追加情報
面倒事だと思っていたがなかなか面白い話が聞けたので良しとしよう。
「それにしてもお兄さんは、情報に詳しいですね?」
「ん?ああ、俺はここに来たのが結構最近でね。その前までは王都で勤務してたから、その時に聞きかじっただけだよ。ここ数年は、この国が建国してから今までに無いほど優秀な人材が多く輩出されててね。祝福の世代だとかなんとかそれはもう凄い騒ぎになってたから」
「優秀な人材ですか?」
「そうそう、百年に一人の天才と言われるような才能をもった子が何人も名を上げててそれはもうお祭り騒ぎのような感じだったね。こっちに来た時は逆に静かすぎて驚いたもんだよ」
「百年に一人の天才ですか、例えばどんな人なんです?」
歴史に名を残す偉大な先達というのは結構いるものなのだが、歴史が古い国ほどその偉人と比べられて天才ともてはやされる事が少ない。偉人には偉業がつきものだが、研究分野なんて特に調べつくされると認められる新しい事が無くてこまるらしい。
「そうだな、15歳にして”剣聖”の称号持ちやすべての属性を扱える”全魔”魔術師。失伝していた古代のポーションを復元した薬師やら、さっきの話に出てた”ダンジョン攻略者”の称号を得た冒険者。各分野で一人ないし二人ぐらい成人前からマスタークラスの実力を持った子供が出て話題に上がったね」
「なんとも凄いですね」
「まあ、その分いろいろ厄介事も起きやすかったようなんだけどね。でもその世代が国政を担う年代になったら、また戦争が起こるんじゃないかって与太話が出るぐらい影響はありそうって話だな」
「そんな凄い時期に、この町に左遷されるお兄さんはいったい何をやらかしてきたんです?」
天才君達の事よりもそちらの方が気になる。この辺りでは大きい町だと言っても、国からみると田舎である。王都で勤務していたのにも関わらずここに来るという事は余程やらかしたとしか思えない。
「あ~、いや俺は別に。おっと、帰ってきたみたいだな!!」
やましいところが有ったようで、誤魔化すように戻ってきた二人の元へ小走りで寄って行った。
フードの人は歩いて、絡んでいた方は一人がまた気絶でもしているのか担ぎ上げられて連れられている。
「お嬢ちゃん、彼らで間違いないかい?」
「はい、人数も含めて間違いないです」
「そうか、じゃあ後はこっちで確認しておくから帰っても大丈夫だよ」
「そうですか、じゃあ宜しくお願いしますね」
後の事は任せておけと言われたので素直に従う事にした。色々と時間を使っていたので、急がないと日が暮れるまでに森に帰りつけない。少し急ぐとしよう。
「それでは」
急げ急げとばかりに戻った衛兵の人にも軽く挨拶をして、入れ違いで詰所を出て森を目指して歩き出す。
擦れ違い様にフードの人と目が合った気がしたが、まあ特にこちらは悪い事もしてないので気にしない様にしよう。
その日家に辿り着いたのは日が暮れてからになった。森に入る頃にもう薄暗かった為、家に着くのが余計に時間が掛かってしまったのだ。
いつもはこんな時間に戻ることはないのだが、光源を何か用意した方がいいだろうか?でも嵩張ると邪魔だし。こんな時は魔術師なんかが便利なんじゃないかと思うが、あれはあれで色々と制約が多いらしいしなんでも出来るわけではないといってたか。
「とにかく片付けて今日はもう寝るか」
荷物を仕分けして、手早く片付けた。食料品やら、警備員用の鏃やらと振り分ける。
保管場所は基本決めいるので、片付けも手間取ることなく終わった。鏃は机の上に袋ごとおいて置いて、バスターソードは壁際に立て掛けておく。また明日にでも、保管場所を考えよう。
それにしても、今日はモツ煮込みが美味かった。また今度違うメニューを試そう、きっと外れは引かないだろう。
次回の納品も楽しみだなと思いながら、明かりを消してベットに潜り込む。疲れもあって程なくして眠りに着いた。
翌日はいつもより早く寝ていた為か、かなり早く目が覚めた。目覚めも悪くなかったので、そのまま朝食の準備をしに起きだす。古い材料を出来るだけ使い切る形で、炒め物にしようと大雑把に材料を放り込んで調理する。
出来栄えは食べれない事もないといった味だが、残り物で作ったにしてはまともなほうだろう。明日からはまた献立も計画立てて食材を使っていこう。
食事が終わった所で、畑の手入れをして一息つく。
「ちょっとだけ試すかな」
そういえばと部屋の隅に立て掛けておいたバスターソードを手にする。道具屋のおっちゃん曰く、私が使う条件ではかなりの能力を発揮するとか。
試し切りとして、薪用にとってきていた丸太を切ってみる事にした。鞘から抜いてみるが全身真っ黒である。汚れが見えにくいから、手入れが面倒だろうなと思った。
手に持ってみるずっしりとした重量感があるが、いつも使っている斧の方が若干重い。重心はバランスがいい筈だが、体型的に長いので安定が私にとっては悪い。
やはり斧が一番しっくりくるのだろう。
さて、試し切りか。




