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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第三十一回

第三十一回:禁断の日誌、暴かれた出生の秘密

 「……これよ、ソリが隠し持っていた帳簿は」

 チェ尚宮の密命を受けた女官が、闇に紛れて盗み出した一束の紙。その中には、古びた、だが大切に綴じられた一冊の日誌が混じっていた。チェ尚宮はそれを一瞥したが、料理の秘訣が記された単なる書き付けだと思い込み、「証拠を残すな」と冷淡に返却を命じる。だが、欲に駆られた女官ヨンノは、そこに記された「秘伝の味」を盗み見ようと、物陰でページをめくった。

 「……何をしているの」

 背後から響く、地を這うような低い声。ハン最高尚宮だった。ガタガタと震えるヨンノの手から、日誌がハラリと落ちる。それを拾い上げたハン最高尚宮の視線が、表紙の隅に記された小さな、だが忘れもしない筆跡に釘付けになった。

 「……これは。……ミョンイ……?」

 ドクン、ドクン――鼓動が耳元で暴れる。ページをめくる指が、木の葉のように震える。そこに記されていたのは、かつて二人で語り明かした夜の記憶、そして一族の陰謀によって追い詰められた親友の、血を吐くような独白だった。

 「……生きていた。……あなたは生きて、この子を遺してくれたのね……!」

 ハン最高尚宮は日誌を胸に抱きしめ、音もなく涙を流した。ソリが、あの愛弟子が、親友の忘れ形見であったという真実が、枯れ果てた心に濁流となって流れ込んできた。

 一方、ヨンノの報告を受けたチェ尚宮の居室には、対照的な「死の静寂」が立ち込めていた。

 「……ソリが持っていた日誌を、ハン最高尚宮が取り上げた、だと?」

 チェ尚宮の脳裏に、かつて自らの手で葬り去ったはずの女――ミョンイの顔が、鮮烈な悪夢となって蘇る。あの料理の癖、あの甘酢の匂い、そしてあの揺るぎない瞳。

 「……まさか。あの時の娘が……生きて、私の目の前にいたというの……?」

 ガタガタと歯の根が合わないほどの恐怖が、彼女を襲う。もしソリがすべてを知っているなら、自分たちは終わりだ。

 「……叔母様、しっかりなさってください!」

 崩れ落ちるチェ尚宮の肩を、クミョンがガシッと掴んだ。その瞳には、恐怖を焼き尽くすほどの冷徹な決意が宿っている。

 「……過去に怯えてはいられません。芽が育ちすぎたのなら、今度こそ根こそぎ抜き取るまでです」

 宮中の外でも、嵐の予兆が激しさを増していた。

 「……中宗王へ、宮中物資の横流しの実態を報告いたしました」

 司憲府サホンブに籍を移したミン・ジョンホの報告が、王宮の闇を鋭く切り裂く。危機感を募らせたオ・ギョモら権力者たちは、自分たちの利権を脅かす「正義の牙」がジョンホであることを突き止め、彼の追放、ひいては抹殺を画策し始めた。

 ザッ、ザッ――月明かりの下、クミョンは密かにジョンホを呼び出した。

 「……ミン・ジョンホ様。これ以上、深追いはなさらないでください」

 かつて彼に淡い恋心を抱いたクミョンの、それが最後の手向けだったのか、あるいは一族を守るための警告だったのか。

 「……道は、すでに分かたれました。……次にお会いするときは、敵としてお相手いたしましょう」

 クミョンの背中が闇に消えていく。

 ソリとハン最高尚宮の「涙の再会」の裏で、巨大な悪の網が、二人とジョンホを絡め取ろうと音を立てて絞られ始めていた。

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