表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

町の帰り道

 その日は親方の処へ材木の納品をしに出かけていき、特に問題もなく昼前には終ったのでその後ぶらぶらと町中を歩いて回っていた。

 最初に備蓄の買い足しを終えて、その後は冷やかしで露店を覗いているだけなのだが、商魂逞しい商人が言葉巧みに商品を勧めて来る。


「いやあ、これは本当に凄い物ですよ。王都の近くにあるダンジョンから発掘された一品でとても貴重なものなのです。どこが貴重かといいますと、なんと祝福が込められているのですよ!!」


「はあ」


 とても貴重なものなのですと大げさに勧められるが、当然偽物でデザインも琴線に触れないので適当に相槌は打つが結局買わずにその場を離れる。

 方法は違うが露天商は基本胡散臭いほど自分の処の商品を押してくる。詐欺のようなものだが商人に言わせると商品をよく見せるように宣伝しているだけなのだそうだ。


 特に買わなかったが、いつかは自作の木工細工を露店販売してみたいものだ。

細工師としては駆け出しレベルだが、アレはアレで味が有る出来上がりのはずだ。見る目がある人にはアレの良さがわかるに違いない。

 家に飾られている自分の作品を思い浮かべて自己評価する。


 そんなことを思いながら露店を一通り見終わり、気分転換を終える。帰り支度をする為、買い出し品に不足が無いかもう一度確認する。畑の苗や種なども買ったし食料の買い足しや調味料も補充分も手に入れている。


忘れ物が無い事を確認できたので帰宅の途につく。


帰りはいつも通り森側に出る門からの出発になる。


「これから森に帰りますので町から出ます」


「おう、気を付けて帰れよ」


「お疲れ様です」


 何度も通るうちに顔なじみになった門兵に挨拶をしてから、町の門を抜けて森へ向かって歩き出す。

 ここの門番も当初はこちらの容姿を見て、子供だと勘違いして森は危険だとか親御さんは一緒じゃないのか?一人で行かせるわけにいかないなどなど親身になって引き留めてくれたのだ。最終的に親方に身分を証明して貰ってようやく信じてもらえたのはいい思い出だ。

 こんな見た目なので心配されるのは仕方がない、そう仕方が無い事なんだろうが不条理でもあるとも思う。背丈だけで言ったらドワーフからみても低いんだが、それでも滲み出る大人の魅力というものが・・・有るはずなのだから。


 帰り道は買い込んだ食材から夕食の献立を考えながら戻った。

 町で買い込むのは基本調味料や干し肉の類いと野菜類の干物だ。

 日持ちを考えてなので鮮度の良いものは町で買い食いになってしまう。


 町から森までは一応の道があり、私が通ることで通りやすくなっている事もあるので迷うことはない。おまけにこの辺りは襲われる要素が格段に少ないので多少気が緩んでいても大丈夫だ。道になっている場所の周りはわりとひらけているので視界もいい。


 のどかな風景というのが説明としては合うような場所だ。なのでついつい鼻歌を歌いながらの家路になった。



 森の外苑が見えてきた、家まではあと少しだがまだまだ日が沈むには時間がある。帰ったら早速追加の苗木と種を植えるとしよう。

 畑の方が復旧すれば新鮮な野菜が食べれる。今の暮らしでは贅沢と言えるだろう。最近は警備員がお裾分けしてくれる分もあって、食生活は確実に向上はしていると思う。あの言動からはとても結びつかないが、森で自給自足しているだけあって本当に森の生活に長けている。


 暇な時に自生している食べれる野草や狩りの仕方を教わったことがあるが、博識過ぎる。顔もまあ悪く無いので無精髭をしっかり剃って身嗜みを整え、あの物言いさえ直せば町でも言い寄って来る女の人は多そうな程だ。

 一度そう言ってみたが、そういうのはもういいんだとか枯れたことを言っていたな。過去になにかあるらしいが、あれの事なので聞くだけ無駄だ。

 その割には幼女幼女と言っているからそういう趣味なだけじゃ無いかと思う時がある、紳士だなんだと言って最終的に手を出す素振りは無いので今のところ変態扱いで留めているのだが。


 万が一にでも襲ってくるなら、こちらも死力を尽くして四肢を捥ぎ取り獣の餌にするのだがなかなか手ごわい。もしかするとかなわないかもしれないが、最悪町に逃げよう。

 そんな奇妙な隣人関係もまだ崩れずに来ている。面倒がなくて助かるけどね。なんにしても肉の差し入れをしている内は貢物だけは歓迎しよう。

 そんな事は本人には絶対言わないようにしているが、もしも言ってしまえば調子に乗ってあの特殊な弓を背負って狩りにいき、その腕を持ってして捌き切れない量の獲物を狩ってきそうだ。

 本人曰く風を読んで獲物の動きを予測するんだとか言っていたな。

もともと『スナイパー』なる遠距離狙撃の専門職だったらしいのだが、1キロ先の敵を斃した事があるがと法螺を吹いていた。

神話の英雄かお前はと叩いておいたのだが。

警備員「これでも凄腕の狙撃手だったんだぞ」

アルシェ「はいはいそうですね」

警備員「愛用のライフルさえあれば度胆を抜いてやるものを」

アルシェ「妄想はいいからさっさと畑の耕すの手伝え」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ