頼むから死んでくれ親父
前からちょくちょく書いていた小説を載せてみました。
なんかラノベ的な話を目指して書いてました。
誤字脱字などがあったら言って下さい!
うさんくさい。
この高校、そして、一緒に入学した生徒。この春の暖かい日差しまでもが、うさんくさく見えてくる。
そんな疑心暗鬼状態の中、僕の高校生活は幕を開けた。
入学式の校長のつまらない話をあくびをかみ殺して聞きつつ、僕はダッシュで家に帰りたい衝動を必死に抑えていた。
それは、僕が社会不適応者で引きこもりだからとかではない。
まあ、ここが僕の志望校ではないが、しかしそんな些細な理由でもない。いや、人にとっては些細な理由ではないな。
理由は、僕がここでやらなければいけない事があるからだ。
しかも、それが、父親に無理やりやらされたという、とんでもなくやる気の起きない理由でだ。
そして、とてつもなくうさんくさい。
そもそも存在自体がうそくさい父親が言った事だ。信用できるわけがないじゃないか。
まあ、その理由は半年前までさかのぼる―――。
*
「志望校を変えろぉ?」
部活が終わり家に帰ると、いつも部屋にこもりきってうさんくさい研究をしている父親が珍しくリビングでテレビを見ていたため不思議に思っていると、唐突にそう言われた。
「そうだ」
僕の問いにあっさりと頷く父親。
なんだか、顔を見ているだけでいらっとくる。損な顔をしていると思う。
「なんで? 父さんに僕の行く高校なんて関係ないだろ」
「おれもこないだまではそう考えていたんだがな…」
こいつは息子の進学をそんな風に考えていたのか。
「氷川高校って知ってるか?」
一口お茶をすすってから、父さんはいきなりそんな事を言い出した。
その高校は結構有名なため、情報にうとい僕でも聞いたことがあった。
「そこに行きなさい」
「嫌だ」
きっぱりと断った。
当たり前だ。
別にレベルが高すぎるわけじゃないが、その高校は、変な人がたくさんいる所として有名なので、一般人の僕が行きたいと思うわけがない。
「いや、もう決定事項なんで。ここ以外は学費払わん」
「僕の意思は?!」
「ない」
「死ねくそ親父!!」
今にも跳びかかりそうな僕を、親父はまあ待て、となだめた。
「もちろん理由はある」
「理由…?」
そうだ、と親父は頷いた。
「実はな、そこで探してほしい人物がいるんだよ」
「はぁ? 誰?」
「誰かはまだ判明していない。それを見極めて欲しいんだ」
どういうことだ?
親父の言ってる事がどうにも意味不明だ。
何を言ってるんだ、こいつは。
「まあ端的にいってしまうと、魔女を探してほしいんだ」
「じゃあ僕お風呂入ってくるから」
「だから待てと言ってるだろう」
親父との会話を打ち切ろうとした僕を、今度は強引に腕をつかんでとめられてしまった。
なんなんだよ。僕はそんな絵空事に付き合ってられるほどひまじゃあないんだが。
「まあ、魔女と言っても、魔女の子孫みたいなものだ」
「子孫って…昔はいたってことかぁ?」
「ああ、大昔にな」
んなバカな。
「で、俺はな、ずっとその研究を続けてきたんだよ」
「!?」
この言葉には愕然とした。
そんなバカなことを今までしてきたというのか? じゃあ、今までの生活費とかってどうしてたんだよ。そんな研究で食えてきたわけないじゃん。
もしや、犯罪とかに手を出していないだろうなこの親父。
「それで、やっと魔女は今お前と同じ15歳だってことがわかったんだ」
「…はあ、そうですか」
もう、親父の話は適当に流すことにした。
真面目に聞いていたらきりがない。
うさんくさい親父の事だ。全部うそだろ。
「そして魔女は来年、氷川高校に入学するんだ」
「…なんでわかんだ?」
「あの、高校は変人を集めるからな。魔女は変人なんだ」
何の自信があってそんな事を言いきれるのだろうか。
「でもまあ、全校生徒が変人なわけじゃない。とある1クラスに毎年変な奴らが集まる。そのクラスに魔女はいるんだ。だからお前そのクラスに入ってスパイしてこい」
「…………」
「まあ主に悩んでる生徒の問題を解決してやって、いろんな奴らと親密なかかわりを持て。後々ちゃんと教えるけど、魔女には特徴があるからさ。親密になって誰が魔女か見極めてこい」
「…いや、あのさ、なんですごい変な奴らが同じクラスに集まるのかはこの際おいといて、僕がそのクラスに入れるかなんてわからないじゃないか」
「大丈夫だ。父さん、そこの理事長と友達だから。コネで入れてやる。ちなみにそのクラスはその理事長が、こいつはすごい変人だ、と思った奴らを集めたとこだ。あいつの目は本物だぞ」
つまり理事長の偏見と独断で決めていると。
なんだそれ。
本当に魔女いんのかよ。
不確定要素多すぎだろ。
ぜってえいねぇよ。
10円かける。
「まあ、魔女っつっても、まだ力とかは持ってないんだ。というか無自覚でな、20歳になったらその力が解放されて、能力を持ってしまう。そうなるとそうなるとただ事じゃ済まなくなるんだ。この国が滅ぶかもしれない。その前に保護するんだ」
廚二病か。
この親父真顔で何言ってんだ。
「つうわけでよろしく。ノルマは1年間で30人の悩み解決な」
「!?」
言うだけ言って親父はスタスタと自分の部屋へ戻って鍵をかけてしまった。
「おい、親父! ふざけんな、出てこい!!」
その後、いくら親父の部屋の扉をたたいても親父が部屋から出てくる事はなかった。
半年間。
そしてなぜか僕の志望校の紙はいつの間にか氷川高校へと変えられていた。
*
というわけで僕は現在、氷川高校の入学式中でーす。わー。パチパチ。
……もう嫌だよ。
頼むから財産だけ残して死んでくれ親父。
男しか出てこなくてすみません…。