二
郷愁山を覆っていた雪はすっかり溶解し、山桜がいっせいに身をくゆらせて美しい花びらを散らす。枯れ枝からは黄緑色の芽吹き、瞬く間に大ぶりの葉が生い茂る。その山の中腹辺りにひっそりと佇む郷愁寺。鷹子は南の客間へ向かっていた。客間の周囲は静まり返っている。ひたひた、と自分の足音だけが反響する。
客間の襖を開けた彼女はひょっこりと室内を覗いた。部屋の隅に、掛け物を頭からかぶった椿の姿があった。
「……いってきます!」
鷹子は、襖を閉めながら小さく――しかし、元気良く言った。
※
「…………」
威勢の良い鷹子の足音が遠ざかったのを確認し、椿は上半身を起こした。乱れた髪を手ぐしで整えて枕元に置いていた着替えに袖を通す。
あれから一月。一人で外出できるまでに回復したものの、突如襲ってくる右肩や脇腹の痛み、頭のすみがぼんやりと霞がかったような倦怠感に、いまだ椿は悩まされていた。
とりあえず水でも飲もうと井戸へ向かうことにして部屋を出た椿だったが、井戸に着く一歩手前でぴたりと足を止めた。井戸付近に僧侶達がたむろっていたのだ。釣瓶桶を井戸の中に放り込んでいる者、岩肌に動物や仏の顔を刻む者達が談笑している。あの輪に入れるわけがない。
仕方がないので、椿は寺を出た。
藪を掻き分けて進むと、大岩壁を断ち切るように落下する滝に着いた。椿はその滝のもとに広がる泉のふちに腰を下ろす。激しい水圧を誇る滝が、朝陽を受けて黄金色に乱反射しながら飛沫をあげる。椿はその澄んだ水を掬い上げ、存分に喉を潤した。
「お前……」
後ろを見やると、ごつごつした岩場に高下駄なんぞ不安定なもので佇む僧侶達の姿があった。彼らはこれでもかと言うくらい顔を顰めている。これから滝行をおこなうのか、衣がいつもと違った。
椿は僧侶達に向き直る。
「な、ななんだよ。やるか?」
「愛想の一つくらい見せたらどうだ!」
「うるさい」
低く言う椿に僧侶達は顔をひくつかせた。椿は見事な足捌きでその場を去ろうとした。
「良いご身分だな、あんた」
「貴様の食しているものは全部、仕事の合間を縫って鷹子が一人で探してきてるってのに!」
ぴたりと椿の足が止まる。
「我らの寺に備蓄はない。己の食い物は己で集めるのが、寺に居候する者の決まり。材料を用意出来ぬ者は炊き出しにありつけぬ」
「加え、寺の掃除を行なったり、山神への献上品も用意しなければならん。それがどれだけ大変なことか、お主にはわかるまい」
「わしらは貴様のために食べ物を分け与えるなど生優しいことはせぬぞ。はよう寺から去れ!」
僧侶達はそう吐き捨てて大股で滝壺へ向かう。彼らの後ろ姿を無表情のまま見つめる椿の顔が、波立つ水面に映っていた。
夕陽が山間に沈んでいく。床板をぎしぎし鳴らし、とてて、と軽い足音を立てて少女は客間の襖を勢いよく開け放った。少女――鷹子は泥まみれの顔を腕で拭う。
「ごめんなさい、遅くなってしまって。お腹すいたでしょ?」
鷹子はそう言って高坏にのせた食事を運んできた。雑穀米に漬物、山の幸を煮詰めた汁に加え、笹の葉にくるんだキノコ類と胡桃の炙り物まで添えてある。
鷹子は当たり前のように椿の横に座り、食前感謝の言葉を呟くと小さな二つの握り飯に食らいついた。小さな握り飯はすぐ消える。椿は箸を止めて彼女を観察していた。やせぎすの少女は物足りなさそうな顔をして、指にこびりついた米粒を舐め取った。
「…………食うか?」
「あ、あたしは大丈夫だから。さっき、たらふく食べたの」
鷹子は椿の申し出を断る。しかし、言葉に反して彼女の腹の虫が鳴った。
「あまり食欲が沸いていないんだ。……ほら」
「食欲沸かなくても食べなくちゃ。怪我の治りが遅くなっちゃう」
鷹子は頑として膳を受け取ろうとしない。
椿の脳裏に、僧侶が吐き捨てた言葉が過ぎる。
『貴様の食しているものは全部、仕事の合間を縫って鷹子が一人で探してきてるってのに!』
鷹子が見守る中、椿は完食して箸を置いた。
「ごちそうさま」
「はーい」
食べ終えた膳を抱え、鷹子は部屋を出て行こうとする。椿はぽつりと呟いた。
「…………明日は俺も、食い物探しに付き合う」
「あ――――」
ただし、と勢い込んで頭を下げようとする鷹子を制す。
「俺は山菜と毒草の見分け方など知らんからな」
「大丈夫、ちゃんと教えます! じゃあ、また明日ね!」
足取り軽く部屋を後にする鷹子を見送りながら椿は鼻を鳴らした。
翌朝、椿と鷹子は竹かごを背負って郷愁山の中にいた。椿は木の根に生えたキノコをむしり、首を捻る。
「あ、それは食べられるやつ」
キノコの形を見て鷹子が言うと、椿はすぐ様それを竹かごへ放り込んだ。椿と鷹子の竹かごには既に薬草や山菜がたくさん詰まっていた。太陽が顔を覗かせる前から山に入ったのだ。これくらい採取出来て当たり前である。
椿は折り重なる木々の葉を見上げ、目を細めた。木漏れ日がじわりと肌に染み込んでくる。山の中には風光明媚な景観が広がっていた。豊かに実った山の幸、澄んだ水、元気に駆け回る動物達。
「こんなに実り豊かならば、麓の村は飢え知らずだろうな」
思ったことを口にした途端、鷹子の表情が曇った。
「村は貧しいよ。村の人達は山へ立ち入ろうとしないから。……呪われてるからって」
「呪われている?」
うん、と鷹子は悲しげに頷く。
「三年前に鶯幸様がおんぼろだったあのお寺に住み着くまで、この山は禿げ山だったの。それがだんだん緑の山に変わっていった。だから、村の人達は何か恐ろしいことを鶯幸様達がしたんだって言ってる。郷愁山を呪ったんだって」
「馬鹿な……」
鷹子は不服げに唇を引き結んだ。
「ここらは外部から人が来ることが少ないから、閉鎖的な考えが根付いてるんだってお弟子さん達が言ってた。……へんなの」
「そう、か」
「あ! うぐいす!」
沈んでいたと思ったら、表情を明るくして駆けて行く。つたない歌声が野の花を揺らした。鷹子は竹かごの重さなど微塵も感じさせない軽やかさで、裸足であっちへこっちへ飛び跳ねていた。彼女は、いとけない笑顔を椿へ向ける。
太陽がちょうど中天に昇る頃、椿と鷹子は郷愁寺へ戻ってきた。
「椿様のおかげで、随分たくさん収穫出来たよ。ありがとうっ」
椿は「ああ」と短く答える。
本堂の簀子では鶯幸や僧侶達が話に興じていた。鶯幸は気配を感じたのだろう、こちらに向かって手を振る。
「鶯幸様、お弟子さん達、ただいま!」
鷹子は鶯幸達に向かって走り出した。と、ぽろりと鷹子の竹かごから木の実がこぼれた。椿はそれの行方を追う。
てん、てん、と木の実は転がる。それは何者かの足許で止まった。その人物はゆっくりと鷹子が落とした木の実を拾う。
「おいしそうな木の実だね」
落ち着いた声音で青年は言った。彼は焦げ茶の長髪を高い位置で束ねている。髪と同色の垂れ気味な瞳が柔和さを醸し出していた。
「あ……っ」
青年の方を不審げに振り返った鷹子の顔つきが変わる。寄っていた眉を下げ、彼女は無邪気に微笑んだ。
椿は青年の格好をざっと確認する。年の頃は二十過ぎくらいだろう。彼は上等な生地で作られた薄色の直垂姿――十中八九、武士だ。
「一年ぶりかな…………久しぶり」
「久しぶり! 京へ行ったと聞いてたけど、帰ってきたんだね」
「うん。足利様に頼まれた仕事が終わったから、こちらへ直行したんだよ。久々にゆっくり出来そうだ」
「本当? だったら、また剣の稽古つけて下さいっ」
「はは、おまえは本当に男勝りだね」
鷹子と青年が親しげに喋っているのを、鶯幸や僧侶達は遠巻きに見ている。
「おや……この者は?」
青年が椿に気付き、鷹子に訊ねる。
「椿様って言うの。このお寺に居留してるんだ。優しいんだよ。今日もね、山菜集めを手伝ってくれたの」
「へえ。わたしは嘉納則宗と言う。ここら一帯の地域を足利さまから任されている者だ」
則宗は親しげに名乗ってきた。椿の瞳孔が開く。則宗は手を差し出し、強引に椿の手を握った。思いのほか力を込めて握られる。
「ぜひ、鷹子と仲良くしてやってくれ」
焦げ茶の双眸が底光りした。
「……鶯幸、鷹子を借りてもいいだろうか」
「鷹子が良いのならば、かまいませんよ」
「ああ。では、久方ぶりに散歩でもするとしよう。いいな、鷹子」
鷹子は則宗の言葉に頷いた。そして彼女は竹かごを鶯幸のところへ持って行く。
「今日はたくさん採ってきたよ」
「頑張りましたね」
「椿様が手伝ってくれたから」
鶯幸に頭を撫でられながら、嬉しそうに鷹子は目を瞑った。
「鷹子」と則宗が呼びかけた。鷹子は慌てて彼のもとへ行く。
則宗は冷たい視線で鶯幸達を見ている。……侮蔑とも取れるような。則宗が鷹子を連れて去った後、僧侶達は「けっ」と毒吐き、つばを吐いた。
「駄目ですよ。はしたない」
弟子を戒める鶯幸も、どこか複雑そうな顔をしていた。
「鶯幸様。俺やっぱり、あいつ……虫が好かねえ」
「あのオレ達を見下した目。癪に障る」
「落ち着きなさい」
椿はそんな彼らの応酬を聞きながら、竹かごを背から下ろした。
「あのお方、君から見てどう見えましたか?」
鶯幸に問われ、椿は顎を引く。
「……どうも何も――」
どう表現していいのかわからず、椿は言葉を切った。彼の瞳の奥に宿る炎が燻る。
※
則宗が馬を山と村との境目に置いてきたというので、そこを目的に定めつつ鷹子達は山中を散策していた。
「椿はどのような人物なんだい?」
「椿様はねえ、本当はとてもいい人なの」
「いい人?」
鷹子は則宗を見上げながら首肯する。
「あまり自分から喋ろうとしないから、誤解されるんだろうけど。あたしがお腹を空かせてたら自分のをくれようとしたし、一緒に山菜採りしてくれたし……」
椿の良さが則宗へ伝わるよう鷹子は心を砕いて言の葉を連ねた。
「――椿というのは偽名だろう? 間違いなく、あれは武士。真名や身分を言わない者が、いい人なわけないじゃないか」
「……誰にだって、言いたくないことはあるから。きっと、椿様だってもう少ししたら本当のこと言ってくれるはずだもん」
則宗は自分のうなじに手をやり、遠くを見つめた。
「ねえ、鷹子。寺にいたら、ますます村の人達から嫌われてしまうと前から言ってるだろう。……嘉納家へおいで」
鷹子は足を止めた。
「わたしのところに来れば、何不自由なく暮らせるし、村人達から嫌がらせも受けなくて済む」
「……どうして、そんなこと言うの?」
鷹子は唇を戦慄かせた。
「え?」
「則宗様も、村の人達みたいに……鶯幸様や皆が嫌いなの?」
「いや――そんなことはない。でも、あの椿という得体の知れない者を置いている寺に、これ以上鷹子を置いておきたくないんだ。わかってくれるね」
則宗は鷹子の両肩に手を置く。鷹子が首を横に振ると、則宗は失望した表情を浮かべた。
「ごめんなさい。お寺を出て行くことは出来ない」
「…………どうして?」
「あたし、鶯幸様や皆が大好きなんだ。それと――」
鷹子は言葉を切り、強い輝きを放つ瞳を則宗に向けた。
「椿様を見つけたのは、あたしなの。あたしが鶯幸様に、椿様をお寺へ置いてくださいって頼んだの。だからあの人のことを悪く言わないで」
真剣な鷹子の瞳を受けた則宗は長い睫毛を伏せる。
「そう…………わかった」
「うん」
理解してもらえたのだと、ほっとした鷹子は顔を綻ばせた。すっと則宗は双眸を前に向けた。彼の瞳は限りなく冷えていた。
※
数日後の昼、鶯幸の部屋からは明るい笑い声が聞こえていた。
薬湯を煎じている鶯幸の横で、鷹子もそれを真似て薬湯を煎じている。鶯幸の煎じている薬湯は、熱を出した村の子供に渡すものらしい。僧侶達は村人から忌避されながらも、たびたび村へ行って様子を聞いているのだ。
「おいおい、鷹子。オマエ雑だなあ」
二人の横で、修行の休憩中である太眉の僧侶が茶々を入れる。
和気藹々とした彼らから少し離れた壁際で、椿は胡座をかいてまどろんでいた。薬草をつぶすまでは手伝ったのが、後は自分一人でやると鷹子に言われてしまい、手持ちぶさたとなった彼は物置から兵法書を何編か持ってきて読み漁っていた。しかし、文字を追っていくと眠くなるものである。いつの間にか兵法書を膝の上に置いてうつらうつらしていた。
「椿様、椿様」
鈴の鳴ったような声にはっとして午睡から目覚める。寝ぼけ眼の椿に鷹子は何かを差し出した。一瞬、何を差し出されているのかわからず反応に困ったが、すぐに状況を把握する。鷹子が煎じていた薬湯だ。
「……これを、俺に……?」
「うんっ。椿様にと思って作ったの。早くけがが治りきりますように」
鷹子は歯を見せて笑った。くりくりした大きな瞳が細まる。
それを見守る鶯幸や僧侶は頷き合った。
「あ、鶯幸様! あたし、村の子供に薬湯持って行く」
「本当ですか。助かります」
「うん。いってきます」
つむじ風よろしく鷹子は薬湯を手に山を下りる。鷹子の姿が全く見えなくなった時、太眉の僧侶が呟く。
「おい、椿。ありがとうな」
「…………?」
僧侶は鼻の頭を掻いた。
「あいつはあんまり人に懐かない。おれらと喋ってくれるようになったのも、最近になってからだし」
「――あの子には、信じられる大人がいませんでしたからね。しょうがない」
そう言う鶯幸の目元が暗くなる。
「…………気になっていたのだが」
椿は神妙な顔つきで言った。
「ん? なんだ?」
「あいつ、親がいないと言っていた……飢饉か何かで?」
「いいえ。母親は心の病で。父親は九年前に殺されたらしいです」
鶯幸の答えに、椿の唾を呑み込んだ。
「――殺された?」
「はい、この地域一帯を領主殿に任された、嘉納の前当主にね」
「何故」
「前当主の暗殺を企て返り討ちにあった、というのがもっぱらの噂です。噂は、噂でしかないですが。そのせいで母親も心労に倒れたと鷹子が言っていました」
「全て、伝聞なのか」
「私達がこの山にやって来たのは三年前。それ以前に起こった出来事なので、詳細はわからないんです」
「ふん……嘉納、か。……いけ好かん」
椿は腕を組んで鼻を鳴らした。
「だろ? おまえ、意外とわかるじゃねえか」
僧侶は深く頷く。
「……しかし、そんなことがあったにも関わらず嘉納則宗と親しくしているとは――何とも妙な話だな」
「おお、それはおれも常々思っていた」
椿の言葉に、太眉の僧侶もそれに同意を示した。鶯幸は手にした数珠を擦る。
「……鷹子から聞いたことがあります。則宗殿とはその件がある以前から交流があったとか。父親のことで村弾きに遭い始めた後も、彼だけが変わらず接してくれた、と」
「…………」
「鷹子の中では、則宗殿は善人なのです」
しんみりとした雰囲気が流れる。
「あ、鷹子一人じゃ心許ないな……俺、追いかけて来ます」
その重い空気に耐えられなかった僧侶が腰を上げようとしたのを、椿は押しとどめた。
「おい、何すんだよ」
その問いには答えず、椿は部屋を後にする。
「何だ、何だあ?」
首を捻る僧侶に、鶯幸は笑顔を見せた。
「きっと、彼は鷹子のところへ行く気です」
※
鶯幸の煎じた薬湯を届けに来たと言うと、村人はそれを素直に受け取った。子供の母親は礼一つ言わず家の妻戸を閉める。この程度、いつものことだ。鷹子は気にするでもなく村の中を歩いていた。
唐突に、後頭部に衝撃が走った。振り向けば村の子供達数人が石を持ってにやにやと笑っていた。子供達は大きな石を思いきり鷹子に向かって投げつける。
「やめてっ」
鷹子は咄嗟にしゃがんで頭を庇った。
「郷愁山へ帰れ! 鬼っ子!」
子供は純粋で、残酷だ。理由も知らぬまま、大人に倣って鷹子を鬼っ子と呼ぶ。鷹子は彼らの面白がる瞳が何よりも恐ろしかった。
「こら、おやめなさい」
「だって、おっかあ」
「可哀想でしょう」
ちょうど通りかかった子供達の母親は、諫めながらも嘲笑を洩らす。本気で止めようとはしていない。小石や普通の大きさの石が鷹子の腕や足、背中に当たる。泣きそうになるのをじっと耐え、彼女は目を瞑った。
「おい」
凛とした面立ちをした青年が、鷹子達の前に姿を現した。無造作に切った黒髪は陽光を受けて煌めき、切れ長の鋭い瞳と一文字に結ばれた薄い唇が彼の怜悧さを引き立てる。
鷹子はぱっと顔を上げた。
「椿様っ」
「……やめろ」
ここに至っても石を投げつけようと構える子供達に向かって椿が釘を刺す。子供達は、わっと女の後ろに隠れた。
「なにさ。大の男が子供を脅すのかい!」
椿は無言で女を睨みつける。女は臆したのか、そのまま子供達の手を取って背を向けた。
「あの……ありがとう」
「いや」
鷹子の目は自然、女と子供達の後ろ姿を追う。自分にはもう与えられることのない、肉親のぬくもり。彼女の瞳は心細さ故、揺れた。
そんな彼女の頭に大きな手が覆い被さった。上目遣いで椿を見れば、彼は小さく頷く。椿が手を置いている部分から、じわりと温かさが広がっていく。やはり、彼は優しいのだ。鷹子は椿の手を握った。椿はそれを、握り返しはしなかったものの、振り払わなかった。
――馬の蹄が遠ざかっていくのが聞こえた。