4
ルシア・コートニーは、至高の魔女の二番弟子である。
長年弟子をとるのを嫌がっていた至高の魔女が、何を思ったのか、渋々ながらも弟子をとると決めた時、魔法を嗜む貴族達は挙って名乗りを挙げた。
魔女が欲する弟子の基準が若者だと知ると、自分達の子供を選んでもらおうと躍起になった。
一番弟子は、由緒ある公爵家の三男が選ばれ、王家に次ぐ公爵家の子が選ばれたと、誰もが納得して祝福した。
二番弟子は次こそ我が子に!と、推薦合戦が起こった。
選ばれたのは辺境伯の末っ子、ルシアだった。これに貴族達は猛反発した。辺境の末端貴族の子供が、至高の魔女の弟子など烏滸がましい、と。
が、『あぁん?あたしの人選に文句あるってのかい?』と言う魔女の言葉で、貴族は渋々認めざるを得なかった。
一番弟子イヴァンとは、直ぐに親しくなれた。
魔法の系統は見事に真逆で、お互いの苦手な系統を教え合い、二人で切磋琢磨した。二人は直ぐに頭角を現し、至高の魔女の弟子として相応しい成果をあげる。
魔力外向系を極めたルシアは、実は一度だけ秘術の教えを受けた事があった。
至高の魔女の秘術。それは一つの魔法に二つ以上の効果を持たせるという、言葉で言えば簡単な仕組みだ。例えば、敵を攻撃するという魔法効果と、味方を治療するという魔法効果を、一つの魔法に集約してしまうのである。
それを聞いた時、ルシアは『そんな馬鹿な…』と、我が耳を疑った。
両手で同じ魔法文を書く事が出来る者は優秀だ。
ルシアは、両手で異なる魔法文を書く事が出来るようになっていた。それだけでも、追従出来る者が居ない。
そんなルシアの魔法技術を見た魔女は、
『両手使って魔法二つを書くなんて、燃費悪いだろう?面倒だし』
と、秘術を教えてくれたのである。
結果は挫折した。あまりにも難しすぎて、形にすらならなかった。
魔女が秘術を誰にも教えないのは、そこに到達した弟子が居なかったからだと思い知った。
ただ、『お前さんが苦戦してくれて、安心したよ。うん。一応秘術なんだから、こうじゃなきゃね…』と、呟いていたのが気になったけど…
屋敷には、何処から訃報を聞き付けたのか、早くも弟子達が群がっていた。全員が遺産目当てだとは思いたくないが…明らかにそれ目的な奴が目につく。
イヴァンもそう思ったのか、うんざりした様子で弟子達に話し掛けた。
「…どうしたんだ?」
「イヴァン様!屋敷に入れないんです!」
「先生が亡くなったって聞いて…」
「屋敷に入れれば、遺産がもらえるって聞いた!」
屋敷の回りには堅牢な結界が覆い尽くし、誰の侵入も拒んでいるようだ。
「…召使いは、何処?」
あの子は留守番する事も多かったので、結界を解く鍵を持っていたはず。ルシアの問いに、ビクリと肩を震わせたフランシア。
「あ、あの子なら…く、国に帰るって言ってたわ!」
国に帰る?召使いが?
「…ダウト」
「フランシア。じっくり話そうか?」
天涯孤独の召使いに、故郷は無いのよ?
「召使いは、何処?」
「知らないわ!先生の二番弟子だからって、辺境伯の娘如きが馴れ馴れしい!頭が高いわ!」
イラッ…
「姉弟子に向かって良い度胸。お前の実家潰してやる。物理的に」
「ひっ!?そ、そんな事したら、この国に居られなくなるわよ!」
「もしそうなったら、俺が社会的に潰してやる。筆頭魔法士を他国に流出させるなんて不祥事だよなぁ?」
「ひぃっ!?」
ガクブルするフランシア。
「さぁ、真実を語ろうか?フランシア」
ニコニコと笑顔(目は笑ってない)で、イヴァンは問い掛ける。ルシアはこれ見よがしに杖を構えている。
何とも至高の魔女の弟子らしい行動である。魔女が得意だった O・HA・NA・SHI のやり方まで修得してしまっていた。
弟子の話が続きます…。




