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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第七回

第七回:逃亡の雪、親友の涙と一族の牙

 ペタペタ、ガヤガヤ――燕山君ヨンサングン十年。村の市は、暴君の治世を忘れさせるほどの熱気に包まれていた。

 白丁ペクチョンとして素性を隠し、慎ましく暮らしてきたペク・ウンラク――今はチョンスと名を変えた男は、愛娘ソリのキラキラとした瞳に負け、相撲の土俵に上がった。

 ドシン、ドスン!――砂煙が舞い、チョンスが相手を投げ飛ばす。

 「父様、格好いい!」

 ソリのパチパチという弾けるような拍手。だが、その歓声は、役人の冷たい叫びにかき消された。

 「……見つけたぞ。手配書の武官、ペク・ウンラクだ!」

 ジャラジャラ、ガチャン――捕縛の鎖が、チョンスの自由を奪う。物陰からそれを見ていた母ミョンイは、ソリの口をギュッと塞ぎ、生きた心地もなくその場を離れた。

 「……逃げるのよ。止まってはだめ」

 二人の足音は、ザッ、ザッと焦りに満ち、漢陽ハニャンへと向かう険しい道に消えていった。

 ヒタヒタ、サワサワ――漢陽の夜。ミョンイは震える手で筆を走らせた。かつての親友、今は水刺間の尚宮サングンとなったハン・ペギョンへ。

 手紙を受け取ったハン尚宮は、胸をドクンと高鳴らせ、禁を破って宮中を抜け出した。

 「……ミョンイ! 生きていたのね!」

 ギュッとはぐくむ抱擁。二人の頬を、ポタポタと熱い涙が濡らす。

 だが、その再会の喜びを、闇の中からジロリと見つめる双眸があった。

 同じく尚宮となったチェ・ソングム。彼女にとって、ミョンイの生存は一族を破滅させる「死の味」に他ならなかった。

 カチッ、シャッ――チェ尚宮は、闇の中で静かに懐刀を研いだ。

 「……済まないわね、ミョンイ。一族の安泰のため、あなたは再び、死んだことになってもらわなければ」

 ゾクッ――眠っていた幼いソリは、夢の中で言いようのない冷気を感じ、パチッと目を開けた。外では、追っ手の馬の蹄の音が、ドカドカッと近づいてくる。

 運命の包丁が、ミョンイとソリの親子を、無慈悲に切り裂こうとしていた。

 シュッ、シュッ――。

 (父様……。これが、あの老師が言った『味わうべき血の味』なのですか……)

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