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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第三十八回

第三十八回:審判の学び舎、二人の師と分かれ道

 「……不可。お前の知識は死んでいる。人を救う資格はない」

 シン・イクピル教授の冷徹な宣告が、修練場に響いた。五十もの過酷な試験。三つの不可で即、追放。医女試験に合格したばかりのソリにとって、それは再会の喜びを打ち砕く冷たい洗礼だった。

 「……なぜ、正解を答えた私が不可なのですか」

 ソリの問いに、シン教授は一瞥もくれない。彼の眼差しは、知識の量ではなく、その知識を振るう「手の震え(責任感)」を見透かしていた。

 対照的に、もう一人の教授イ・ヒョヌクは、ソリの明晰さに目を細めた。

 「……経典の真意をここまで読み解くとは。お前は、この国の医術の歴史を塗り替える逸材だ」

 甘い言葉。だが、その背後には権力に取り入ろうとする、濁った野心が隠されていた。

 漢陽ハニャンの表舞台に戻ったミン・ジョンホは、司憲府サホンブの監察官として、かつての仲間たちを訪ね歩いていた。

 「……我々が変えねば、この国の千七百年の記録は汚れたまま終わる。力を貸してくれ」

 オ・ギョモの独裁に抗う、若き志士たちの集結。ソリが医学で「個人の命」を救おうとする傍らで、ジョンホは「国家の制度」という巨大な病巣にメスを入れようとしていた。

 一方、トック夫妻も以前のように宮中へ酒を納める権利を取り戻す。

 「……ソリが戻ってくる場所を、俺たちが守らなきゃな!」

 庶民たちのささやかな、だが力強い支援が、歴史の底流でソリの背中を押し始めていた。

 シン教授の授業で、ソリは圧倒的な医学知識を披露し、周囲を驚かせる。だが、シン教授の評価は依然として氷のように冷たい。そんな中、イ教授がソリを呼び出した。

 「……修練生全員で、高官たちの宴席に出席せよ。これも医女としての『社交』を学ぶ重要な実習だ」

 しかし、その宴会の日時は、シン教授が課した「最重要実習」と完全に重なっていた。

 宴席で権力者にひざまずき、近道を選ぶか。それとも、冷徹な師の元で泥にまみれ、茨の道を行くか。

 (……私は、何のためにここへ戻ったのか。……誰を、何を守るために針を持つのか)

 ソリの指先が、薬草の香りを纏いながら震える。これは単なる単位の奪い合いではない。千七百年の歴史の中で、医女という存在が「権力の道具」か「命の守り手」か、その定義を書き換えるための、魂の試験であった

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