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夢から覚めて 下

二桁日の更新遅滞申し訳ないと前置きます。タイトルに下と銘打ってますがコッチから読んでくださると良いかもしれません。ミスじゃありませんゼ?

 ――随分と長い夢を観ていた気がする。


 何をするでもなく寝ぼけ眼をしばたかせて、しばし呆。


 回らない頭で、思い返すは有り得ない視点でばかり動いていたような、夢。


 朧気だけど、まあ、夢だしね。


 チェスと将棋から始まり、私が草薙とか行使しようと英雄さんに遭おうと犬さんが強かろうと地下が崩落しようと私の扱いがやたらぞんざいだろうと…………


 ぶっとんだ夢だなあ……


 適当な感想付けた直後、ふと違和感を覚えました。

 右肩に妙な重みと、柔らか温かい感触。


 何だろうとまだ回らない頭が素朴な疑問を訴え、見ました。

 


「――――……くー……」



 ――ひどく安らかな顔で寝息をたてる美少女。


 月城燐音が、そこに居たのですまる。



「…………は……?」


 思考と心臓の鼓動が、同時にご臨終為さったのは謂うまでもありません。


 たっぷりと、時計の秒針が三週するくらいの空白。


 次に、まだ夢は続いていたのかと、しりーずアリエナイ夢の中では切断されていた左手で、自分の頬を割合全力で抓り、激烈な痛みを脳が受信した。


 夢じゃないの?


 どういうことだろう。


 なんて疑問が霞むくらい、月城から視線が離せない。可愛いすぎる。


 意志と我と諸々の強い純黒の瞳は薄く閉じられ、眠り姫という御伽噺がダイレクトに思い浮かぶ。蕾のような唇は呼吸の度に小さく震え、可愛いらしくも神々しい、女の子の吐息を吹く。素肌に浴びたら変になる自信がある。少し無念。なんで長袖かな?!

 彼女は、何故か私の二の腕に頭を乗せているのです。僅かな重みはこれ。

 そして健康的に白いという矛盾をはらんだ、未成熟な驚く程細い腕は、私の胸の辺りと脇をそっと掴み、離してはいけないと、神聖とも天啓とも取れる訴えを示しているような……正直、たまりません。



「…………ふぅ、んーっ」



 月城は、微かな寝息を零しました。


……頭がくらっとなりました。

 ヤバいくらい可愛いです。

 普段の傲慢というか男の子っぽいというかかっこいい月城もいいけれど、この無防備で自然体な寝顔はヤバすぎるよっ……


 心臓の動悸が止まらない。

 顔は当然のように真っ赤で暑くて熱くて厚い。てか頭に血が昇りすぎて鼻血が出ても可笑しくないデス。

 それもそのはず好きな子の寝顔という、一種神聖な姿を眺め凝視していると、意味も無く絶叫したくなってきた。

 変なテンション。

 いくらでも見ます、いくらでも……いくら視てもなんかもうあぃえおーーーー?!


 ――なんでこんなに、なんでこんなに可愛いの!


 いけないこのままじゃいけない!

 気を鎮める為目を瞑り、いつもやってる稽古の呼吸法を試み……


「――ぅりゅはナっ!?」


 ――女の子特有のなんともいえないかほりを吸い込み脳髄にまで浸透させ奇声をあげてしまいました。

 逆効果か自爆か。奇声に反応してかさらに柔らかい極上の極楽を押し付けてくる月城に、意識はさらに濃くなり目を見開きます。

 再び瞼に映るは妖精か天使かの、人として大切な何かをトばしかねない脳を灼き焦がす寝顔。

 唯一自由な左手をわきわきさせる。

 すごく触りたい。無防備な月城の、柔らかそうなほっぺたに、滑らかな髪の毛……変な欲望が鎌首もたげる。


 ああ、なんか、なんかもうアアアァアぁアアァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!


 脳内で絶叫し、善からぬナにかが覚醒し掛けた、その時です。


「――何をなさるおつもりで? エミヤサマ」


 鬼の声がしました。

 少なくとも、私にはそれに類似する――羅刹とか阿修羅とか――表現しか思いつかない、凡その人間が人間を呼ぶ発声とはなにかが致命的にずれた、地獄か奈落の底から響く様な音程でした。

 先とは違うような違わないような意味合いで、思考と心臓が止まるのは自然な成り行きと断定しておきます。


「――何をなさるおつもりで? エミヤサマ」


 心底から竦みあがるニュアンスごとリピートしながら、鬼は、月城家メイド長・深裂静流(ミサキ シズル)さんは、ひんやり冷たい物を私の頬に当ててきました。


 飲み物の類でない事だけは断言できます。

 ちょっとチクッときたし。

 死角に居るらしいから何してるのかわかんないけど、表情が見えないのは幸運だと思います。

 夢に出そうだし。


「……燐音様は、どこかの頑丈なだけが取り柄のボンクラ芥屑ヘタレ小便小僧とは根底から違い、体は繊細なのです。疲れ果てているのですよ?」


 ば、罵詈雑言の部分に異様な悪意と怨みを感じるよぅ……


「どうか、自重して、何もしないでくださいませ? エミヤサマ」


 と、最大限に低くドスのきいた要請に、一も二も無く首肯する私。


 そもこんなにも可愛いらしい、蒼天より人心を晴れやかにする、天使さま顔負けな寝顔を曇らせる最低最悪な悪業を意図するつもりは、お父さんの女装姿を正視するくらいに有り得ません。


「…………ところで〜、あの〜」

「何でしょうかエミヤサマ」


 蚊のなくような声量の呟きは、バッチリ聞こえていたらしく、相変わらずの完全な棒読みメイド長さま。

 その中に友好的色合いは皆無なれど、粘着質な悪意怨恨を無理やり押し込めたような不自然さは過剰なまでに醸し出てています。


 月城、助けて……!?

 心の中のマイ・ゴッデスに割と全力で祈りを捧げるも、私の至近で寝息をたてるばかりで、なんら応答はありません。


「……何か?」

「あのなんで月城が私のベッドで寝てるんでしょうか」


 結局ただ口籠もっていた所、早く言え殺すぞ的な気配に小声早口で即答するはめになりました。

 それは多分、私がヘタレである事は関係ない反応だと思います。

 どちらかと言えば生存本能的な。

……ってあれ、深裂さん?

 なんか頬がちょっぴりサクッて音がしたんですけど?

 ひょっとして私、なんか地雷踏みましたか?


「……、」


 は、歯軋り?!

 それに殺気の密度が、ヒィっ!?

 い、いやなんかスイマセンごめんなさいごめんなさいごめんなさい殺さないで殺さないでえええええぇぇ?!!


「――ぅ……ーんぅ」


 私の恐怖が伝わったのか、月城が可愛らしく呻き、


「――うぅぅ……〜ぃっ」


 何故か小動物が親に甘えるようにより体を密着させ、摺りついてきました。


 それに私は恐怖を忘れ、お魚さんが食事する時のように口パクさせる以外に選択肢は有馬線でした。心臓は未だかつて無いレベルで早鐘打ちます何でしょうか有馬線て。あはひはふはへははほー。


「………………殺」


 ――その物騒な単語を最期に、私の意識は再び闇に堕ちました。

十六話とは打って変わってヘタレ視点。そして恐怖で失神。これぞヘタレクオリティーカッコクエスチョン。まあ相手が鬼ならばしかたないような気がしないでもないです。次はこの下の少し前です。

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