冷蔵設備の打ち合わせ
今日は予定通り親方の工房へ行くことにする。
特に準備するものもないので、手軽な恰好でいけそうだ。
短パンに、長そでのシャツと小荷物を入れる肩掛け鞄のみだ。
だらしなく伸ばしている髪は紐で一本に括って終わり、さあお出かけだ。
いつもなら川下りコースだが最近は町への納品じゃなく、ダンジョン側への直接納品となっている。その為移動はもっぱらダンジョンと町との定期的に走る馬車に頼っている。
当然料金は取られるが歩くよりは楽なのだからついつい使ってしまう。
ダンジョン周りも宿屋と道具屋と詰所以外に、簡素だが鍛冶屋や露店その他住居などが増え始めている。
現時点でも資源として有用だと証明され、更に深層が広がる事から一山当てる目的の冒険者がかなり増えたらしい。
おかげで荷馬車の定期便の本数も増えている。
工房に到着すると親方は居なかったので、戻ってくる昼過ぎまで食べ歩きをしながら時間を潰す事にした。
町の方も依然に比べて賑わっている。
景気がいいのだろう、活気があるように思える。
「串を2本」
いい匂いをさせている屋台で串焼きを買って食べる、最近は屋台の種類も増えだしたので食べ歩きも楽しい。
「あいよ、お待たせ!!」
屋台のおっちゃんに支払を済ませて噛り付く。
塩をベースに薄くショウユが塗られているようだ、肉は鶏肉だが美味い。
これを再現できると献立の幅が広がるのだが、買えるショウユよりまろやかで甘い味がするので手を加えているようだ。再現は難しいかなこれは。
色々見て回って時間を潰したあとに再度工房へ向かった。
「親方ちわーです」
「おうアルシェ、すまんかったな」
「いえ、予定にない訪問だったのでシカが無いよ」
「それで、地下室の増築だったな?どんな感じのだ」
「少し深めに3部屋程の大きさで、材料は石材で作ってほしいんだ」
こちらの要望を言うと親方は手元でなにやら書いている。
「用途は保管庫か?棚とか設備はどうするんだ」
「そのあたりは内装をアルフェさんが手を加えてからになるからこっちで適当に作るよ」
「入口は幅広の階段がいいな、上り下りを考えるなら傾斜も少し緩くした方がいいか、うむこんな感じか?」
どうやら親方は図面を書いていたようで要望を盛り込んだ内容を示してくれた。
「多分これで問題ないと思うよ、コレ借りてもいいかな?確認でアルフェさんにも見て貰うよ」
「そうだな、高さと広さ、地面からの深さも確認取っといてくれ。問題ければ石材を発注しておく」
「ありがと、見積もりはそのあとだよね。実際の工期はどんな感じなりそう?」
「設置だけになりそうだから1週間もあれば問題ないと思うが、材料次第だな。ここにも人が来るようになて資材も仕入れやすくなったが確実じゃないからな」
ものが石材だから、結構運び込むだけでも手間だしな。森で取れるといいんだけどよさそうな採掘場はないから。
「そういえば親方は知ってた冷蔵設備」
「ああ、地下室は基本低温になるからいろいろと保管するのに重宝されるからな。食堂とか金持ち連中の家には大概一つはあるな」
「そうなんだ?うちのはそれにスフィアさんが手を加えて、真冬並みに冷やすらしいよ」
「なんだそれは、錬金術師のねーちゃんだろ?」
スフィアさんがやる事は親方もあまり知らない様だ。
「なんでも魔石を利用した魔道具の一種らしいんだけど、地下室自体にもいろいろ手を加えて冷やすのを効率よくやるとかなんとか。上手くいけば氷が作れるって言ってたよ」
「それはまた凄いな、王都でそんなような話を聞いた気もするが。アルシェよ、出来上がったら見に行ってもいいか?どんな感じになるのかきになるからな」
「問題ないと思うよ、狭くなってるかもしれないけど」
スフィアさんの作業進捗によるけれど、効果があるなら食料品はかなり倉庫行になるだろう。
そうなると3部屋あっても大分狭くなりそうだ。一部屋は確実にスフィアさんの倉庫側になるだろうし。
「正直どんな感じになるのか見当もつかないんだけど、稼働すれば野菜とかも今の倍以上持つらしいし楽しみだよ」
「野菜が2倍か!?それは凄いな。魔石を使うからどうかと思うがそれが本当ならかなり注文取れそうだな」
「そうなの?」
「野菜なんかが長持ちするなら結構反響があるだろうな、まあ魔道具がいるから、一般では導入しづらいだろうけど」
「そこなんだよね、魔石って冒険者なら大小はあるけど手に入るけど。必要を確保するのはむずかしそうだし、アルフェさんは大丈夫っていってたけど」
「ダンジョンが町の近くにできたしな、魔石も手に入りやすいとなると魔道具もそのうち普及し始めるだろうな」
基本田舎でダンジョンが近場に無い場合は、魔石は遠方から取り寄せるしかないのだがなにせ販路から外れる村や町では稼働に必要な数を集めるのが難しい。そんなところだから魔道具の普及率はいまいちだ。




