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隣の家に住んでるメイドが、ちょっと苦くてちょっと甘い  作者: 二木弓いうる


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第15話 盗聴執事のネルリヤン

 シルベスターと卵を送り届けて、急いで帰宅。すっかり遅くなっちゃったからな、愛媛が心配だ。


「ただいま! 愛媛、ぶ、じ……」

「お兄ちゃんお帰りー」


 出迎えた愛媛の髪は三つ編みが解かれていて、濡れていた。その背後では、ネルがニコニコと微笑んでいる。


「お帰りなさいませ、和歌様」


 このセリフがシルベスターだったらどんなに良かったことか。いや、今はそれどころじゃない。


「ネル、まさかお前」

「安心して下さい。確かに入浴はさせましたが、僕は髪にしか触れておりません」

「って事はだ。やっぱ一緒に入ったな、てめぇ!」

「大丈夫です。僕は服ごと入りました。撮影もしてません。ちょっと頭を洗ってさしあげただけです」

「変な事するなって言っただろ」

「髪を洗う事も変な事の内に入るのですか」

「頭洗ってる間の愛媛は服着てたのか」

「いえ、全裸でしたね。ごちそうさまでした」

「てめぇ!」


 俺はネルの胸倉を掴もうとするも、愛媛にジッと見られていた事が気まずくて。寸止めで手をひっこめた。代わりに、愛媛に注意を入れる。


「愛媛も、俺がいない時に風呂に入るな」

「だってお兄ちゃん帰って来るの遅いんだもん」

「仕方ないだろ、将来のためだ」


 そう、これは愛媛のためでもあるんだ。決して俺がデートしてたかったとか、そういう話ではない!


             ***


 翌日。俺は近所でバイト出来そうな所を探した。

シルベスターを雇うためには、まず金が必要だ。かといって親に「メイドを雇いたいので送金して下さい」は非常に言いづらいし。


 愛媛がいるから家で出来る事にするかとも思ったけど、なかなか良い条件がなかった。


 家から徒歩十分のコンビニでバイト出来るのが理想だな。愛媛には防犯ブザーを持たせ、学校帰りには人のいる所で遊ばせて。もしもの時はコンビニに逃げ込んでくればいいと教えればいい。


 とはいえ、すぐにバイトを始める事は出来ない。学校にバイトの許可をもらうためには、まず親が許可したというサインが必要だからだ。こんな近所で隠れてバイトする事も難しいだろうから、大人しく親が帰ってくるのを待つしかない。まぁうちの親は「帰ってきて」と言った所ですぐ帰ってくるようなタイプではないのでしばらくは無理だろう。まだ帰って来ないんかなー……。


「おかえり、お兄ちゃん」


 バイト先の下見を終えて、家へと帰る。出迎えたのは愛媛だけだった。


「ただいま。今日はネルに何もされてないか?」

「ネルねー、お使いに行ったまんま帰って来ないの。えひめ、お留守番してたんだー」

「へぇ、珍しい」


 まぁ何もなかったなら良かった。

 俺は愛媛が持っていたぬいぐるみに目を向ける。


「愛媛、そんなぬいぐるみ持ってたか?」

「これネルが作ってくれたの」


 それなりにデカい、ピンクのクマ。見るからにフワッフワの毛ざわりに、愛らしく光る眼玉……なんかこの目おかしくない?

「愛媛、ちょっとこのクマ貸して。宿題見張る役にさせる」

「いいよぉ」


適当な事を言ってぬいぐるみを借りる。腹の部分、妙に硬いな。やっぱりおかしい。

俺は自分の部屋へ行き、ぬいぐるみの腹部を切る。かわいく作られているせいで、少し罪悪感だ。


「やっぱり!」


 テレビなんかで見かける、盗聴器ってやつだ。目玉もカメラだろ、これ。


 今すぐにでも警察に突き出したい。

 が、これをネルが入れたって証拠もないな。いや、ネルがよこしたぬいぐるみの中に入ってたんだから、間違いなく犯人はネルなんだけど。アイツの事だ、知らないうちに入れられたんですーとか言って逃げ切るに違いない。確実にネルがやったって証拠を手に入れて、追い出すしかないか。


 とりあえず今日はこのまま……待てよ。このままだと俺がクマを殺したと愛媛が泣くな。それはマズい、俺よりネルを庇うようになるかもしれない。どうしたもんか……。


 二時間後、泥だらけのネルリヤンが帰ってくる。


「申し訳ありません。ちょっと乱闘事件に巻き込まれまして」

「巻き込まれた、じゃなくてお前がしてきたんだろ。どうせシルベスターと」

「よくお分かりになられましたね。まぁ、あれの事はどうだって良いんです。それよりすぐ夕飯の支度をしますね!」

「そんな泥だらけで作られたご飯なんて食べたくない。夕飯は俺がやるから、お前は風呂入ってこいよ」

「主人にそんな事させる訳にはいきません」

「主人が汚いから風呂入れって言ってんだから、黙って入ってこい」

「なら仕方ありませんね。行きましょうか、姫様」


 ネルは愛媛の手を握った。油断も隙もない奴だな。


「一人で入ってこい!」

「大丈夫です。僕が入るのを姫様に見守って頂く。ただそれだけです」

「何で執事が小学生に風呂入るの見ててもらわなきゃなんだよ。そういう事なら、代わりに俺が見といてやる。夕飯はカップ麺でいいだろ」

「和歌様、男の風呂を見守る趣味が?」

「ねぇよ!」


 仕方なくに決まってるだろ。

 俺はネルの背中を押して、風呂場へ連れて行く。待てよ、これはチャンスだ。

念を入れて、リビングにいる愛媛には聞こえない程度の小声で話す。


「あとお前のベッドの中に死んだクマを入れといたから、普通に直してくれ。また盗聴器やカメラ入れたら許さないからな」

「普通にぬいぐるみ縫えって言って下さいよ。しかし、まさかそれもバレてしまうとは」

「反省もしろ」


 ネルは返事をせずにニコニコしている。さては反省してないな?

 トントン、と扉を叩く音がする。


「ネルー」

「おや、姫様。どうしました?」


 今のクマの話かな。聞かれてないと良いんだけど。


「お風呂入るのにネル服持ってってないなーって思って、持って来てあげたの」


 それって愛媛、ネルの部屋入ったんかな。いくら一応は親の部屋といえど、何があるか分かんないから入らないように言い聞かせないと。

 愛媛の言葉を聞いて、ネルの目が輝いた。


「流石姫様、お優しい。せっかくなので一緒に入りましょう」

「させるか! こら愛媛っ、あっち行ってなさい」


 俺は扉を開けて、愛媛から服だけを受け取ろうとした。だが愛媛が持っていたのは、執事服だった。

 風呂入った後も執事服って、なんか堅苦しくない?


「あのね、ネルの服これしかなかったの。もうネルがお家に来て何日も立つんだけど、私ネルが羊さん以外の服着てるの見たことないの」


 そういやそうだな。風呂も俺達が寝た後、一番最後に入ってるらしいから見た事ない。

もしかしてシルベスターがメイド服しか着てないのも、それしか持ってないのかな。だとしたら、すごく勿体ない気がする。絶対普通の服着ても可愛いのに……。

 ネルは優しく微笑んで、言った。


「僕は羊じゃなくて執事ですよー」

「羊はその服以外着ちゃいけないの?」

「もう可愛いから何でも良いか。この服は執事にとって正装ですから」

「なんかねー、堅苦しいから好きじゃないの」

「大変だ。和歌様、僕に服買って下さい」


 俺は思わず頭を抱えた。


「何で主人にねだるんだよ」

「すみません。本社が僕に何か買ってくれるとは思えなくて」

「だろうな。って言うか、お前執事服以外持ってないのか」

「執事服数枚と、後は先月姫様から頂いた、姫様が幼稚園の時に着ていらしたスモック位ですね」

「分かった。後で回収しに行く」

「勘違いしないで下さい。スモックは飾ってあるだけです。そりゃ一度は袖を通したり、袖口や脇部分を舐めたりはしましたが決して直接自慰行為に使用した事は一度もなく」

「お前が変態だと言う事はよく分かった。とりあえず風呂に入って来い。出来ることなら心も洗って欲しいんだが」

「僕の思いは一度洗った程度じゃ落ちませんよ」

もうコイツの相手をするのが面倒臭くなってきた。

「まぁいいよ。寝巻でいろよ」

「和歌様……僕寝る時全裸派なんです」

「ちょっと待ってろ」


 流石に全裸でうろつかれるのは困る。っていうかコイツが今使ってるの父さんのベッドだよな。人のベッドで全裸で寝てたのかコイツ。俺のベッドじゃなくて良かった。


 俺は自分の部屋から、黒いスウェット上下を持ってきた。それをネルに渡す。


「ほら、これやるから」

「和歌様、これは?」

「俺のお下がりだけどな。会社にも頼むだけ頼んでみろよ。それしかやらんからな」

「あ、ありがとうございます。でも……」

「でも?」

ネルは悲しげな表情で言った。

「どうせお下がりなら姫様のが良かったです」

「失礼な上に何考えてるんだ!」


 怒る俺の顔を見て、ネルは一応申し訳なさそうな顔をしてくる。多分心はこもってない。


「申し訳ございません。つい本音が」

「本音でそんな事言うのか。言っておくけど、愛媛の持ってるのワンピースばっかりだぞ」

「もらえるのならワンピースでも着ますよ」

「見せられる俺の方が嫌だ」


 愛媛はネルに笑顔を向ける。なんて呑気なんだ。


「ネルー、良かったねー。お兄ちゃん優しいね」

「そうですね。ありがとうございます、お義兄ちゃん」


 急激に寒気を感じた。呼ばれたくない呼び名ナンバーワンかもしれない。


「お前に兄と呼ばれたくない。良いから早く入れ」

「分かりました。それでは姫様」

「懲りないな、お前!」

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