第四十回
第四十回:内医院の帰還、仮面の再会
「……内医院配属を命ずる。シンビ、そしてソリ」
その宣誓が響いた瞬間、ソリは高くそびえる王宮の門を見上げた。かつて引きずり出されたあの屈辱の日から、どれほどの涙を流したことか。だが、今の彼女の手には、鍋の柄ではなく、命を左右する「針」がある。千七百年の歴史を持つこの帝国で、記録から消された女が、自らの手で歴史を書き戻すための第一歩だ。
配属直後、内医院に緊急の召集がかかった。
「后(王妃)様に流産の兆しあり。全医官、医女は直ちに参集せよ!」
緊迫する奥御殿。そこでソリを待っていたのは、運命の再会だった。
豪奢な衣装を纏い、料理の全権を握る最高尚宮となったクミョン。そして、冷徹な眼差しで後宮を支配する女官長、チェ尚宮。薬を運ぶ医女見習いとして膝をつくソリの姿を見て、二人の時が止まった。
(……まさか。生きて、この場所に戻ってくるとは)
チェ女官長の指先が微かに震える。それは恐怖か、あるいは執念か。ソリは静かに頭を下げたまま、だがその声は氷のように澄んでいた。
「……内医院見習い医女、ソリ。お薬を持ってまいりました」
言葉の裏に隠された「私はすべてを覚えている」というメッセージ。クミョンの喉の奥が、乾いた音を立てて鳴った。
「ソリ……! 本当に、本当にソリなのね!」
再会を泣いて喜んだのは、今や王の寵愛を受ける「特別尚宮」となったヨンセン、そして相変わらずのミン尚宮だった。豪華な居室で、ヨンセンは声を殺して語った。ハン最高尚宮が去った後の水刺間がいかにチェ一族に食い荒らされたか、そして孤独の中でいかにソリの無事を祈り続けたか。
「……記録は嘘を吐けても、私たちの心は覚えています。ヨンセン、ありがとう」
ソリは友の手を握りしめ、改めてこの腐敗した宮廷を「医術」というメスで切り裂く決意を固める。
宮中の外では、ミン・ジョンホが「若き政治家」としての牙を剥いていた。左賛成と共に、オ・ギョモ一派の不正を暴くための包囲網を絞っていく。中宗王が改革案に傾く中、危機感を募らせたオ・ギョモは、なりふり構わぬ反撃を企てる。
「……彼らが動く前に、こちらから根を断つ」
ジョンホはソリを守るため、そしてこの国の歪んだ歴史を正すため、オ・ギョモに対し、政治的・法的な先手を打つ決断を下す。
料理から医学へ、そして個人の復讐から国家の改革へ。高句麗から続く大河の流れが、今、一つの大きな奔流となって、古い権力の壁を突き崩そうとしていた。




