オーク
樹海を彷徨って一月ばかり。俺は樹海の中心近くに辿りついた。徒歩4日もあれば麓にたどり着く。
中心には小高い山があり、俺はそれを目印に南下していた。
小高い山が地球のエベレスト山並みだと気付いたのは数週間前だ。
「ぶひぃぃぃ!」
俺が斬り殺したオークが断末魔を上げて死ぬ。現在、オークの大集落と絶賛殺し合い中だ。油断しなければ大丈夫。俺はこの樹海の真の姿に想いを馳せる。
この樹海はクレーター型の窪地だ。中心に向かうに連れ、標高が下がる。崖上からだと中心にある山が標高千数キロにしか見えない。だが、実際は三千キロを余裕で超えている。
この誤差は地面が見えために起こる。そして、中心に近い木の高さが異常だ。標高千キロを超える大樹なんてこの世界でも稀だ。それが大量に生えているこの樹海には何か謎がある。
「ウィンドバリア!」
オークの投げ槍と投石を《風魔法》で遠ざける。少し射線を変えるだけで俺から遠ざかる。実力者なら跳ね返せるだろうが、今の俺では無理だ。矢より空気抵抗を受ける槍と石なのも幸いだ。オークは種族として余り弓矢を使わない。弓矢を使うオークの集団がいたら更に脅威度が増すので助かる。
「ロックスピア」
俺は《土魔法》で作った槍でオークの後衛を潰す。殺すより戦線離脱を優先して数をばら撒く。オークヒーラーの回復が負い付かなくなったら、流れは一気に俺のほうに傾く。後、もう少しだ。
このクレーターだが、中心に近付くにつれ、魔物が強くなる。中心にはこのオーク集団より一ランク強い敵がいるのだろう。残念だ。この程度ではとても満足にレベル上げ出来ない。樹海だと騒がれているわりに全体的に強者が乏しい。
『別働隊が後ろから来るよ!』
羽虫が知らせてくれる。とっくの前に気付いているが、ここは礼を言っておく。
別働隊は木を盾に迫って来ている。ロックスピアでは打ち抜き辛い。俺は咄嗟に《風魔法》のウィンドシェイバーで木ごとオークを分割する。一般の魔法使いなら木に魔法が当たって止まるが、俺のは貫通する。ステータスによる補正は絶大だ。
その後は作業的に残りのオークを減らした。8割程度潰したら、オークジェネラルが出て来た。恐らくこの集落最強だ。
オークが力任せに棍棒を振り下ろす。俺は余裕を持って回避し、ロックスピアを打ち込む。この程度では体に傷一つ付かない。流石ジェネラル。
「久々に敵に出会えた」
俺は喜んだ。このクラスの敵を相手にするために樹海を彷徨っている。もっといないのが至極残念だ。
相手の攻撃は大振りで俺に当たらない。俺も中途半端な攻撃はやめ、剣で攻撃する。邪魔立てするオークには片手まで魔法をぶっ放し牽制する。
棍棒が大地深く刺さったのを見て、俺は一気に勝負を決める。ロックスピアを棍棒に打ち込んで、持ち上げようとするジェネラルの動きを止める。時間にして一瞬だが、俺の剣がジェネラルの首を落とすには十分だ。
ジェネラルの死を見て、他のオークが逃げ出す。俺は倒せるだけ倒してその日の戦闘を終える。
『遂に山に行くの?』
「いや、山は最後だ。ここから山の周りを一周してモンスターを狩る」
『無茶しないでよ』
俺は適当に相槌をうつ。強くなるためなら毎日死地に飛び込む覚悟だ。こんな生ぬるい魔境ではどこまで強くなれるか。




