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冷蔵設備のその後

 整理用の棚を設えられた冷蔵設備。私が食料品を1部屋、ソフィアさんが薬の原料と完成品の薬で二部屋分使っている。

 部屋自体は続き部屋になっている。扉は入口が二重になっており冷気を出来るだけ逃がさないようになっているようだ。そのあたりもソフィアさんが具合をみつつ調整したみたいなので、性能としては申し分ないと太鼓判を押していた。


 ひと月程度の使用期間でその性能も実証されたので、私達の食生活にも多少の変化があった。

 通常の野菜が萎びたりする期間を大幅に引き延ばせるのが確定したので、家で作っていない野菜なども仕入れて保管する事が出来るようになった。材料の種類が増えればそれだけ料理の献立が増やせるのですよ。

 食い意地が張っているというなかれ、日常という退屈な日々の中では食事と言うのは生きる活力だ。だからこそ豊かな食事が摂れるというのは良い事なのだ。


 と...まあそれはさておき収穫した野菜を籠に入れて保管して地下から上がる。

 正直寒いぐらいなので、長居は出来るだけしたくないのである。棚を設置していた時は作業もあってさほど気にしなかったが、最近では特に冷えている気がする。

 ソフィアさん曰く、物が入った分冷却面積が減って冷却効果が向上しているとかなんとか。難しい事は解らないが当初に比べて寒くなっているんだろう。


「さて今日も頑張りますかね」


 概ね良い方向に改善された生活空間に満足して、今日も樵仕事に出かける準備を始める。


 因みにこの一か月間の間に、何度か冷蔵設備の見学者が来ていた。

ダンジョン周りで店を持っている食堂店や宿屋の店主、冒険者ギルドの職員などらしい。

 見学後にソフィアさんと何やら話し合っていたので、増築する予定なのだろう。

皆さん景気がいいなあ...。



 森で一仕事して夕方前には家に戻ってくる。

 食事の用意をして、準備が出来た所でソフィアさんを呼び出す。

 基本的にはこちらの家に来るのだが、作業に熱中してるとご飯も忘れるようだ。物凄い集中力だと言うべきか、それともモノグサだと言うべきか意見が分かれるところだ。


 なんにしても料理は二人分用意しているので、冷めると味が落ちる。温かいうちに食べないのは勿体ないので急いだ方がいいだろう。


 慣れたものでソフィアさんの工房まで一直線に行き、勝手に入って作業場まで進む。


「ソフィアさんご飯だよ!!」


 近づきすぎるとあれなので、入口から大声を出して呼びかける。

 声量が大きかった為か、一度で気づいて貰えたようだ。

 酷い時は五度呼びかけても気づかない時が有った。


「アルシェちゃんもうご飯の時間なのね、直ぐに向かうわ」


「早くしないと冷めちゃいますから、お願いしますね」


「解ったわ」


 テーブルの上で何やら作業をしていたようで、容器の音がする。

 これなら直ぐ来るだろうとそのまま家に戻った。


 料理を皿に盛ってテーブルに運ぶ。


「お待たせしたわね」


 丁度いい具合にソフィアさんがやってきた。


「食べましょうか」


「今日も美味しそうね」


「今日は『トンジル』とかいうのを再現してみましたよ」


 町の店で使われてる具材をある程度真似てになるから、味に劣化があるのだがそれでも味見した限りでは美味しかった。肉と野菜がとても良い味になっている、そしてミソが決めて担っているのは言うまでもないだろう。

 見た目が少し悪いが、この味の為なら仕方ない。泥水のようだと最初は思ったものだが、香りに負けた事を今でも嬉しく思う。


「美味しいわね、流石はアルシェちゃん」


「お店の味には到底及ばないんだけど、それでもいい出来です」


「お店にも出せる気がするけども」


 スフィアさんは褒めてくれるが、飲み比べたら段違いだろう。きっとなにか隠し味があるに違いない、料理人でもないので飲んだだけで解るわけもなく、そして店の主人が教えてくれるわけもないのだが。

 料理法は資産の一つだからなあ、まあそのあたりは諦めよう。


「まあお店は無理でも喜んでもらえるのは嬉しいですね」


「なら幼女よ『豚汁』を俺にも一杯貰おうか」


「また来たの?」


「懐かしい匂いにつられたのだ、しかも幼女の手作りとあれば食べぬわけにはいかぬ」


「その基準はどうかと思うけど、まあ多めに作ったから食べればいいよ」


 有難いといって警備員は自分で深皿によそって食べ始める。

 ミソやショーユを料理に使うようになってから、前よりさらに頻繁に警備員が食べに来るようになった。なんでも故郷の味を思い出すとかなんとか。

 じゃあ東の国が故郷なんだと?と聞いたらそことは違うと言う。こんな奇妙な調味料だが、結構たくさんの所で見らえるようだ。

 そしていつの間にやら専用の器が家に置かれている。そんなに頻繁に来るなら小屋でも近くに建てたらいいと思うのだがそれはしない方針らしい。

 相変わらず意味不明な奴である。

警備員「幼女よ、それはもしや」

アルシェ「かっこいいでしょ、力作の鷹だよ!!」

警備員「お、おう(あれはどう見てもえふえふのチョコポでは)」

アルシェ「この研ぎ澄まされた体と目つき、まさしく狩人を体現出来た」

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