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出来上がりに向けて

 設計が問題なかったので冷蔵設備を建築するのは早かった。

 工期が二十日もかかららないとは、親方恐るべし。

 まあ私も事前に穴掘りなどを進めていたので多少は工期が短縮されたらしい。

 それで完成したのだが。


「これが冷蔵設備かあ」


 階段を降りて入口の扉を開けて入ると確かに寒い。

 室内は少し薄暗いが、地下であるにもかかわらず明るい。スフィアさんが光源も設置したらしい。

 まだ作り終えたばかりなので、これから棚などを設置して保管し易いように加工する予定だ。


「こうなのるか、これは便利そうじゃの」


 一緒に着いてきた親方も中を確認したが、なかなか好評価のようだ。


「保管庫としては、ただの倉庫よりもかなりの性能らしいよ。魔石は居るらしいけど食品系は特に保存期間が大幅に増えるんだって」


「そうなのか、そうるうと需要がかなり多くなりそうだな」


「小型で部屋に置く事も可能らしいけど、やっぱり地下室にしてたほうが魔石の消費を抑えれるらしいから町中だと土地の確保が問題かな?」


「それでも商店や富裕層には喜ばれるだろうな、今の所魔石の供給も問題なさそうだ」


「昨日きてた冒険者組合の人も需要が見込めて助かるとか言ってたかな」


 この冷蔵設備にお金を出してた所も実物の出来を見に来て確認していた。出来上がる物自体は王都にもあるから知ってはいるらしいが、このあたりでは技術的にものになってるか現物確認したかったらしい。

 問題無さそうだという事でかなり嬉しそうだった。


 実際魔石関連は他所に持っていくと輸送費が嵩むのであまり儲けにならない。有名な50層を超える深層ダンジョンで取れる純度と大きさのある魔石ならそれでも売れるらしいが、基本はその土地で魔道具などに加工してから出荷したほうがいいらしい。

 そのあたりが便利な割に地方まで魔道具が浸透しない理由だろう。


「多分これが広がるのは錬金術師の応援が来てからになると思うけどね、スフィアさんも薬作りで忙しいからこっちまではまだ手が付けられないんだって」


「ダンジョン前にはいくつか作るんだから、評判が広がれば取り敢えず地下室だけでもってとこが増えそうだがな」


「今まで無くても大丈夫だったんだから、そんなに急がないんじゃ?」


「聞いたところじゃ氷が出来るほど冷やすこともできるらしいから、いろいろつかえるじゃろうよ」


「取り敢えずここは完成だから、あとは順次棚を入れてあとは自家製野菜保管してみて様子見かな」


「まあなんぞあったら、また呼べばいい」


 スフィアさんが手を入れる部分は終わったので、あとは必要な棚を設置して実証実験的に日常で使うだけだ。単純に倉庫が増えたと思って使うだけでも便利かもしれない。


 家具造りは専門ではないけど、板を合わせるだけの棚であれば作るのに問題はない。今すぐ備蓄する食料が無いので、暇を見つけけて作っていこうと思う。

 スフィアさんも納品分でしばらくは色々と材料を集める暇がないと言っていたし。


「それじゃ親方、また今度」


「おう、いつでも来いよ」


 親方はこの後ダンジョン前の増築関係で打ち合わせするらしく、そのままダンジョンへ向かっていった。

 徐々に探索済みの階層を深めていくダンジョンだが、未だ最下層には辿り着いていない為ダンジョンの規模認定が大きくなりそうだとの事。それに伴って色々と設備が増える見込みだと言っていた。

 景気がいいと思うんだけど、忙しすぎて書類仕事が溜まるって嘆いてたからまた手伝いにいくかな。


「兎にも角にも、こっちにはあまり関係ないんだけど」


 一応冷蔵設備も出来たので、一つやるべきことが減った。空いた時間はまたなにか木彫りの動物でも彫るとしよう。

 前回は動物だったので次は鳥なんかが良いかもしれない。

猛禽類なんかは結構鋭い目がかっこいいかもしれないな、うむそうしよう。


 思いったった時がやるべき時という事で、早速彫刻用の木材を用意しに行く。

削りやすさもあるのだが、木目なども結構材料によって違うので材料選びからが楽しい。

 当然彫ってる時が一番楽しいだが、職人は材料から拘る物だと思うとそこから拘っていきたいとなる。

 実際は森に生えてる木なので大きさ以外は大差ないのだが、なんとなく拘っているといい気分に浸れるのだ。


 早速と森駆け込んで木を吟味していく。

 枝ぶりからこれだと思うものを探して森を進み探していく。大き目のものを探して、余ったものは薪に回そうと決める。


 色々見て回った末にこれだと思ったものを決めいつも通りに切り倒して持って帰る。

 家に戻ってある程度切り分けて作業場にしている部屋に持ちこんで作業開始。

まずは脳裏に浮かぶ完成系に近づけるために大雑把に刃を入れていく。

 外観がそれらしくなってきたら、細かく削っていく。

 一刀入れるごとに作品に生命を吹き込んでいくようで、これがまた愛着がもてる要因なんだろうなと思う。

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