第四十八回
第四十八回:陥落の城、そして三つの誓願
「……ユ、ユンス!? 生きていたのか!」
義禁府の法廷に、ミン・ジョンホに支えられたユンスが姿を現した瞬間、オ・ギョモとチェ女官長の顔は土色に変わった。ジョンホの手には、あの銀のボールペンで記された血染めの供述書が握られている。
「すべてはオ・ギョモ様の指示でございます!」
「黙れ! そなたが、一族の繁栄のために私を利用したのではないか!」
かつて鉄の結束を誇った二人。だが、真実が「消えないインク」で記録された今、彼らに残されたのは醜い裏切りの応酬だけだった。千七百年の歴史を持つ重臣たちが、自らの悪行を自らの口で暴露し合う……。それは、古い権力が腐り落ちていく断末魔の叫びだった。
捜索の手を逃れ、王宮の闇を彷徨うチェ女官長。
「……開けなさい! 私は女官長よ!」
だが、どの尚宮の部屋の門も、二度と彼女のために開くことはなかった。記録から拒絶された者は、この巨大な城の中で「亡霊」に過ぎない。
絶望の中、彼女が最後に辿り着いたのは、かつて葬った親友・ミョンイ(ソリの母)の墓前だった。
「……ミョンイ。あなたは、最初からこの『結末』を知っていたの?」
銀のペンの輝きが、彼女の冷酷な野心を虚無へと変えていった。
刑が決まり、すべてを失ったクミョン。彼女はソリに、ある物を手渡した。それは、代々の最高尚宮のみが受け継いできた秘伝の書――ではなく、彼女自身がひそかに記していた、かつてソリと競い合った日々の「料理の記録」だった。
「……私の負けよ、ソリ。あなたの筆跡は、私の料理よりも深く、人の心に刺さったわ」
連行されるクミョンに、ジョンホが最後の言葉をかける。
「……クミョン様。歴史は、あなたという料理人がいたことも、忘れないでしょう」
クミョンの瞳に、ようやく一筋の静かな涙が流れた。
事態が収束し、中宗王はソリを召し出した。自らの病をも見抜いた彼女に、王は最高の褒美を約束する。
「……ソリよ。お前の望みを三つ、叶えてやろう。何なりと申せ」
ソリは、あの王から授かったボールペンを胸に抱き、静かに、だが揺るぎない声で答えた。
「……第一に、亡き母とハン最高尚宮の名誉を、正式な歴史の記録に回復していただくこと」
「……第二に、身分を問わず、志ある者が医学を学べる『記録の舎』を創ること」
そして、ソリが告げた三つ目の願い……。それは、千七百年の帝国の常識を覆す、驚くべき提案であった。




