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ドワーフの事情

「実は私も神託を受けまして、世界の危機を救う為にこの森にいるのです」


「そうなのか!!やっぱりクエストの一環だったんだな」


ダイゴは嬉しそうに首を何度も縦に振っている。


「神託ではこの森で世界を救う為の武器を作るように命じられています。その為の祝福を授かっているのですが、この森から出るとその力が失われるのです」


「なるほど、新たな武器か。勇者には専用装備が必要だもんな!!」


 当然そんな話はでっち上げだし、そもそも道具作りの腕がそんなに私は良くないのだが勇者は信じてる。なぜか道具が武器に変換解釈されてるがそれはそれでいいか。


「その武器を作り終えるまでこの森から私は出る事ができません」


「その呪いを解くと感謝して仲間になる流れか、ありがちだな」


 今度は祝福が呪いになった。何故だ、言葉が通じていないのか?謎だ。

 まあ、いいか。


「その材料を取ってきて頂きたい」


「待ってくださいダイゴ様、女神様から神託にてそのような物があるなど私は伺っておりませんが」


 流石に適当な造り話だけあって、シスターマーゴが話に割り込んできた。

というか勇者は疑問に思わない当たり、そうとう頭が弱そうだ。


「クエスト完遂のフラグアイテムなんだろ?アルシェを仲間にするのがクエスト自体の目的になってるんだろうから、きっと説明を省かれてるんだよ」


 意味不明な事を言っているが、本当にこの勇者とやらは大丈夫なのだろうか?他人事だからまあいいのだが、行く先々で迷惑を振り撒いていそうだ。


「信じて貰えないのならそれはそれでかまいません。とにかく私は森を出れないので仲間には慣れないです」


「いやわかったぜ、それでその材料は何所で揃えればいいんだ」


 勇者は乗り気のようで話の続きを促している。それらしい材料か、入手不可能なものがいいが存在しないものは流石にアレなきもする。何がいいかな。


「そうですね。まず西にある竜の谷に住むと言われる真龍の爪と鱗、それと北の永久凍土に生える氷樹の枝、南の大森林に住む大蜘蛛の糸、東の果てにある島国にそびえ立つ霊峰の溶岩口の火、月の力を溜め込んだ鉄鉱石です」


「五か所か、なかなか手間だな」


 どれもドワーフの伝承に出てくるような代物であるが、勇者はまったく動じた様子が無い。ドワーフ族でもあるかどうかも定かでないとされるものだが、これは本当に凄い奴なのだろうか?まあ、それぞれの場所に行くのにかなりの時間がかかるから帰ってこれるのは何年先になるか、無理なら諦めるだろう。


「世界の為に必要な物なのです」


「良しわかった。アルシェを仲間にする為に必ず手に入れてみせる、任せておけ!!」


 二つ返事なのかあ、なんという自信なのだろうか?真龍とか伝説級の生物なんだがどこからその自信がくるのか。いや、女神に選ばれたからか。

 理解できないが、若さ故か。いやいやそんな言い回しだと私が若くない用ではないか、そんなことはないまだまだ若い。


「ダイゴ様!!」


「いいから行くぞ。善は急げだ」


 ダイゴはシスターの抗議を黙殺して、仲間を急かして家を出ていった。

 上手くは無いが取り敢えず追っ払えたから良しとしよう。

 しかし後ろの弓を背負ったお姉さんは一言も喋って無かったが、大丈夫だろうか。こちらを注意深く観察しているパーティーの頭脳担当者だとかだったら、私のでっち上げはばれているのだろうが。とりあえず追い帰せたから良しとしようか、しかしこんな森には警備員ぐらいしか人が居ないと思ってたが門に閂ぐらいしておかないと困るかな。

 むしろ不審者を追い帰す為の番犬がいるのではないだろうか、難しいところだ。


 世界の危機かなんか知らんが、女神も厄介なご指名を入れてくれたものだ。いやまて、そもそも女神の話自体が眉唾臭いのだった。

 いかんいかん、あの自称勇者があまりにも自信満々だったからついついそれについて間違いないといった方向に思考が向いていた。

 ここは一度町で、別の神を祀る処で念押しの確認をしておいたほうがいいだろう。そこできっちりと否定材料を手に入れておこう。


 まあ事実であっても、あんな勇者に付き従って旅とか嫌な予感しかしないから仲間入りは拒否なんだが。

 ここは旅の途中で力尽きるのを、祈っておいた方が良いだろうか。しかし私の信奉する鍛冶の神は、そんな事祈っても困ってしまうか。無駄になるけど祈らずには居られないけどなあ。


 この件に関しては、しばらく放置でいい不審人物というだけでも色々な処に相談を持ち掛けて対策を考えておいた方がいいだろう。あとあとあの連中に絡まれても大丈夫なように根回しは大事だ。

 

「はぁ。それにしてもどっと疲れたな、今日はも寝るか・・・」


 精神的に疲労困憊なので、もう就寝した方がいいと判断した。

 面倒事は本当に御免こうむるな、まったく。

勇者「行くぞ、アルシェを手に入れる為に」

シスター「勇者様アルシェじゃなく武器の為の材料ですわ」

弓師「・・・・・・」

勇者「いいから行くぞ!!」


アルシェ「それっぽくしようと話し方を変えたけど、疲れる」

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