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矛盾


「――何者だ」


 ――木原八雲に手を掛け、粘着質な感触に顔をさかめた時。声をかけられた。

 同時、一束の光学兵器が宙を灼いた。当てる気は無かったらしい。

 振り向くと、ナゥスラとヴェルトゥースによく似た、けど細部が異なるコンビが其処に立っていた。


「アルマキス=イル=アウレカ? 早い到着だね」


 まあ彼女単体なら機体による短距離転移が可能な訳だから、不思議じゃないけど。


「色々と、聞きたい事は有るのだが、一つだけ早急に答えろ」


……なるほど。

 コレが人形から完全に外れた悪夢の妖精か。尋常じゃない、底冷えする愉快な目だ。


「マグナが苦しんでいるな。精神攻撃の類だろうが、やったのは貴様か」

「違うと言って信じる?」

「どちらでも関係ない」


 酷く冷淡な声。近く、彼女が機体ごと転移してきた。木原八雲をひっつかみ、離脱。直後、機体を中心に漆黒の重力場が展開。離脱が遅れていたら、ミンチになっていた所。


「……関係ないって?」

「可能性はあった……が、どうにも、駄目だな。やはり実際に体験するのでは、違う」

「うん?」


 重力場が消え、中が晒される。

 彼女は、蒼炎の中で苦悶の声をあげる少年を視ていた。

 私にはそっぽ向ける形。  

 その後ろ姿は、好意を抱く対象を心配気に見る乙女とやらに見えなくもない。


「……なに、よくも私のマグナを傷つけたなー、って感じなの?」

「あいつはな、馬鹿なんだ。愚者なんだよ」

「……シカトですか」

「だから、途方も無いバカげた事をやろうとするし、自分の身を蔑ろにするくせに、誰かの力に成りたいと願う。強いだけの阿呆の癖に」


 何か、私に語るというより自分の内心を口にしているだけに見える。

 もう、黙って聞いとこか。何か青臭い事でも聞けそうな気がするし。どうせ私の声も聞こえないだろう。


「あいつは阿呆なんだから。賢い私が助けてやらねばならない。あいつは弱いんだから、傍に居てやらねばならない。あいつが、あいつが苦しんでいるのは、駄目だ。許せない。赦さない。何か、黒いもので満たされる。視界が、認識が変わる――見境無く、壊したくなる」


……これは、うん。ナゥスラとは、違う。

 姿と起源が同じなだけの、まるで異質。


 自我とか感情とかそういう基本的な領域の問題じゃない。もっと根幹の性質が、


「――君は、どちらかと云えば私や木原八雲側に立ってるね」


 その、私の言葉が引き金に為った訳では無いだろうが、彼女は傍らに立つ巨体に、手を触れた。歪な、現在の技術では理解不能再現不能な、人体と機械の融合部員。それで、自らの(しもべ)に命令を告げる。

……"人形"自体の直接接触でしか、命令を下せない事項があるのは知っている。


「フェリオゥル、重力コントロールリミット・カット。

 この空間総て消し飛ばせ。マグナには届かん」


……やば。

 とうとう彼女は私に最初以外一瞥たりと向ける事無く、最終兵器使用コードが切られ、ヴェルトゥースの同型機は暴風のようなエネルギー余波を放出し始めた。

……こりゃ、逃げるしかないねー。

 彼女の目、マトモに拝見したかったのになー。

 若干の未練を胸に、木原八雲を持ち、物質透過を始めた。やー、遺失科学ってスゴいね。原理はよく解らんけど。





 

 

 

 

 

 


 奴が大鎌を振るった。大振りで、脚の速さと比較すれば、蚊の止まる速さだ。

 なのに、円形に広がった衝撃破のようなモノは、草薙剣と拮抗――いや、圧し負け、

てたまるかア!?


「――う、アアアアアアァアッ!!」


 踏ん張り、意識を更に研ぎ澄まし、渾身の気合を込め、草薙剣を振り上げた。

 衝撃破の軌道を逸らす。天井が粉砕される音がした。

 次いで背後から破片が落下する音。

 精神力が諸に影響する神器・霊剣だからこその芸等。だが、


 ドクンッ、心臓が妙に大きく脈打つ。次いで、脚に力が入らなく成り、クソっ。


「……ぐっ」


 倒れる。

 意識も遠くなり始め、全身から力が消えていき……草薙剣の存在感が、薄れていく。精神力の限界。肉体の疲弊。草薙剣行使による消耗……一度にきた、か。


「……あれ、限界? まあ、初めてじゃ仕方ないかなー。頑張った方だよ、うん」

「……、だ、マ……れ……」


 発声するのもやっと……か。

 俺様の醜態にか、奴は愉しげに笑った。

……こんな屑が、ナゥスラのマスターだと云うのか……


「さて、どうしたもんかね? 退散すべきだけど、ソレだけじゃ面白みがねー。折角姿を表したんだから……」


 口元に手を当て、道化のように大袈裟に唸り、


「あ、そだ」


 大鎌を持ったまま、手と手を打った。酷く場違いな、狙ってやっているに違いない子供じみた動作。


「君や鈴葉君を殺すのはつまんないからねー。ここは私と君との再会を祝いましてー♪」


 酷く腹立たしい、人を食った口調で語りながら、緩慢に大鎌を振り上げる。

 さながら、死神が命を奪う目標を定めたような、そんな動き。


「ナーゥスーラちゃーんのっ、」


 ナゥスラ。自我が芽生えたばかりの、致命傷を負った、死にたくないと言った、俺様の下に来ると言った! こいつが、名を、何をする?

 背筋が凍った。


 まずいまずいまずい。厭な予感に吐き気がして、沈みかけた意識が浮上。鈍い思考を強引に醒ます。


「生首プレゼントおー♪」


 生、首だな?! 最速で意識を切り替え、戻す。完全に切断。

 元の肉体に戻り、ーーっッ、痛みも骨折も内出血も無視! 一か八かだろうが間に合えばいい! 筋繊維が断裂しようと、今無くて何の為の腕だ。限界を越えられなくて、約束事一つ守れなくて、世界征服が出来るものか!!

 脚をよじり爪で這い折れた手足で進み、未だ血が止まらないナゥスラの元に、奴が大鎌を振り下ろすより早く!


「んんっ?! あーもう。邪魔しちゃ駄目だよー」


 ――ナゥスラの首筋にしがみつくのは成功した。

 奴は、俺様と鈴葉は殺さんと言った。ならば、一か八かだが振り下ろす首筋に俺様の急所を配置すれば良い。


「つーか無意味な頑張りだよ。命までかけたって、その傷じゃあもう」

「黙れ」


 ナゥスラにしがみついたまま、奴を見た。

 ナゥスラを貫き、鈴葉の肉体を裂き、草薙に競り勝った大鎌は、眼前に突き付けられていた。

 凄まじい圧力を感じる。魂に直接響くような、圧迫感。浸透し、精神を蹂躙するような威圧を纏う。事実、草薙に拮抗した時点で、人間など虫螻以下の塵芥のように扱える威力を秘めている筈だ。草薙剣がそうなのだから。

 詰まるところ、世界(アズラルト)に十と無い、異能力者や高位竜と同格の、神器に並ぶ武器を突き付けられている訳だ。

 満身創痍以前に脆弱な俺様の身など、一振りで庇っているつもりのナゥスラ毎肉塊にされるだろう。


 ダカラドウシタ。


「まだ、死んでない」


 か細い呼吸を感じる。


「だから、時間の問題だよ」


 威圧に屈さぬ、意識を保て……


「死んでないということは、助けられるという事だ」

「理想論。いや妄想だね。この状況、解ってるでしょ?」


 嘲笑が聞こえる。

 状況だと?

 ああ、よく解っているさ。俺様はな。


「貴様が――解ってるのか」


「何をだい?」


 不思議そうに首を傾げる屑に、俺様は口の端を吊り上げ、笑って見せた。



「理想論だ? 妄想だ? 貴様が称するそれを、誰が……言ったと思っている……っ」

「君でしょ?」

「そう……俺様、だ」


 一言一言吐く度多大な労力を要し、既に気が遠い。

 三日三晩徹夜した時以上に、激しく眠い。

 瞼は閉じかけ、体は先の行動が蝋燭最期の一燃えだったらしく、脳から信号を送ろうと、もう微動だにできない。

 

 ――だが、まだだ。  

 

 俺様の口は、意識は、意志は。

 まだ、折れちゃあない。


「……多少の、理不尽、など……、一掃できずして……野望が、語れるかよ」

「野望……ね。まあいいけど、なんで君をそこまで痛めつけた初対面の"人形"相手に、其処まで必死かな?」


 確かに。コイツが無駄に俺様の骨をへし折ったから、要らん消耗を強いられている。

 まあ、その事に関する報復は後に考えておくさ。

 しかしそれも、初対面である事も、関係ない。俺様の行動理由を覆すような要素ではない。


「ナゥスラ、は……俺様のものだ」

「……えー、と……まあそれの容姿は確かにめちゃ整ってるけど君、あっちの人だったの?」


 それと言うな何故引きつった顔か。整ってるからどうした。あっちってなんだ。


「何を、言っている……コイツは、俺様の下に……来ると言った。だから、骨の隋まで……こき使ってやるのだ、……ナゥスラ、は……だから、」


 ナゥスラは、見た限りアルカ程ではないが、つかえそうだ。

 番犬も、強力な遺失科学(オーバーテクノロジー)の結晶だし、保っているだろう情報も無視できない。

……ついでに、将棋の約束も楽しみと言えなくもない。


「だから、ナゥスラは、渡さん……貴様だろうと、死神だろうと、必要ならば……排除するまでだ」

「………んー」


 奴は、少しだけ愉快そうに唇を吊り上げ、何故か肩を震わせた。どうせ最低な理由だ。


「やっぱり、君の前でソレを解体したいなあー。君がどんな顔をするのか、すごく観たい」


 ほれみろ。


「――できん、ことは……言わんことだ。格が、知れる」

「君が身を呈して邪魔してるからね。でも君をひっぺがすのは簡単そうだけど?」


 莫迦の言いそうな理屈だ。俺様を見誤った台詞……予想通りの。


「……俺様、は。意識ある限り、抵抗するぞ」

「……だから、無理に離したら気絶する。君が気絶している時に解体しても目的は果たせない、と?」

「……莫迦でも、それ位は解るか」

「でも、このまま硬直状態でもソレはヤバいよ。しがみついてるナゥスラちゃんの体、冷たく成ってきてるでしょ?」

「……」


 確かに、ナゥスラの体温は、血液共々無くなってきている。速やかに医療行為……いや、もう人体練成でも行わねば助からない領域に入っているだろう。

 だが、今の俺様ができることは、医療処置でも延命措置でもない……時間稼ぎだけなのだ。

 分の悪い賭けですらないかもしれない、未だ見えぬ光明は……


「……マグナが、居る。奴ならば、」

「問題ぃ。なんでそのマグナ君は未だここに居なくて、殺し合ってた木原八雲がこの閉鎖階層の地べたでビックンびっくンしてると思うー?」


……互角の戦いに見えたが、マグナが本当に全力を出せば終わる筈……だが、木原八雲の、人間と竜の無理な合成を可能とした媒介が、予測通りならば……


「……"賢者の石"を破壊し、内包開封による……暴走の、誘発」


 制御に使っていただろう高位媒介がその通りだとすれば可能、というより起こりうる現象。

……しかしそれは、自ら心臓を抉り握り潰すに等しい行為だ。

 だが狂人・木原八雲なら……境地に追い込まれれば思い付き、実行してもおかしくは無い。

 マグナは……それに能力共鳴して、暴走を抑えてるって所か。即座に暴走開放していれば、俺様がこうして生きている筈が無い。あるいは、アルカの奴が暴走抑止に勤しんでいるのかも知れない。まあ、覚悟していたが、こいつらの助けは期待できない、か。


「……へえぇ、其処まで知ってるんだ」


 興を示したか。まあ、歴史上数える程しか存在しない最高位の錬金術師のみが錬成しえる賢者の石。

 その概要と中身は、旧禁書級の秘匿だからな。知恵の国守だろうと、知っていい筈がない。

 知れば消される。

 そういう知識だ。


 もっとも、"領域"の全容からは程遠い知識なのだがな。


「……君は、ドコまで知ってるのかな?」


「……さあな、ドコまで……と思う?」


 嘲笑いながら言ってやったが、……さて、生憎と最早視界が利かない。奴の表情から情報を読めない。どうしたものか。


「……正直に吐いてくれたら、君もソレも見逃したげるけど?」


 奴の声色に、かつてひとりの幼子に選択肢をもたらした時と同じ気配が宿る。だから、即答した。


「断る」

「……何故?」

「貴様が……それを守る保証が、どこに、ある。それ、に……そのテ、の、……口約束は、平然と破るタイプだろう」

「……ちェー、バレてたか」


 何処か愉しげに、悪戯が明かされた糞餓鬼(クソガキ)のような声を出す性別不詳の塵屑(ゴミクズ)の擬人化。

 何を残念がる。貴様のねじ曲がった心根の醜悪さなど、万人が見通せずとも、俺様に通用する道理が無いだろう。


「……で・も。吐かなきゃ今すぐ殺っちゃうゾ?」


 気色悪い馴れ馴れしい腹立たしい。そしてとうとう脅しか。ありがちなパターンだなおい。

……じれてきてるという事か。

 

 ――ちっ……まだか?


「……先の、問答を……忘れたか?」

「別にぃ、ちょっと残念だけど再会した時を期待して強行ってのも悪かないよね」


 冗談めかしてほざいてるが、精神的圧迫が、殺意が増していく。本気と、言外で露骨に語っている。


「……本気、か」

「うん」


…………下手なハッタリは、ナゥスラが危ないか。

 殺されずとも、俺様でカバーできてない箇所を刺されば……仕方ないか。


「……俺様が、知っているのは……異能力者や、錬金術師の極み……賢者の石の"力"……の、発生源、根幹、は……同一、という、こと」


 わざと遠回しに喋り、時間稼ぎを試みた。

 おい……もうヤバいぞ、早く来い。


「――回りくどいね、率直に言ってよ。それで?」


 ふん、まあ一回位が限度か……畜生、まだか、まだなのか?


「……ーそれ、は」

「はい残念。タイムオーバーぁ♪」


!? くそ、見誤った?!

 奴が得物を振り上げたのが判る。

 其れだけに強烈な、気が狂わんばかりに歪にねじ曲がった存在感がある!

 威圧感が動く!


「――じゃ、右足首戴きまぁす♪」


 愉しげな、本当に愉しげないたぶりなぶるだけの言葉。その結果、ナゥスラがどうなるかなどまるで考えてない、快楽主義の言霊――畜生、


「――やめ、ろ……ぉ!!」


 囁きに近い声も届かず、気配の動きは止まらない。奴の嘲笑が聞こえた気がした……思考が乱れた……畜生、畜生畜生畜生畜生畜生!!


 居るんなら、着いてるんなら!


 イヤ、いやなの! ナゥスラが、


 

 ――早く、一瞬で良い。今の精神状態ならば!



 ――たすけて、ナゥスラを、たすけてぇ!



 ――、俺様の、従僕だろうがァ!!




 

 

 

 

 




 鋭い、風切り音が聴こえた。ほぼ真上からだ。


「――ふェ?」


 続いて、衝突音。より具体的に云えば、強い貫通力を保った弾丸で私の"鎌"が弾かれた音だ。


「――燐、音ェ様ァァアァアアアアアア!!」

「……はれま」


 メイドさんが二人、エプロンドレス姿にも関わらず飛び降りてきた。

 両者共アサルトライフルを装備しているに関わらず、撃って来ないのは主に対する誤射を恐れてかな。

 しかし、ここは模造オリハルコンで閉鎖された地下。後続が入れる筈は――ああ、なんてこたないか。

 見れば二人の後方、てか飛び降りた所、上の階との境界には、"鎌"の衝撃破モドキを草薙で反らし、空いた大穴があった。そこには長銃を構え陣どるスナイパーの姿がある。


……コレを待ってたのかな?


 だけど、只の人間じゃあこの"鎌"には勝てない。

 スナイパーライフルで狙撃しようと、保持者をオートで護るという特性がある。衝撃も殺せるから、少し弾かれただけ、まだ手元に有る。

 対抗できそうなマグナもアウレカの番犬も、暫くは動けないだろうしね――ん?

 応戦する為に得物を構えようとしたら、妙な手応えが――


「――ンな?!」


 見ると、彼女が、満身創痍で疲労困憊で骨折もしてて意識もヤバい筈の、月城燐音が、"鎌"を、弱々しい手で掴んでいた。

 手で、触れていた。


「――ヤタノ、」


 数瞬の、動揺に似た空白。それが、命運を分けた。


「カガミ!」


 ――矛に盾と書いて、矛盾と云う言葉が有る。


 簡略に云うなれば、総てを貫く無敵の矛と、何ものも受け付けぬ無敵の盾、衝突すればどうなるか。というお話を起源にした言葉、矛盾は、辻褄が合わないという意味合いを持つ。

 それは詰まり矛と盾、双方共に相反する絶対性をもっていた故に、衝突の結果は――対消滅。

 無敵の矛は盾を貫く事無く折れ、無敵の盾は防ぎきれず崩れさったのだ。


 その矛盾現象が、今まさに起こった。

 武力の国守、衛宮に神話級の(クサナギノツルギ)が有るように。

 知恵の国守、月城にも、神話級の(ヤタノカガミ)が有る。


 私の"鎌"は、知られてはないものの、草薙剣と同格。それに同格のヤタノカガミをぶちまけられたわけだ。

 半ば茫然と、硝子細工のように砕け散った得物を眺めていたら――


「――死ね」


 ハスキーな、けれど狂気を孕む暗い声に気付いた時既に遅く。

 十メートルを越す高さから軽やかに着地を決めたメイドさんの片方は反動で少しよろめくも、もう一人は人間とは思えない速度で迫り来る。ぞくぞくする凄い形相。迎撃しようにも得物は無し、距離をとろうにもギアをいれてないから直ぐに逃げ切れず。


「――あは」


 余りに鋭い拳は、とっさにもう片方の手に持っていた木原八雲を突き出し防いだ。

 衝撃が凄いが、バックステップである程度流した。

 距離が開き、誤射の危険性がなくなった。アサルトライフルが斉射される。木原八雲を盾にしつつ――これ、修復大丈夫かなあ?――態勢を立て直し、足場を蹴る。


「――消えた?!」


 脚の速さには自信がある。

 特に逃げ足の速さならば、異能力者や翼竜王にだって負けない。

 目標を見失ったメイドさん達を横目に、スナイパーの射線で止まらないよう気を回しつつ、もう意識は無いだろう月城燐音を見た。

 彼女には、本当にやられたね。まさか神器を二つも行使するなんて、人間の精神力じゃ不可能な事。外れた者から見ても、充分に……

 さて、攻め手も無いし逃げますか? でもその前にー。


「――私を負かしたご褒美に、教えたげる」


 弾幕が張られるが、スピードに乗った以上、当たらない。


「私の名前は、春香ハルカ。また、会おうね。んじゃ」


 言い終えると、直ぐに物質透過を再起動。手遅れかもしれない木原八雲を手に、通り抜けて逃げる。


「……おっとぉ」


 勿論、降り立った先で地下爆破トリガーを引いておく事は忘れない。

 コレで、傷み分けって奴だね、燐音君。

 最低でも、君が守ろうとしたものは死んじゃうからねー


「……あーでもやっぱり残念」


 ――その時彼女がどんな顔するか、やっぱり見たかったなあ……

 未練がましくぼやきながら、他の連中も通った転移方陣に足を踏み入れた。

触れられもしないスピードの前には、どんなパワーも意味がない。某少年漫画より。さて、誰も待ってないかもしれない十五話更新。やたら高くて堅い塔でのお話は今回で終了、予定です。さあ、彼女の命運は如何に……しましょうか?

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