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工房の手伝い

「そんな訳で次の納品予定は一回飛んでの納品になるから」


「分かった。それで改修の手伝いの方は良いのか?」


「報酬出せないから無給働きになるし、流石にそれで手伝ってもらえないよ。それに新しい仕事の依頼も入ってるんでしょ?」


 作業量的にはなんとか一人でもなんとかなりそうだ。助っ人を頼めるのならそれに越してことは無いが、荒らされた畑の収穫見込みが無くなっただけでも大分懐が寂しくなっている。ここは節約した方がいいだろう。

親方はなんだかんだと割引してくれるのだが、一流職人を安くこき使うのも正直気が引けるし今回は一人作業だ。


「あの依頼か、放蕩貴族の別邸だからな。正直悪趣味な造りになるから儂が居らんでもいいだろう。何事も経験だから若い連中に全部任せてもいいかと思ってるよ」


「親方は出来に厳しいんだからそんな事言わずに、最初から見てた方がいいよ。後から完成品見て作り直しだ!!って言いそうだし」


「最近はあいつらも大分良い物を建てるようになったからな、設計図でしっかり見とけば作り直しなんて事にはなりゃせん。だから儂が気晴らしに手伝いに行ってもいいんだぞ?」


「それこそ駄目だよ。親方を無給で働かせられないからその案は却下、値引きして貰っても払えそうにないし手が空いてるなら事務方を雇うよう努力したほうがいいよ。また書類が山になるよ?」


 どうしても手伝いたいといった感じなのを断る。机の上の少ない量の書類に対しても眉間に皺をよせてるんだからそちらの方が急務だと思う。


 親方は職人の腕は良いのだが典型的なドワーフの様に書類仕事は苦手だ。脳筋の様に考える頭が無いという事では無く、机に噛り付いて仕事をするのが苦手なのだ。体を動かしていた方が良いといった性質なのだろう。

 それなら事務方専門で雇うべきなのだが、中々親方の気性と強面に耐えれる人が居らず雇ってもすぐ辞めてしまうのでいつまでたっても現状を脱却できていない。


「最近のは軟弱なやつばかりだからダメなんじゃ!!」


「今日分は少し手伝ってくから、新しく雇えるかはともかく次からはもうちょっとマメに片付けた方がいいよ」


「助かるわい」


 書類の処理は森の家を建てた時に、依頼料の代わりとして事務手伝いをしていた。それ以降親方が困って居る時は手伝うようにしている、人を雇えと言うのも毎度の遣り取りになっていのだが。


「アルシェが森に住むのをやめて、住み込みで手伝ってくれりゃあ問題が解決するんだがな?」


「だーかーらー、いつも言ってんでしょが。あの暮らしがしたくてここに越してきたって、働くだけなら王都にでも行って働いた方が稼げるよ」


 親方の勧誘を毎度ながら拒否しつつ、空いている机で書類を処理していった。私の方は書類仕事は苦にならないので手早く片付けて、これもいつも通り親方に感心される。


「さて面倒事も片付いたからな、腹も減ったしアルシェもどうせ飯まだだろう?一緒に食っていけ」


「悪い気もするけどご相伴にあずからせてもらうかな。ああそれともし予備があればつるはしを一本借りていっていいかな?シャベルはあるんだけどさすがにつるはしまでは無くて」


「それじゃ飯を食いにいくか」


 事務所を二人で出てから工房に顔を出し、『飯に行くぞお前ら!!』と半強制的に声を掛け食事に繰り出した。

工房で作業中で10人程がまだ食事をとっていたなかったから付き従った。


親方達と一緒に近場にある食堂に向かってがやがやと喋りながら向かう。

店は近くにある行きつけで直ぐに着いた。幾つかのテーブルに分散して席に着きそれぞれ注文を始める。


「まずはエールだ!!」


 親方は昼間っから酒を頼む、常連だけあって店側も対応が早い。顔をみて最初にエールの注文があると解ってるんだろうな。


「日替わりの定食で」


「ぷはー、もう一杯だ!!」


 私が注文をする間にジョッキを空けて次を注文する。ドワーフは本当に酒好きが多いのだが昼間から飲むのはいかがなものか。

 冒険者なんかの多い食堂ではよく見る光景なのだが、こんなダンジョンからも遠い町ではあまりない光景だ。

 それでも親方の工房だからのかエールを頼む職人も何人かいるし、親方がそれを咎める事もない。親方曰くエールなんて水と変わらんとの事で仕事にも影響がないんだそうだ。

 同じドワーフであっても私には理解できない飲み方だ。酒は酒で度数の違いはあってもしっかり酔っぱらうのだが。体質の違いなのかもしれないが、親方の方が大多数なので私の方が少数派である。


暫くして私の所にも食事がくる。この食堂は職人が近隣に多い為か、大味で量が多い物がメニューに並んでいる。

大味と言っても職人の味で不味い筈もなく、腹を十全に満たして文句なく満足できる食事だ。


あーだこーだと食事も楽しみ道具もかりて親方の所を後にした。

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