王権
俺は今公国に向けて全速で走っている。モンスターなど、近付くだけで魔法で細切れだ。
この分なら2日で樹海を抜け、馬車道に出られる。それから歩けば8日で公国だ。走ればもっと早く着くが、悪目立ちする。白髪赤眼だし、最悪討伐対象と誤認されるか?
『ねぇ、どんな称号を貰ったの?』
「称号か。ちょっと確認する」
俺はステータスを見る。クエストをクリアしてからポイントはすぐに手に入ったが、レア称号は中々付かなかった。それで羽虫が毎日聞いてくる。
「これは……また面倒な。レアなのはレアだが、レア過ぎる」
『何々?』
「《王権》だ」
『何それ?』
俺は溜息を付いて、羽虫に説明する。
ライの知識によると、《王権》の称号を持つ者が国を興したら、《王権》所持者とその直系が王座に座る限り、神の加護が与えられる。国を興さない場合、なんの効果も無いし、一代で消える。
どの神がどんな加護を与えるのか。直系とは誰を指すのか。謎が多すぎる。
世界に覇を唱える強国は皆《王権》所持者が興したらしい。少なくても帝国、教国、アルドスタン王国、グレシアン二重王国の4つは未だ《王権》所持者が王位に付いている。あくまで自称なので、本当の事は不明だ。
カッタルイ公国を興した勇者は《王権》を持たなかったため、公国になったと信じられている。称号なんて関係無いと思うが、政治の世界は色々あるのだろう。
公国の南にある小国群が纏まらないのも《王権》所持者がいないため。これは教国か帝国を世界の中心と捕らえた歴史観なので、鵜呑みには出来ない。
『宿主様、王様じゃん!』
「民も土地も無いのに、戴冠出来るか!」
土地は開拓すれば良い。民は奴隷を買えば良い。しかし新しい国の存在を現在ある国が認めるか?
公国は勇者が起こしたのと地政学上の都合があった。俺からすれば後者が本当の理由だ。
公国は北にアルドスタン王国、西に帝国、北西に樹海、東に海、南に小国群がある。王国と帝国が隣接しないためにある。南の小国群が帝国と王国に迷惑をかけないための蓋でもある。
俺が《王権》を持っていると証明出来れば、グレシアン二重王国の二の舞だ。この国は最初の《王権》所持者の直系が途絶えた後、新しい《王権》所持者が現れた。それ故に旧王と新王がいる二重王国だ。
公国を含め、《王権》を欲しがる国は数多ある。勇者召喚に関わる国の半数もこれに該当する。
国内を掌握する時間があれば、名乗り出るか? 否、王になると動くのが面倒になる。それに既存の国家は《王権》の恩恵が欲しいだけだ。薬漬けにされて幽閉されるのが落ちだ。
『それならその称号貰って損だね』
「そうだな……ちょっと待てよ?」
今羽虫が良い事を言った。白の者がそんな事をするか?
微妙に抜けているが、勇者関係では誠実だ。抜けていると感じるのも神と人間の意識の差だろう。
俺に役立たずの称号を押し付けるとは思わない。となると、鍵は加護か。
別に大きな国で無くて良い。他国に認知される必要も無い。どっかで小国を作れば加護が手に入る。それが大きな意味を持つはず。
3年以内に国作りを予定に加えるか。
「俺は王になるぞ!」
『おお! じゃあ私は妖精女王だね!』
「否、それはおかしい」
『ぶー!ぶー!』
羽虫と漫才を続け、俺は遂に馬車道に出た。60日弱に及ぶ樹海横断の旅は終わりを告げた。ここからが本番だ。




