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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第二十二回

第二十二回:黄金の重粥、老尚宮の涙と旅立ち

 カサカサ、サワサワ――ウナム寺の軒下。冬の凍てつく風に晒され、陽の光をジリジリと吸い込んだ米の束。それは、寺の男が手間暇を惜しまずトントンと叩き、自然のままに干し上げた「天日干しの米」だった。

 ソリは、その一粒を口に含み、奥歯でカリッと噛み締めた。

 「……これだわ。……懐かしくて、胸の奥がキュッとなる、お日様の味」

 ドロリ、フツフツ……――ソリは土鍋を取り出し、弱火でじっくりと米を炊き始めた。水は、あの山菜の男が教えてくれた、岩肌からチョロチョロと湧き出る清らかな清水。トックがハラハラと見守る中、重粥おもゆの香ばしい匂いが、死の静寂に包まれた尚宮の部屋へとフワァンと流れ込んでいく。

 「……兄様……。あの時の、お米……?」

 老尚宮の、枯れ枝のような指がピクリと動いた。ソリは、黄金色に輝く重粥を匙ですくい、彼女の唇にそっ……と運ぶ。

 ズズッ、ゴクリ――喉を鳴らす、小さな音。刹那、老尚宮の虚ろだった瞳に、かつての少女のような輝きがキラリと戻った。

 「……ああ。……もちもちして、お日様の香りがする。……これよ、これだったのね」

 ポタポタ、ジワリ――老尚宮の目尻から、一筋の涙が枕を濡らした。彼女はソリの手をギュッと握りしめ、掠れた声で、宮廷に渦巻く陰謀の「核心」をヒソヒソと囁いた。それは、かつてソリの母を死に追いやった、チェ一族のドロドロとした罪の記憶。

 「……行きなさい、ソリ。……この味を忘れない者に、真実を……託します……」

 しん……――老尚宮は、満足げな微笑みを湛えたまま、静かに息を引き取った。外では、ジョンホがシャキーンと剣を収め、朝日に向かって深く一礼を捧げていた。

 シュッ、シュッ――ソリは、ハン尚宮から届いたピラリとした一通の手紙を握りしめた。

 『……学びは終えた。戻りなさい、水刺間へ』

 (母様……。私はもう、迷いません。……一粒の米に宿る慈しみが、最大の武器になることを知りました)

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