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魔女の弟子は、魔女が認めている者だけでも、16人居る。
少し弟子入りして去った者は、魔女の記憶から削除された為、実際に何人居たのかは分かっていない。至高の魔女の弟子という箔が付く為、元弟子達は未だに弟子を名乗っているのだが。
弟子の中でも、一番弟子と二番弟子は破格。三番弟子から七番弟子も格別の魔法使いである。
何故なら、この七人は才能を見込んで、魔女が直々に選んだからだ。
この七人は総じて、『至高の七弟子』と呼ばれている。
それ以外は権力や財力で、無理矢理捩じ込んできた弟子が大半だ。
そんな中でフランシアは、権力で弟子になった者に該当する。
魔女に敬意を払わず、我が物顔で秘術を教えろ命令して、魔女にお仕置きを食らったり、召使いを扱き使って、七弟子にタコ殴りにされたり、好き勝手やっては痛い目をみる弟子だった。
それでも辞めずに居残っているので、根性と学びたいという意志はあるのかもしれない。
フランシアは兎に角、召使いが気に入らなかった。
召使いのくせに、魔女には我が子のように大事にされ、七弟子には可愛がられていた。ちやほやされるべきなのは自分なのに!と、フランシアは歯噛みして悔しがった。
命令すれば、何でも熟してしまうのも、気に食わなかった。
無理な事を頼むと、今度はきっぱり断ってくる。その際は、どんなに権力で脅しても、首を縦に振らない。それも気に入らなかった。
だから、魔女が亡くなり、後ろ楯が無くなった召使いなら、ローゼン家の権力を恐れて、どんな命令も聞かざるを得ないだろう。そう思ったのに…
「越権行為に屈する気はございません」
毅然とした態度で、召使いは言い放った。
頭に血が昇った。こんな生意気な召使いには、お仕置きをしてやらねば…と、死より恐ろしい目に遇わせてやろうと、召使いをある場所に転移させた。
S級魔物の銀色大狼が居ると、噂になった森。しかし、銀色大狼を捕獲しようとした冒険者達が、ジャイアントオークの巣があるのを発見して、立ち入り禁止になった。
ジャイアントオークは一体ならA級だが、数十体も居る巣をとなると、SS級に格上げされるらしく、殲滅隊が編成され、現地に向かうまで放置されているのだ。更に人里から離れていて、放っておいても犠牲者が出ない為、後回しにされて数年経っている。
一部の貴族が私欲の為に、死刑場にしているとも知らずに。
男なら生きたまま食い殺し、女なら死ぬまで犯し続けるジャイアントオークの生態を利用した死刑…いや、私刑に適した場所である。死体は残らないし、助けようとする人間は皆無。逃げ出せる人間も皆無である。
フランシアはそのジャイアントオークの巣に、召使いを転移させたのである。
「女の純潔を散らして、魔物の子を孕めば良いわ!」
フランシアは高笑いして、満足そうに玄関を入ろうとして…弾かれた。
扉は開いている。召使いが出てきた際、開けたままで立っていたからだ。
扉に触れようとして、また弾かれた。入れない。
「何なの!?」
試行錯誤している内に、他の弟子達も集まってきた。協力して中に入ろうとしたが、全て無駄だった。
どうやら、強力な結界が張ってあるらしい。いつからかは分からないが、召使いが出てこれたのだから、恐らくその後だろう。
「召使いなら通れたりして…」
弟子の一人が呟いた。確かに召使いには、弟子にない特権がある。家事を行う為、結界を素通り出来る鍵を持っていたのだ。
「取り上げておけば良かったわ…」
フランシアは一人呟いた。
そうこうしている内に、七弟子の二人がやって来た。推測が当たっていたのか、召使いを探し始める。
そして、問答の末、フランシアは七弟子の二人に拘束されていた。