心から言える、あの女がうざいっ!
やっと女の子がでてきましたww
入学式が終わり、それぞれのクラスに分かれた。
この高校は、あいうえお組からまみむめも組までの7クラスがある。
…いや、ホント名前からしてふざけてるよね。理事長完全に悪ふざけで決めたよね。
とりあえず僕はあいうえお組、まあ略してあ組だ。
入学式の列のまま、担任らしき女の先生に連れられて、教室まで行くと出席番号順に席についた。
教室は割と広めのくせに何故か机が真ん中の方にギュッと寄せてある。…もっと広く使おうよ。
あと、変人が集まっていると聞いていたので、僕はもっと荒れていたり、うるさいのを想像していたけれど、意外と そんなことは無く、みんな静かに自分の席に座っていた。
なんだかこれからに淡い希望が持ててきた。
みんなが席に着いた所で、女の先生が教卓の前に立ち、自己紹介を始めた。
「えーと、このクラスの担任になりました―――…」
申し訳ないがここから先は僕が眠ってしまったので、覚えていません。まる。
いや、確かに昨日の夜、明日への不安が多すぎてあまり眠れなかったけど、違うんだよ。あの担任の声を聞いているといきなり睡魔が襲ってきたんだよ。夢の世界にいざなわれたんだよ。
というわけで、僕は担任の自己紹介、この学校についての事や、これからの予定などをまるまる聞き逃してしまった。
まあ、不幸中の幸いと言うべきか、今日は生徒の自己紹介がなかったから、僕がみんなの前で恥をかく事は無かったけど。
――その代わり、僕はいきなりめんどくさい奴に捕まってしまったのだ。
「おぉきろぉぉおおおおおおおおお! 火事だぞぉおおおおおおおおおおおお!!」
耳元でキーンと声が響いた。
反射的に起きた。
そりゃそうだ。鼓膜が破れるかと思ったぞ。
眠気も吹っ飛んだ。
驚いて、ジンジンする耳の方向を見ると元気のよさそうなポニーテールの女子がニッと笑っていた。教室には彼女と僕だけで、他の生徒はすでに帰ってしまった後のようだ。
「まったく、昼間から寝るとは、常識ないのかね、君は」
彼女はバカにしたように僕に言った。
こっちの台詞だ。
常識のある奴が、寝ている知らない人に耳元で火事だああああなんて言うわけがない。
僕は冷たい目で彼女を見つめた。
「なんだよ、その非難したような目は! 泣くぞ! 私泣いちゃうぞ!!」
うわっ、なんでいきなり涙目になんだよ。
態度が変わりすぎだろ。
うぜー。
めんどくせー。
なんなんだよこいつ。
「あの…、誰ですか?」
「ガーン! 私の事を知らないだとぅ!? ウルトラショーック!」
なに変なポーズっとってんだ。
いちいち反応がうざい。コレ無視て帰ろうかな。
「ああ、ごめんんんん! 私が悪かったから無視とかやめてぇ!!」
彼女は、立ちあがって帰ろうとした僕のブレザーをつかんで、必死にすがりついてきた。
やめろよ、つかむなよ。しわができてしまうじゃないか。
ホント何なんだよ。
だが、このクラスにいる事からして、多分クラスメイトだろう。――だとしたら、無視をして帰ったら、それはそれで明日が面倒くさそうだ。
仕方がないから、今日で片付けてしまおう。
「あーはいはい、わかったから。で、結局誰? なにか用?」
僕が仕方なく、また自分の席に座ると、彼女はえらそうに、意外にも大きい胸をそらした。
「ふっふっふ。ようやく私の話を聞く気になったんだね! しょうがない、話してやろう」
ほんと、こいつ女じゃなかったらぶっ殺してるところだった。
良かったね、女に生まれてきて。
「私の名前は小里神マヒル。君と同じ1年あ組で君の隣の席だよん。これから1年間よろしくだねっ!」
笑顔で握手を求められた。…無視しようかな。
あ、でもさっきのように騒がれても面倒だし、ここは素直に応じるか。
小里神は僕が抵抗しなかったのが嬉しかったのか、僕の手を強く握りブンブン大きくふって、「よろしくよろしく」と連呼してきてうざかったので、手を振りほどいた。
「ガーン!!」
「で、なんの用? 僕そろそろ帰りたいんだけど」
「おお、そうだったそうだった」
ショックを受けていたが、僕が話題を変えるとすぐに立ち直った。アホだ。ただのアホだ。
握手の事はもう忘れたらしく、小里神はさっきのようにひまわりみたいな、暑苦しい(僕的に)笑顔になった。
「いや、用は特にないよ」
「…………」
「いやいや、無言で立ち去らないでよ―――!」
だからブレザーつかむなよ。
うぜーよ。
帰らせてくれよ。
いや、帰らせて下さい。お願いします。
「別にいいじゃん! クラスメイトなんだし! 用がないと話しかけちゃいけないのかよぉ!!」
「別に僕以外になら、どうぞご勝手に」
「さっきからなんでそんな冷たいの!?」
小里神は涙目になりながらも、僕の手を離そうとしない。
むう、なんなんだよ。
仕方ないので僕が折れてやることにした。
「ふう、仕方ないから僕の貴重な時間をお前のような虫けらに10分だけやろう」
「なんでそんなに偉そうなの!?」
小里神は納得がいっていない様子だったが、僕が無視して自分の席に座ったので、小里神も僕の隣の自分の席に腰をおろした。
ん、待てよ、さっきはさほど気にしていなかったけど、こいつ僕の隣の席ってことは、明日からもこのうざったい状況が続くんじゃないだろうか?
え、嘘だろう? どうしよう、こうなったらもう、再起不能なぐらいに徹底的に叩きのめしておいた方がいいんだろうか。
いやでもこいつMっぽいしなぁ。
…僕はどうすればいいんだ。
「あ、そう言えば君の名前聞いてないよね」
僕がうーんと考え込んでいると、小里神が聞いてきた。
「ああ、椎名つかさだよ」
しまった、普通に名乗ってしまった。
「ふむ、じゃあ、つーくんで」
え? つーくんてもしかして僕のこと?
この女は僕の名前を聞くなり、とんでもないあだ名を作りやがった。
まあ、もういいや。どうでもよくなってきた。
「でだね、つーくんや。私が君に声をかけたのは、私も先生の話が始まった途端寝ちゃってて、起きたら、教室につーくんしかいなくなってたからだよ!」
こいつさっき僕が寝てた事馬鹿にしてたよな? なんで自分も寝てんだよ。
何、そんなに僕に殺してほしいの?
「で、せっかくだから高校での友達第一号として声をかけたんだよ。1日目は大人しくしとくつもりだったんだけどねー」
何が楽しいのか、ニコニコ笑いながら、聞いてもいない事をしゃべりだした。
僕はこいつの友達になった覚えはないのだが。
なんなんだこの女は。親父に並ぶくらいイライラするな。僕、血圧上がっちゃいそうだよ。血管ブチ切れちゃいそうだよ。
と、僕が怒りをこらえてぶるぶると震えていた時、ガラッと扉が開いた。