《光魔法 1》


《スキル解析 1》


【称号】

《アウローラの使徒》

《プロトブレイバー 25pt》

《シスコン》、《復讐者》、《転移者》、《転生者》


―――――――――――――――


 俺は自分のステータスを確認する。今の体はライの体をベースに転移者である俺が融合する際に強化改造した物だ。実際の仕込みは白の者がやった。転移して数回死線を潜り抜けた異世界勇者とほぼ同等スペック。しかし、この程度では全然足りない。短い残り時間で何処まで強くなれるか?


 《剣術》はライのスキルだ。スキルの横の数字はレベルで、1から10まである。3が一人前、5が一流、7が人族の限界。スキルを持っていなくても剣で戦えるし、大多数の人間はスキル無しで戦う。しかし、効率が悪い。スキルがあるからスキルの上達が早いという一種の永久機関の前に、スキル無しではスキル有りには勝てない。


 《光魔法》を持つ人族はいない。スキル無しで《光魔法》を使える人族は幼少から囲い込まれる。司祭などの好待遇だが、それはほんの一握りだろう。


 《スキル解析》は使用されたスキルを解析してその本質を理解する。ある程度理解出来れば、スキルを取得出来る。これは白の者が新しく用意した勇者システムの一部だ。


 《アウローラの使徒》は世界の敵だ。アウローラは破壊神の名前。真名ほどでは無いが、「アウローラ」は強力な言霊だ。俺が《光魔法》を使えるのもこのためだ。使徒は神域に入って神の試練を受けられる、とライの乳母が寝物語で語っていた。


 破壊神と光魔法にどんな関係があるのか? 俺の推論だが、最高神と破壊神は同一存在だ。そして十中八九白の者が破壊神かそれの高位眷属だ。人族はなんらかの理由で最高神と敵対し、破壊神として封印した。情報が不足している。秘密裏に調査しないといけない。


 《プロトブレイバー》は勇者システム所持者だ。25ポイントで色々出来ると思うが、これは後回しにしておく。


 《シスコン》は俺のためのスキルだ。世にシスコンは多くても、それを称号として持っている猛者は少ない。妹が関係する事柄なら能力にプラス補正が加わる。即ち、俺の場合は常時プラス補正の恩恵を受けられる。《復讐者》はライの復讐に関係する事柄なら能力にプラス補正が加わる。ライには悪いが、当面は出番が無いかもしれない。


 《転移者》と《転生者》は基礎能力アップ、スキル取得条件緩和、スキルレベル上昇率アップの効果がある。《転移者》はスキル取得制限無効、《転生者》は前世スキル再取得のおまけ効果がある。異世界から呼ばれる勇者は確実に《転移者》だから、《光魔法》スキルを持てる、と言うのが表向きの解釈だ。


 俺が立っている場所に矢が三本飛んできた。素早く剣で打ち落とす。そして山賊の一団が俺を取り囲むように近付いてきた。

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