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買い出し

 道具屋の商品をだらだらーと見ているのだが、こういった雑貨類を見ているだけでもそこそこ楽しめる。

実用性のある道具も良いし、実用性の無い物でもデザインとか心の琴線に触れる物がある。


 ナイフ一つ取っても職人毎の拘りがあり個性が見られる。

 用途によって様々な工夫もありドワーフの王国にある専用の武器店などは一日中見ているだけで過ごせる。

 まあ平凡なドワーフなのでナイフよりも斧の方が好きですが。


 そうこうしているうちにおっちゃんが鏃を持ってきてくれた。


「待たせたな、確認してくれ」


「はいはい」


 袋に入っている分をテーブルに広げ並べていく。

 数を数えてみるが問題ないようだ。

 幾つか摘まんで品質を確認するがそちらも問題ないようだ。


「大丈夫だね、合わせて幾らになるかな?」


「ロングソードの方はおまけしとくよ。そうだな、合わせて銀貨56枚と銅貨13枚だな」


「確かに安い、はいこれ」


 巾着から硬貨を数えて渡す。

 お金を受け取ったおっちゃんも確認して商品を引き渡してくれた。受け取った鏃は袋に詰めて鞄へ入れておく。ロングソードは鞄には入らないので紐を付けて担げるようにして持って帰るとする。


「ありがとおっちゃん、また宜しく」


「おう、また来てくれよ」


 挨拶を交わしてから店を出ようとすると入れ違いで人が入ってきた。

 取手に手を掛けていたので道を譲るように身を少し引いて避ける。


「ありがとう」


 フードを目深に被っていて姿は見えないが若い女性の声で礼を言われた。


 訳ありだろうか?フードを被って顔を隠すなんて一般人ではあり得ない。旅人という線もあるか。

 関係ないからいいのか。後は食糧買い出しして帰りますかな。


 店を出て食品関係を扱う市場に向かって歩き出す。

基本的に食料の買い出しはこの市場を使う、買い付けの量が多ければ大店に行くのが普通だが各家庭程度の小取引だと市場の方になる。


 一週間分の食料だが基本一人で食べる量なのでそこまで多くは無い、自給自足まではやはり難しいので買い付けは必須だ。基本は干し肉とパンと少なくなる香辛料だろうか。香辛料に関してはまとめ買いするのだが減るのが早いものもあるので機会を見て買い足しておく。


 生鮮食品などは特に買い貯めが難しいが貴族とか金持ちであれば腐る事を抑える魔道具を持っているらしい。羨ましいのだが無い物は無いので、あるものでより美味しく頂かねばならない。

 市場も当然朝の方が品揃えが豊富で品質の良い物が並ぶのだが、暮らしの関係上そういった食材は買うのが難しいのでその手の美味さは飯屋で食べる事にしている。


 今も大通りを歩く関係でいい匂いがして食欲をそそられているのだが、買い出しが先だ。流石に夕方近くになってしまうと店を畳む所も出てくる。早いところだと昼前には終わる所もあるのだから、時間の調整はだいじである。


 買い足す予定の肉類や何かをもう一度思い起こしていると市場についた。

 昼を過ぎるぐらいの時間だとだいぶ人混みも引いて歩きやすい、その分店先に並ぶ商品も数が少なく品質の悪い物が残り始めるのだが。

 まずは干し肉を買いに肉屋を目指す。何種類か店はあるのだが保存に適した干し肉専門店へ行く。


 干し肉を扱う店でもそれぞれ加工の仕方やら香辛料やらで違うのだが、その中で気に入っている店に行き品物を確認する。

 干し肉に関しては保存食だけあって品切れがほとんど無いのだが時期が悪いと無い事もある。


 並ぶ肉の中から好みの部位や大きさを確認して注文して受け取る。

 今日は良い肉が手に入った、炒め物がいいだろうか。


 肉屋を後にして次はパン屋に行く。

 ここではさほど迷わず買う、大きさ以外は出来栄えがあまり変わらないので迷う必要が無い。


 最後に野菜関連を探して買い揃えて市場を後にした。

 出来れば食べる分の野菜は自分で育てたい所だが、まだまだ畑仕事に慣れてないのでいいものが出来ない。将来的には美味しい取れたて野菜で料理を作りたいものだ。


 買い出し品を背負い鞄に詰めると膨れ上がっていた。だからと言って重すぎるという事は無いのだが、やはりバランス的に少し悪い。後は帰るだけだが久々に家では食べれない飲食店ならではの味を求めて店に寄っていく事にした。


「煮込みか炒め物か揚げ物か悩むな」


 幾つかの食事先候補を思い浮かべてどれにしようか悩む。

 それぞれ食べ歩いた中では甲乙つけがたい自分好みの味を味わえる店だ。


「気分は煮込み料理だな」


 帰るのは遅くなりそうだが偶にはご馳走を食べなければ、最近は勇者の件で精神的被害にもあった事だし気分転換は必要だろう。自分にご褒美を上げなければならないと思う次第です。


 なんだかんだと自身に言い訳をしながら美食を求めて荷物を担ぎ歩を進めた。

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