森の動物
その日も樵仕事の前に畑の様子を見に行ったのだが、その様子を見て驚愕した。
「なんじゃこりゃあああああああああああ!!」
と叫んでしまったのも無理はないと思う。
丹精込めて育てて、ようやく実り始めていた畑の野菜達が見るも無残な姿になっていたのだ。荒らされた現場には犯人の痕跡がくっきりと残っており、その犯行の凶暴性が伺えた。
根菜は掘り起こされ食い荒らされた姿が放置され、植えたばかりの所も踏み荒らされている。生き残った野菜は数少ない。
もうそろそろ収穫だと喜んでいたというのに。
「ぐぬぬぬぬぬぬ!!」
唸り声を抑えることができない。この所業どうしてくれようか!!
「これはまた派手にやられたな幼女。見たところ小型の草食獣あたりか」
呻いていると背後から当然声を掛けられる。近づかれたのに気付かなかった為、驚いてしまって装備中のナイフを投げてしまった。殺気立っていたところに出くわすとは機会の悪い奴。
しかし変態は十歩も無い距離だというのに素早く避ける。
今日もシクジッタ、ザンネンンダ。ザンネンデシカタガナイ。
「苛立つのは解るが、危ないだろう。刺さったらどうするんだ」
「気配を消して近づいてくるからだ。自業自得だ、それにしてもまったく腹立たしい。人が丹精込めて育て上げた野菜達をこんな姿に!!」
「いや幼女よ、普通に考えてこんな森の中で柵もないのに荒らされない訳ないだろう?それこそ対策不足な自分のせいだな、これに懲りたら少し対策を講じたらどうだ」
正論を言われているのは解るのだ。
言ってることは間違っていないのに、こいつから聞くと納得し難い。
「だって家の直ぐ裏じゃないか!野生の動物なんて人の気配に怯えるものじゃないか?」
「夜室内で寝静まってるのに、そんな事ないだろ。室内に入ってくるとかは流石に大型獣でもないと無いことだろうが」
「そう言われるとそうなんだろうが、このあたりに大型なんているのか?見た事無いんだが」
「まだこの辺りは森の浅いところだからな、大物はとかは滅多に見ないが。干ばつなんかで森の実りが少ないと餌を探しにこのあたりまで来ない事もないな」
驚愕の事実だ。移住前に町でも聞き込みをしたが、このあたりにはそんなものは出ないとの事だった。まあよくよく考えれば、動物なんだから人間の領土の用に厳密な線引きがあるわけでもないので行動範囲に入る危険性はあるのか。
対策が必要だな。色々と・・・。
「しかし柵とかか、あまり考えたことが無かったけど何かしら作るか」
「畑もそうだが自分の身の安全の為にも、対策はしっかりとな幼女。森は普段危険が無いように思いがちだが、思い込みだ」
「獣避けか、いろいろ考えてはみるかね」
何にしても直ぐにはなんとも出来ないな。
どんな造りにするか考えて、それから材料の確保や樵仕事との兼ね合い、趣味の木彫りやらを一時止めてからか。ついでに頻繁に起こる自分の貞操危機の為に変 態を確実に仕留めれる方法を考えてみるか、考えだすと落ち込んでいた気持ちが若干楽になる。どんな形であれ何かを作るのはドワーフ身寄りに尽きる。
この際だから畑を広げれるように考えるか、ネギも追加で植えると種類あたりの面積がだいぶ狭くなりそうだし後から付け足すにしても利便性を考えなければならないだろう。
「まあ獣関連に関しては助言はできるからな、生態が知りたければ教えてやれるぞ幼女。相手をしるのも対策としては重要だからな」
「そうだなその時は助言を頼むとするよ」




