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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第二十回

第二十回:失われた味、蜂の針とアミの塩辛の逆転

 しん……――自分の舌が、冷たい石のようになった感覚。女官長の誕生祝いで、ソリが味付けした料理は「無味」という名の反逆となった。

 「……味が、しない」

 暗闇の中で、ソリは自らの舌をギュッと噛むが、血の味さえもフワァと遠い。

 「……ソリ。舌が死んでいるなら、心で味を描きなさい」

 ハン尚宮の言葉は、鞭のようにしなやかで、鋭い。

 最高尚宮の座を懸けたチェ尚宮との競合。助手に指名されたソリは、味の分からない恐怖と戦いながら、目と鼻、そして記憶の「音」だけで食材と対峙する地獄の訓練を始めた。

 チクリ、ズキリ――菜園で、ソリは医官ウンベクに詰め寄った。

 「……蜂の針で、私の舌を刺してください。……『毒を以て毒を制す』。それしか道はありません!」

 一度は断られるも、ソリのギラリとした執念がウンベクを動かした。舌を貫く激痛。視界がチカチカと火花を散らし、ソリの意識は深い闇へとズブズブと沈んでいった。

 ……。

 「……ソリ。お前の舌は、もう使い物にならないはずだ」

 全女官の前で、チェ尚宮がニヤリと冷笑を浮かべた。アミの塩辛を使った、残酷な味覚検査。並べられた複数の器。微妙な塩分濃度の違いを、味覚のない者が当てるのは不可能。クミョンはジロリとソリを見据え、その破滅を確信していた。

 ペロリ――ソリの舌に、一滴の塩辛が乗る。

 刹那。

 ピリリッ、ドクン!――死んでいた細胞が、雷に打たれたように跳ねた。

 「……一番の器は、西海の塩。三番は、昨年の秋に漬けたもの。……そしてこの五番は、隠し味に生姜の搾り汁がポタリと落とされていますね?」

 全問正解。静まり返った水刺間に、ソリの声が凛と響き渡った。チェ尚宮の顔が般若のように歪み、ハン尚宮の瞳にはウルウルと熱いものが込み上げる。

 「……お見事。味覚は戻ったようね」

 ソリは、自分を信じてくれたチョンホへニコリと会釈を送る。

 だが、戦いは始まったばかり。皇太后が下した新たな課題、そして病に倒れた尚宮が待つウナム寺。トックが任命されたコトコトと煮える鍋の音が、新たな動乱を告げていた。

 シュッ、シュッ――。

 (母様……。一度死んだこの舌で、私は宮廷の腐った味をすべて、正義の味に塗り替えてみせます)

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