2
割と早めに続き書けた気がする。
けど、書き方がいまいち把握出来ない…
うん、頑張ります!(空元気)
魔女が亡くなった直後、ブウン…と低い羽音のような音が聞こえた。確か、結界の魔道具が発動する際の起動音だったか。
(いえ、今はそんなことより、魔女様の訃報をお知らせしなければ…)
召使いはふらふらと立ち上がり、遠くの相手に通信出来る魔道具で、一番弟子のイヴァンに連絡を取った。
『はい。此方、イヴァンです。久し振りですね、先生』
緊張した、けれど嬉しそうなイヴァンの声に、召使いはグッと胸が締め上げられる。
「…いえ。私です…」
『…ああ!リヴか。吃驚したよ。先生のお加減はどうだい?』
「っ!」
(ああ…泣いては駄目です。ちゃんと…ちゃんと伝えなければ…)
「魔女様は…先程お亡くなりになりました…」
『………え?』
「イヴァン様は国王陛下に御連絡を。葬儀の手続きもお願いします…」
『ま、待ってくれ!亡くなった?先生が!?』
「私は…遺品の整理を………します…」
一瞬気が遠くなり、ふらついて座り込む。鏡に映った自分の顔は、まるで幽鬼のように血の気がなく、蒼白で弱々しかった。
『リヴ!大丈夫か!?』
「私は…大丈夫です……大丈夫……ですからっ…」
堰を切ったように溢れた涙。けれど、召使いたとしての矜持が、それを悟らせまいとする。
『直ぐにそちらに向かうから!』
「…分かりました」
(お客様が来る…。そうだ。出迎えの用意をしなければ…魔女様も綺麗に化粧をしてさしあげましょう…)
仕事を優先させる事で感情を誤魔化し、一度部屋から出て、湯を沸かす為に台所に向かう。暫くして、ガンガンと扉を叩く音が聞こえてきた。
(イヴァン様?少し早過ぎる気もしますが…)
玄関の扉を開けると、
「召使い!先生を呼んできなさい!」
其処に居たのは、弟子のフランシアだった。貴族の子女で、魔法の才能はあるのに努力を嫌い、『基礎習練は飽きた。それより秘術を教えてくれ』と強請る弟子の一人だ。
「魔女様は、お亡くなりになりました」
「はぁ?亡くなった?…まだ秘術習ってないのに!」
死を嘆くよりも、冥福を祈るよりも先に、言う言葉がそれなのか…と、召使いは目眩を覚えた。
「ふん…まぁ、良いわ!先生がくたばったのなら、その遺産はわたくし達弟子の物。さぁ、召使い!先ずは書庫に案内なさい!」
「お断りします」
何故、恩師が亡くなったというのに、そんな事を言えるのだろう。理解が出来ない。否、理解したくもない。
「なっ…召使いの分際で断るなんて!わたくしはローゼン家の娘なのよ!?たかが魔女の召使いの首なんて、撥ねるのは簡単なんだから!黙って従いなさい!」
「越権行為に屈する気はございません」
それ以前に、主人を侮辱する者に傅くなど、召使いには有り得ない。
「随分強気じゃない。飼い主が死んだ召使いなんか、誰も庇ってくれやしないわよ!」
フランシアがニタリと歪んだ笑みを浮かべ、空中に魔力をインク代わりにして、魔法文字を綴り出す。その文字で書き出された魔法文を、側で至高の魔女の魔法を見続けてきた召使いは理解出来た。
転移の魔法文。一応、消費されるであろう魔力量や彼女の技術力から、転移先を計算してみるが、危険な場所ではないようだ。
ならば、良いか…と、召使いは受け入れる事にした。
遺言に従うならば、屋敷にある遺産は、全て召使いに相続された事になる。つまり、所有者以外には扱えないようにしてある諸々は、弟子や他人が手に入れた所で、無用の長物でしかない。
所有者である召使いを通して、間接的にしか扱えないのだ。逆に言えば、召使いをどうにか出来れば、魔女の遺産が全て手に入ると言っていい。
フランシアの言う通り、主人を喪った今の召使いに、後ろ楯は無い。だから、傲慢で強欲な弟子に遺産を相続した事を知られる前に、何処か遠くに行きたいと思った。転移で飛ばしてくれるなら、寧ろ都合が良い。
(残念なのは、距離的に魔女様の葬儀には出られない事でしょうか…)
転移の魔法が発動し、魔法文が閃光を迸らせた。
数秒後、閃光が消えたその場所に、召使いの姿は無かった。