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至高の魔女の三番弟子、クレハ・サギリは魔法工作技術士という仕事をしている。
四番目の弟子、魔法薬師のオートリィ・シュテンハイムとバカップルである。
二度言おう。バカップルである。
寡黙なクレハと、おっとり系美女のオートリィは、二人で魔法具と魔法薬を売る店を出し、のんびり気儘に自営業しているバカップルである。すまない。三度言った。
「オートリィ!今すぐ、自白剤を使ってくれ!」
突然やって来た来訪者に、オートリィは驚きもせずに、お茶を差し出した。
「あらあらぁ。そんなに慌てて、どうしたの?」
「こいつに召使いの居場所を吐かせてくれ!」
拘束されて、引き摺られてきたフランシアを見て、
「あらぁ?その子がリヴちゃんに何かしたのー?」
と、困ったような笑みを溢す。
「召使いは国に帰ったとか、あからさまな嘘ついた。あと、私を虚仮にした」
「あらあらぁ。ルシアちゃんの分は、自分でどうにかしなさーい。それで、居場所を知ってると思って、此処に連れてきたのねー?」
「し、知らなかったら、どうするつもりかしら!わたくしはローゼン家の娘なのよ!如何に公爵家の子息でも、こんな無礼は許されないんだから!」
クロード公爵家には劣るが、ローゼン家も侯爵家として、強い権力がある。クロード家が権力に固執していない為、尚更幅を利かせているのだ。
「知らないなら、晴れて無実だ。良かったな?」
イヴァンは悪びれもなく、そう告げる。
「なん…っ!?」
フランシアは絶句した。
「自白剤飲むか、拷問で聞き出されるか、選ぶ?」
自白剤なら、知らなければそう言えば済むのに、態々苦しい方を選ぶの?と、憐れみの目を向けるルシア。
「そ、そんな怪しい薬飲めるわけないでしょう!」
「大丈夫よー?うちのは王家御用達のお薬だからー。この自白剤も軍の人達に重宝されてるのよー」
「嫌がるなんて、疚しい事がある証拠…」
「薬嫌いなのかしらー?苦くないわよー?皆大好きイチゴ味だからー」
そう言って、オートリィは滑らかに、極めて自然な動きで然り気無く、フランシアの口に薬液を流し込んだ。驚き、そのまま飲み込んでしまうフランシア。
「はぁい。フランシアちゃん?リヴちゃんは、何処に言ったのぉ?」
「知らな…ぃ、うあ…っ!て、転移魔法で、ジャイアントオークの巣に送ってやったわ!」
「は…?」
「ジャイアントオーク?」
「この辺に、巣なんてあるのー?」
「クロセント領の南にある帰らずの森にあるのよ!は、ははっ!あはははっ!!今頃、可哀想な事になってるでしょうねぇ!寧ろ、よがって楽しんでるかしら!貴族に逆らう下賤な娘には、お似合いの末路だわ!」
口が止まらないという風に、次々と卑猥な言葉を並べ始め、今まで召使いに行った虐めの数々を暴露した。
「…もういい。黙れ」
「ひっ!?」
今まで沈黙を貫いていたクレハが呟いた。彼が放つ凄まじい威圧に、フランシアは悲鳴をあげる。
「虐げられながらも、世話をしてくれた魔女の召使いを、魔物の巣に放り込み、それでも尚、罪悪感の欠片もないとは…」
「な、何よ!わたくしは悪くないわ!わたくしはローゼン家の娘なのよ!何をしても許されるの!お父様が全て揉み消してくださるのよ!召使いが一人居なくなったくらい、誰も問題にしないわ!」
「誰も問題にしない?否、我々は十二分に問題にする」
「ふん!公爵家の権力でも、わたくしを罰するには、それなりの理由が必要でしょう?召使いを転移させただけだもの。罰するに値しないわ!あはははっ!あははははっ!」
狂ったように高笑いするフランシアを、冷めた目で、軽蔑の目で、憐れみの目で各々見る三人と、目を閉じて黙する一人。
「残念だろうが、お前を罰するくらいは出来る」
次の次くらいで、召使い視点に戻します!




