ドワーフとあれこれとダンジョン
スフィアとの食事は美味しい美味しいと料理を味わって終わった。
その後、店で解れて道具屋に戻った。ランタン買ってかないとなので。
「おう戻ったかアル嬢ちゃん」
「戻ったよおっちゃん、さてどちらにするかだけど」
「おうよ」
一応カウンターの上からはどけて置いたようで、カウンターの下からランタンを二つ取り出した。
食堂からこっちに来る時に考えて一応は決めていた。手に取って見てみる事で、その決断を確定のものとした。
「こっちの見習いが作った方をくれ」
「あいよ、銅貨78枚な」
「じゃこれで」
革袋から銅貨を出して数えた物をおっちゃんへ渡す。こっちのランタンを選んだ理由は二つ、安いのと見習いが作ったからである。正規の職人が作った方が安心安全なのだが、見習いへの投資の意味もこめてこちらを選ぶことにした。売りに出る時点で、すぐ壊れるような品質ではないのでどっちでも良かったというのはあったのだが。
「それじゃまた」
おっちゃんに挨拶をして、店を出る。さて森に帰ろうかなっと。
スフィアさんもこの町に住めるといいが、雰囲気が合わないという事もあるかもしれない。何事もお試し期間が必要なのである。
その日は特に日が暮れる前に家に戻れたので、せっかく買ったランタンの出番は無かったわけなのだが非常用だ。問題は無いだろう、いやそれでもテストは必要かな。
そのうちやろうと先送りにして、軽い夕食を取り寝る事にした。
翌日、畑の手入れをしている時にに奴が湧いて出た。
「幼女、朝から畑仕事か。今度その幼女野菜を食べさせてもらうとしよう」
「断る!!なんで貴重な生野菜を変態に分けなきゃいけないんだ。食べたければ森のどっかに畑造って自分で栽培しろ」
「幼女が作ったから意味があるんだろう?自分で作ったらうまくない」
「で、なにか用か?」
ここに来るからには何かしら用がある時だ、用が無ければ自分で作ってくるから性質が悪いのだが。
「うむ、幼女に一つ頼まれて欲しい事が出来てな」
「また鏃の補充か?この間補充してからまだそう経ってないぞ」
狩りの腕が良いので矢を無駄にすることが無い筈なのだが、何か大物でも出たのだろうか。
「そっちはまだ大丈夫だ、それよりも町へ行って報告してほしい事がある」
「報告って、何があったんだ」
「うむ、森にダンジョンが出来た」
「はぁ!?なんでだよ、森にそんな気配は無いって言ってのちょっと前の話だろ」
魔物が出た時にそんな話をしていた筈だ、自信満々に加護があるから大丈夫とか言ってたはずだ。
「昨日までは間違いなくなかった。正直どうなっているのか解らないのだが、兆候もなく突然現れたとしか言いようがないな」
「なんでそんな事が」
「そこまでは解らないがな、兎に角出来ていたものはものは仕方ない。対応が必要だから、町へ知らせに言ってくれ。俺は様子を見て置く」
「なんか納得はできないんだが、場所はどこだ?現物が見れれば報告にも載せておきたい所だが」
調査に来てもらうにしても、どのあたりか知らないと何ともならないからな。
「森の外縁部だな、幼女が使ってる町からの道を少し東に行ったところか」
「見に行こうか、案内してくれ」
念のために斧を家に取りに戻り、その後警備員に案内されて現場に行くことにした。
案内された場所は、説明通り町から森に続く道の近くにあった。
森の中にあるので、道から外れて入ってこないと解らない場所だ。説明されなければ通り過ぎてもおかしくない、なんせ地面に穴が空いているだけなのだから。
「本当にこれダンジョンなのか?地下空洞でもあって、崩落しただけじゃないかこれ」
「中も確認してきた、1階層はそう広くないが更に地下に続く階段も見つけたからな」
「魔物は...居たのか?」
ダンジョンでの一番の問題はそこだ、それがあるから資源にもなるが脅威にもなる。
「一層には居なかったが、更に下の階層はあるからな。直近の危険は無いだろうが放置は出来ない」
「面倒な...。解った知らせてくるよ、人が来るまでここを見て置けるか?」
「そのつもりだから朝早く幼女を訪ねたんだ」
「出来るだけ急ぐとしよう」
「頼んだぞ幼女」
「これ預かっておいてくれ、乱暴に扱うなよ。それとナイフ借りれるか?」
走るには荷物になる斧を近くの木に立て掛けて置く。持って歩くならいざ知らず、流石に全力疾走するには邪魔になる。警備員からナイフを借り受け急いだ道へ向かう。
筏が伐採場に用意してあれば川から行く方が早かったかもしれないが、今から準備するなら走ったほうが早いだろう。何事もないといいのだが。
道に出て、そのままいつもとは逆の方向になる町へむかって走り出した。
短い手足が、ちょっと怨めしい。成長とはなんだったのか。
警備員「幼女の手作り料理が食べたかったのだが、致し方ない。まったく困ったものだ」
アルシェ「急げや急げ!!」




