最終回
最終回:万代に語り継がれる筆跡
「……これより、医女ソリに『大』の冠を授け、正三品堂上官に封ずる。これより彼女は、余の身体を、そしてこの国の未来を診る唯一の主治医、『大長今』である!」
中宗王の宣言が、朝廷の静寂を切り裂いた。重臣たちは一斉に平伏した。そこには、女性が高い身分に就くことを禁じてきた千七百年の鉄の掟が、音を立てて崩れ去る瞬間があった。高句麗の朱蒙から始まり、幾多の英雄が馬を走らせたこの大陸の歴史において、筆一本、針一本でここまで昇り詰めた女性は、後にも先にも彼女一人であった。
式典のあと、ソリは独り、あの銀のボールペンを手に取った。王から下賜され、数々の陰謀を暴き、民の命を記録してきたこの「武器」は、今や彼女の指の一部のように馴染んでいる。ソリは、母・ミョンイとハン最高尚宮の遺品が眠る小箱を開き、その裏蓋に最後の一行を記した。
「母様、ハン最高尚宮様。……歴史は、正しく書き直されました」
さらさらと滑る銀のペン先。墨を磨る手間も、乾くのを待つ時間もいらない。そのインクは、ソリの涙を吸い込みながら、紙の繊維に深く、永遠に刻まれた。この記録がある限り、二人の無念が忘れられることはない。
王宮の喧騒を離れ、ソリはミン・ジョンホと共に、夕日に染まる丘に立っていた。
「……ソリ。君がボールペンで綴った新しい医術の記録は、今、国中に広まっています。もはや、身分も性別も、真実を止めることはできません」
ジョンホの言葉に、ソリは静かに微笑んだ。
二人の手には、新しい白紙の日記帳がある。千七百年の歴史はここで一区切りを迎え、今この瞬間から「新しい世界史」の第一頁が始まるのだ。
風が吹き抜け、ソリの衣を揺らす。彼女は再びペンを握った。未来という名の白紙に向かって。




