第6話 戻り
こんにちは。
一緒に食事を食べましょうよ。
病院の生活はつまらないでしょう。
ですから、食事くらい一緒に食べて、お話ししましょう。
律子っていうのね。
私も律子っていうの、もう75歳ですけど、ね。
60歳近くも離れているのね。
事故でケガしたの。若いのに…、大変ね。
私が10歳の頃って、戦争中だったのよ。
戦闘機が飛んできて大変だった。
女学校にいたのよ、私。
「コ」の字型の校舎でね。分かるかな?
上から見ると「コ」の形なのね。
そうそう、前と左右に建物があるの。
それで、国の建物って、当時、みんな同じでね、
近くにある兵器工場や軍の設備も「コ」だったのよ。
だから、爆撃されたの。
マシンガンで撃たれたこともあったわ。
でも、自然が周囲にたくさんあって、9歳までは
畑で、スイカをとって食べたんだ。
小学校の友達と、畑に入ってスイカを食べたのよ。
砂浜に生えている松の林があるでしょ。その間を抜けていくと、
畑があってスイカをつくっていた。
農家のおじさんもおばさんも、「食べておいで」とスイカを切ってくれた。
私、スイカを食べるのが下手だったわ。
律ちゃんは、タネを吐き出せる?
プッと口から出すのよ。
プ、プ、ピッと口からプき出すの。
律ちゃんはできる?
私、男の子とよく走り回っていた。
頭に浮かぶ?
分かるかしら?
あら、分かるの。
嬉しいなあ。
スイカ、好きなの?
好きなんだ。
スイカを食べたこと、覚えている?
覚えてるんだ。
男の子と走っていて、スイカの畑があって、好きなのを持っていく。
おばさんが切ってくれて、食べるよ。
緑色の帯、白い皮、赤い実を食べると
風が涼しくなったって感じがしたでしょ。
スイカっておいしいよね。
律ちゃんも食べたのね?
嬉しいわ。
思い出した?
思い出した。
そう、よかったじゃない。
頭の中で子供たちが動き出したって?
もっと話を聞かせてって?
そう。
むかし、サカナを獲りにいったことがあったわ。
私、男の子とよく遊んでいたのよ。
律ちゃん、一緒に行こう。
律ちゃん、行こう、行こう。
学校が終わると、今日は、サカナ獲りだ。
今日は、みんなで、サカナを獲るよ。
ウナギを獲ることができたのよ。
ナガグツを持って、歩き出す。
男の子たち10人ぐらい、女の子5人ぐらいいたわ。
近くの川に歩いていくの。
分かる?
頭に浮かぶの?
私のお話が浮かぶの?
ありがとう。
おばあちゃんの話を聞いてくれるのね。
いい、笑顔だわ。
あなたの、笑顔、すてきよ。
さっきまで暗かったけど、笑う顔、すてきだわ。
笑っていよう。
笑っていればいいことあるから。